専門委員会成果物
地裁のクレーム解釈は同意できないとしたものの，特許無効に関する略式判決を支持した事例
CAFC判決 2017年２月２日3Form, Inc. v. Lumicor, Inc.
［経緯］
3Form, Inc.（3F社）とLumicor, Inc. （Ｌ社）はともに，小枝，葦，竹などの天然物を内装した装飾ラミネート建築パネルを製造販売している。3F社はＬ社製品が， 3F社の保有する特許7,008,700（’700特許）および意匠特許6,121,068（’068意匠）を侵害しているとして地裁に提訴した。地裁は，’700特許は先行技術により無効，’068意匠はＬ社の展示物により 自明であり無効と略式判決し，3F社の訴えを退けた。3F社はこれを不服として，控訴した。［CAFCの判断］
CAFCは，3F社の’700特許のクレームに記載された“unnatural appearing conformation（不自然な外観）”および“substantially natural appearing conformation（実質的に自然な外観）”の解釈に 関する地裁の判断を認容できないと判断した。しかしながら，CAFCは地裁が判断した’700特許の先行技術による無効の略式判決については支持した。すなわち，前述の語句の誤った解釈によって’700特許は検討され先行技術による無効の略式判決を 受けているが，以下のとおり判例記述を基に’700特許の有効性を検討し，地裁の略式判決を支持するにいたった。
�� 無効性は明確かつ納得できる証拠によって証明されている
�� 語句の誤った解釈はあっても，それらに有効性に対する重要な判断事項が存在しなければ，略式判決で解決できる
�� 提出された証拠が有効性に関する重要な判断に影響しているかどうかについて，新たに検討し，これを認容できる
�� 事実上の不明確な語句が，有効性に関する重要な判断に影響しないため，特許無効の略式判決に対する申立は認められる
�� 自明性を示す事実が当事者間で争われていないため，その争われていない事実を検討した結果，無効の略式判決が正しいことが判断できる
この結果，新規性及び非自明性を有さないことにより’700特許は無効である，および，非自明性を有さないことにより’068意匠は無効である，と判断した地裁の略式判決をCAFCは支持し，3F社の控訴を棄却した。
（藤村 眞理子）
