専門委員会成果物

ライセンス等の交渉のため被告が原告の本社を訪れた行為によって特別管轄権におけるminimum contactが認められた事例

CAFC判決 2017年2月15日
XILINX, INC. V. PAPST LICENSING GMBH & CO. KG

[経緯]

 原告XILINX, INC.(X社)は,デラウェア州の法人であり,その本社は,カリフォルニア州サンノゼにある。X社は,電子機器で使用するプログラマブルロジックデバイス (programmable logic device)を設計,開発,販売している。一方,被告PAPST LICENSING GMBH & CO. KG(P社)は,ドイツの法律に基づいて組織されており,ドイツに本社がある。 P社は,いかなるコンシューマ製品を生産,販売しておらず,知的財産権のライセンスによって収益を得ている。
 P社は,特許6,574,759と特許6,704,891の譲受人であり,X社がこれらの特許を侵害しているとして,通知書をX社に複数回送付した。これに対して,X社は応答をしなかった。 そのため,P社は,X社と直接交渉を行うため,弁護士を含む代理人をカリフォルニア州に派遣した。しかし,両者は,ライセンス等に関して合意に至らなかった。
 このような背景の下,X社は,カリフォルニア州の地裁に,X社の製品がP社が保有する上記の特許を侵害していないこと,それらの特許が無効であることを求めて,確認判決訴訟を提起した。
 地裁では,人的管轄権を欠くとして,当該訴訟において,棄却判決を出した。当該判決では,P社が,カリフォルニア州で設立された組織ではなく,また,カリフォルニア州に本社を 有してもいないため,カリフォルニア州がP社にとって本拠地でないことを理由に,人的管轄権のうち一般管轄権が認められないと判断した。さらに,地裁では,P社と当該地方裁判所との 間にminimum contactが存在するとは言えないとして,人的管轄権のうち特別管轄権も認められないと判断した。
 これに対して,X社は,この人的管轄権を欠くことを理由とした棄却判決を不服として,上訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,P社が,X社に対して単にレターを送付するだけでなく,特許侵害の有無やライセンスについて議論をするため,カリフォルニア州にあるX社を訪れたことを理由に, P社とカリフォルニア州の地方裁判所との間にminimum contactが存在すると認められるだけの十分な接触があったと判断した。そのため,CAFCは,カリフォルニア州の地方裁判所に,特別管轄権, ひいては人的管轄権が認められるとして,当該棄却判決を破棄し,差し戻した。

(小林 祐樹)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.