専門委員会成果物
当事者系レビューにおける非自明の判断を誤りとして破棄した事例
CAFC判決 2017年2月17日SLOT SPEAKER TECHNOLOGIES, INC. V. APPLE INC.
[経緯]
APPLE INC.(A社)は,SLOT SPEAKER TECHNOLOGIES, INC.(S社)の特許7,433,483(’483特許)について当事者系レビューを請求した(IPR2014-00235)。特許審判部(PTAB)は, Tomonori(EP 0744880 A1)とSadaie(WO 00/52958)に基づき,’483特許のクレーム1,2を自明,クレーム3を非自明と結論づけた(2015 WL 3638275)。これを受けて,S社はクレーム1,2に関する決定,A社はクレーム3に関する決定についてそれぞれ上訴した(2015-2038,2015-2039)。
[CAFCの判断]
CAFCは,クレーム1,2に関する決定を支持し,クレーム3に関する決定を誤りと判断した。’483特許のクレーム3は,スピーカダクトがスピーカ設置面である天面と,それに対向する底面と,天面と底面の間に配置された側面とで構成し,側面を消音材で形成し,スピーカダクト内で 発生する定常波を低減することを規定したクレーム1の従属項で,スピーカダクトの出力口から最も遠い背面が消音材で形成され且つスピーカコーンの輪郭に沿って湾曲した形状であることを規定している。
PTABは,Tomonoriが,天面,底面,側面,背面,出力口でスピーカダクトを構成し,及び,スピーカダクト内で発生する定常波を低減するために背面を消音材で形成すること,Sadaieが, スピーカダクトにおける消音材の配置,をそれぞれ開示するものの,クレーム3で規定されたスピーカダクトの背面の構成はいずれにも開示が無いと判断していた。
一方で,CAFCは,クレーム3が,背面がスピーカコーンの“全”輪郭に沿うことまで要求していないこと,及び,スピーカと背面との間に隙間が存在することを排除していないことを指摘し, それに基づいてSadaieのPTABが注目した実施例とは別の実施例に,スピーカコーンの輪郭に沿って湾曲した背面,及び,背面を消音材で構成しても良いことの開示があると認定した。更に, Sadaieの構成をTomonoriに開示された平面状の背面に適用することは,当業者であれば可能であると認定した。
これらの認定に基づいて,CAFCは,クレーム3に関するPTABの決定を棄却した。
(菱川 輝信)
