専門委員会成果物
自明であることによって特許要件を満たさないとしたIPRにおけるPTABの判断を，CAFCが支持した事例
CAFC判決 2017年２月21日In re Depomed, Inc.
［経緯］
Depomed, Inc.（以下Ｄ社）が出願人である特許6,723,340（’340特許）は，ポリエチレンオキシド（以下PEO）とヒドロキシプロピルメチルセルロース（以下HPMC）の組み合わせからなる， 薬物送達のための賦形剤に関する特許である。クレームに記載の錠剤は，飲み込む際には十分小さく，胃液と接触するとより大きいサイズに膨潤するマトリックス材料を使用している。Endo Pharmaceuticals, Inc.は，IPRにおいて，クレーム１-５，10-13が自明であり特許要件を満たさない旨の主張を行った。PTABは，クレーム１，３-５，10-13について，WO 98/55107（Shell1998）のみ， Shell1998と1993年の記事（Papadimitriou）との組み合わせ，Papadimitriouと特許4,871,548号との組み合わせ，によって自明であり特許要件を満たさないと判断した。
Ｄ社はCAFCに控訴し，PTABが，��PEOとHPMCを組み合わせたことによる予期せぬ結果について理解できていないこと，��後知恵による自明であるとの判断を行ったこと，�Ｄ拘�間望まれていたが達成されなかった ことかどうかを評価する際に不適切な法的基準を採用したこと，を主張した。
［CAFCの判断］
��Shell1998では，「有限個のマトリックスポリマー，とくにPEOとHPMCを用いることが好ましい」，「マトリックスポリマーは，個々にまたは組み合わせて使用できる」，「 組み合わせによって制御された薬物放出が得られることがある」ということが記載されている。よって，PEOとHPMCを用組み合わせたことによって予期せぬ結果が生じたとは言い難い。��Shell1998が，薬物放出を制御するという目的でポリマーの組み合わせ，とくにHPMCとPEOの組み合わせることを開示しており，HPMCとPEOを組み合わせることの示唆がないというＤ社の主張には同意できない。
�Ｄ拘�間望まれていたが達成されなかったことかどうかを評価する際に，PTABがＤ社に対して，他人ができなかったことの証拠を要求したことが誤りであるというＤ社の主張に同意する。しかし，そのことは， ’340特許が非自明であるというまでの本質的な証拠であるとは言い難い。
以上� 銑�の理由により，CAFCは，’340特許は自明であることにより，特許要件を満たさないというPTABの判断を支持した。
（津田 哲志）
