専門委員会成果物
改良前の構成を正当化するデータの要求は,改良後の構成を特徴とした発明の着想には当たらないと判断した事例
CAFC判決 2017年1月26日Cumberland Pharmaceuticals Inc. v. Mylan Institutional LLC, et al.
[経緯]
Cumberland Pharmaceuticals Inc.(C社)が保有する特許8,399,445(’445特許)をMylan Institutional LLC(M社)の製品が侵害したとして,C社がM社を地裁に提訴した。 M社は,’445特許が自明であり,また,’445特許に記載された発明者ではなくFDAの誰かが真の発明者であることを主張した。しかし地裁は,クレームされたキレート剤を含まない構成により課題が 解決されるという合理的な期待があったこと,’445特許に記載された発明者より前にFDAの誰かがクレームされた発明を認知していたことをM社が証明できなかったとして,当該主張を認めなかった。 それに対してM社は控訴した。[CAFCの判断]
CAFCは,当業者は’445特許の優先日前の公知情報からはキレート剤を含まない構成での安定性に対する合理的な期待を抱くとは言えず,また,キレート剤を含む構成のデータによる正当化をC社がFDAから 要求されたことは’445特許に記載された発明に必要とされる着想には当たらないため’445特許に記載された発明者がFDAの誰かの発明を冒認したとは言えないとし,地裁の判決を支持した。(堀江 暁)
