専門委員会成果物

欧州特許庁,オーストラリアとのPPHパイロットプログラムを開始

 7月1日,欧州特許庁(EPO)は,EPOとオーストラリア特許庁(IPA)との間で,Patent Prosecution Highway pilot programme(以下,PPH)の利用を開始したことを発表した。

 PPHは,審査の促進を目的としたパイロットプログラムである。EPOとIPAとの間では,当該プログラムを3年間実施することが予定されている。PPHでは,一方の特許庁の審査で出願にかかるクレームに特許性が認められる場合に,当該出願の出願人が,他方の特許庁に対して審査の促進を要求することができる。他方の特許庁は一方の特許庁の審査結果を利用することによって,審査の迅速化と審査コストの低減とを図ることができる。

 EPOは,既に,IP5に属する各国(すなわち,中国,日本,韓国,米国),カナダ,イスラエルメキシコ,シンガポールの各特許庁との間で,PPHを利用している。今回これらの国に新たにオーストラリアが加えられたことになる。

 特に,IPAにとっては,PPHを利用することによって,EPOやUSPTO,その他20以上の特許庁で使用されている特許分類である「CPC(Cooperative Patent Classification)」を利用する経験を積むことができる。これにより,IPAにおける,技術的な側面での調和が期待される。

 EPO長官のBenoît Battistelli氏は,IPAとのPPHの開始に関し,以下のようなコメントを発表している。

 「オーストラリアはヨーロッパ企業にとって重要な市場であり,かつ,EPOへの出願の成長の源である。そのため,PPHの利用を開始することができてうれしく思う。PPHの利用によって,より迅速に,効率よく特許を取得することができ,結果として経済やイノベーションの向上につながることが期待できる。また,経済および技術の両側面で2つの地域間をより強固にすることができる。」

 なお,2015年には,オーストラリアの発明家および企業は,EPOに対して819件の出願を行っている。これは,前年に比べて4%の増加である。技術分野としては,医学が108件と最も多く,薬剤が68件,土木工学が65件,バイオテクノロジーが54件である。

EPOニュース(2016年7月1日)
https://www.epo.org/news-issues/news/2016/20160701b.html

(参考)過去のEPOニュース(2015年10月7日)
https://www.epo.org/news-issues/news/2015/20151007.html

(参照日2016年9月16日)

(川合 真一朗)    

  
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