専門委員会成果物

欧州理事会,営業秘密の保護に関する新指令を採択

 5月27日,欧州理事会はEU企業の営業秘密の保護と機密情報に関するルールの制定に関する指令を採択したことを発表した。 営業秘密の違法な取得,使用及び開示に対する統一的な制度の整備に関するこの指令は,域内市場の円滑な機能を守ることを目的とする。現在,加盟国には営業秘密の取り扱いと保護に関し多様な制度と定義が存在している。この新指令は法的な明確性と欧州企業への公平な競争の場をもたらすものと期待される。
 今回のプレスリリースでは,指令が次の4点を含むことが発表されている。

 (1)メディアの調査情報源の保護
 営業秘密の保護において,メディアの調査報道における情報源の保護について新たな制限を課すものでない。

 (2)労働者の移動性
 各国国内法が適用される雇用契約において,いかなる制約も労働者に課すものではない。

 (3)告発者の保護
 一般的に「告発者」として知られる,公共の利益を守るために営業秘密を明らかにする者は十分に保護される。営業秘密の保護は,その目的が不祥事,不正行為,違法行為を 明らかにするものである場合には適用されない。

 (4)営業秘密保有者への補償
 新たな法的枠組みに従い,EU加盟国は,営業秘密の違法な取得,使用及び開示に対する民事上の救済を保証するために必要な措置,手続,救済策を提供する必要がある。これらは公正,効果的,かつ抑止的なものである必要がある。それらは不必要に複雑であったり,費用のかかるものであったり,不合理な時間制限や不当な遅延を課すものであってはならない。 請求の期限は6年を超えない。必要に応じ,営業秘密の機密性は法的手続きの途上又は後においても保護維持される。
 指令では,この指令の施行後,加盟国は最大2年以内に新指令を国内法に組み込むこととするものとしている。

European Councilプレスリリース(2016年5月27日)
http://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2016/05/27-trade-secrets-new-directive/

(参考)採択されたEU指令案
http://data.consilium.europa.eu/doc/document/PE-76-2015-INIT/en/pdf

(参照日2015年6月20日)

(今井 周一郎)   

  
Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.