専門委員会成果物

PATBの特許無効審決に対して,自明性の判断理由の明示を欠くとの理由で,審決を取り消した事例

CAFC判決 2016年12月7日
In re:NuVasive, Inc.

[経緯]

 NuVasive(N社)の特許に対するMedtronic, Inc.によるIPRにおいて,PTABは,当該特許は,先行技術の「様々な組み合わせ(various combinations)」に基づき自明として,特許無効を審決した。 これを不服として,N社はCAFCに控訴した。  

[CAFCの判断]

 主な争点は,「N社が,2つの引用文献が印刷公開物でないという主張を放棄(waive)したのかどうか」(第1の争点)と,「PTABの自明性の判断理由が明瞭だったかどうか」(第2の争点)の2点であった。 CAFCは,第1の争点については,waiverと判断し,第2の争点については,PTABの審決は自明性判断の合理的基準の明示を欠くと判断し,最終結論として,自明性判断の合理的基準の明示欠如を理由として,満場一致で,審決取消しの判決を下した。
 より詳しくは,CAFCは,waiverに関し,PATBがIPRの手続において,N社に対し,waiverのリスクを注意喚起したにも関わらず,N社がその主張を辞退したとして,N社の行為はwaiverとの見解を示した。 他方,PTABの判断理由の明瞭性に関し,PTABは,発明を自明と判断する理由を十分明示しておらず,そのため,PTABの判断が気まぐれな,裁量の濫用に当たるものなのかどうかといった是非を,CAFCが正しく 評価できないこと,そして,CAFCの判断には,PTABの行為(事実とPTABの判断の間の合理的関連付けを含む)について,PTABによる十分な説明・表明が必要であることを示した。
  特に,複数の先行技術を組合せる動機づけが存在するかどうかを判断する下記3原則を示してPTABの審決を検証した。
  1. 「根拠不十分な陳述」単独では不十分であり,代わりに判断は「根拠付けられた説明」によりサポートされなければならない。
  2. なぜPTABが優勢な議論を受け入れたかを説明することなく,議論を要約して拒絶することは妥当ではない。
  3. PTABは動機づけが存在することの判断をサポートするためにcommon knowledgeまたはcommon senseだけに頼ることはできない。

  検証の結果,PTABは先行技術を組合せることの動機づけの判断理由を明確に述べることができていないと判示し,PTABの審決を破棄し,差し戻した。

(中川 菜子)

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