専門委員会成果物

抽象的アイデアについて§101の特許適格性が認められた事例

CAFC判決 2016年11月1日
Amdocs (Israel) Ltd. v. Openet Telecom, Inc., et al.

[経緯]

 Amdocs (Israel) Ltd.(A社)は,ネットワーク上で課金情報を処理するプログラムに関する特許(7,631,065)を侵害しているとして,Openet Telecom, Inc.らを2010年に提訴した。 クレーム解釈を争った最初の控訴審において,CAFCはこの情報処理が分散化されたシステムで行われること(分散アーキテクチャ)を意味するものとし地裁へ差戻した。この間に最高裁のAlice判決がなされ, 地裁での差戻審では抽象的アイデアのため特許不適格であると判断されたことで,A社がCAFCへ再び控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,’065特許が特許適格性を判断するMayo/Aliceテストのステップ1により抽象的アイデアに該当するとしても,十分な発明思想(inventive concept)を含んでいるためステップ2で適格となると判断した。
 詳細には,CAFCは,従来のシステムは1つの場所に様々な情報を格納していたため巨大なデータベースが必要で,その莫大なデータを処理することへの対応が困難,という課題が存在していたと認定しつつ,これに対し’ 065特許は従来とは異なるシステムの分散化という解決手段を提供するものであると判断した。さらにこの分散化に関する構成について,ネットワークデバイスや情報収集部など一般的な構成を用いるものではあるものの, これらを分散させつつ共同して動作させる点で,ネットワーク分野における技術的な解決手段を提供している,と判断した。
 以上をふまえ,CAFCは’065特許の特許適格性を認め,地裁判決を破棄・差戻した。

(河村 知史)

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