専門委員会成果物

Alice判決の2ステップ判断枠組みに基づいてシステム関連発明を特許適格性がなく無効であると判断した事例

CAFC判決 2016年11月16日
Tranxition, Inc. v. Lenovo (United Sates) Inc., et al.

[経緯]

 Tranxition, Inc.(T社)は,config情報を古いコンピュータから新しいコンピュータに自動的に移行するシステムに関する米国特許6,728,877号(’877特許)及び米国特許7,346,766号(’766特許)を 所有していた。地裁では,これらの特許は,クレームが保護適格性のないコンセプトに向けられたものであるとして35 U.S.C. § 101の下,無効であると判断されていたところ,T社は特許が有効であるとしてCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCでは,下記のAlice判決の2ステップ判断枠組みに基づいて,特許適格性について,検討した。

ステップ1:クレームが保護適格性のないコンセプトに向けられたものであるか否か。
ステップ2:クレームが保護適格性のないコンセプトに向けられたものであると判断した場合,クレームが,抽象的なアイデアを保護適格性を備える主題に変換する発明概念を含んでいるか否か。

  ステップ1に関して,CAFCは本発明の目的は新旧2つのコンピュータの間でのconfig情報移行を自動化することであるので,クレームが保護適格性のないコンセプトに向けられたものであるとした。
 ステップ2に関して,T社は下記の2点を理由に挙げ,請求項は発明概念を含んでいると主張した。第1に,人間による手作業での移行方法は必ずしもコンピュータ内のすべてのconfig情報を対象として いるわけではないこと,第2に,本件発明の自動化config情報移行方法は従来の人間による手作業での方法と同じ方法でないこと,である。
 しかしながら,CAFCは下記の理由でクレームは発明概念を含んでおらず,本発明は特許適格性を有していないので無効とした。
 まず,コンピュータのconfig情報は数十個存在するにもかかわらず,本願のクレームは1以上のconfig情報の自動移行を対象にしているにすぎない,さらに,人間は一般にコンピュータとは異なるやり方で アイデアを考えるところ,本願では人間による手作業での移行方法とコンピュータによる自動移行方法が異なるということが明らかになっていない。

(淺井 法廣)

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