専門委員会成果物

Apple v. Samsung 特許訴訟CAFC大法廷判決

CAFC判決 2016年10月7日
Apple et al. Inc. v. Samsung Electronics Co., Ltd.

[経緯]

 Apple Inc.(A社)は,Samsung Electronics Co., Ltd. Inc.(S社)に対して,8,074,172特許(’172特許),5,946,647特許(’647特許),8,046,721特許(’721特許)を侵害している として提訴した。
 地裁はA社の主張を認め,3つの特許全てが有効であり,かつS社製品が侵害していると判示したが,CAFC判事パネルは,’647特許は非侵害,’172特許および’721特許は無効とし,地裁判決を覆した。これを不服として,A社が再審理を求めていた。

[CAFCの判断]

 CAFC大法廷は,3件の特許全ての判断において判事パネルの判断を覆し,地裁判決を支持すると結論づけた。
 クイックリンクに関する’647特許では,“analyzer server”の充足性が争われた。CAFC判事パネルは,当事者が提起していない“analyzer server”のクレーム解釈を独自に調査した証拠に基づいて変更して地裁判決を覆したが,CAFC大法廷は,控訴審での審理は地裁での記録に基づいて当事者が提起した事項を判示することに限られるとした上で,地裁での記録に基づき当事者が合意した“analyzer server”のクレーム解釈に基づいて判断すれば,S社製品は’647特許を侵害すると判示した。
 スライド式ロック解除に関する’721特許では,スライド動作をスマートフォンのロック解除に用いる点について自明性が争われた。先行文献Plaisant(P文献)には壁面埋込み型のタッチパネルにおいてスライド式のロック解除方法が開示されている。しかしながら,CAFC大法廷は,P文献はスマートフォン向けのタッチパネルに関するものではないことや,スライド方式が全6方式中5番目の評価であったこと等から,スライド式のロック解除をスマートフォンに適用する動機付けが存在しないとして,’721特許の非自明性を肯定した。
 自動スペル修正に関する’172特許では,先行文献RobinsonとXrgomicsに対する非自明性が争われた。CAFC大法廷は,先行文献には現在の文字列から文字列を予測することは開示されているものの,現在の文字列を予測された文字列に置き換えるという構成はいずれの先行文献にも開示がないとする専門家証言を支持し,’172特許の非自明性を肯定した。

(廣田 翔平)

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