専門委員会成果物

ネットワーク上での音楽配信に関して101条の保護適格性を有さないと判断された事例

CAFC判決 2016年9月23日
Affinity Labs of Texas, LLC v. Amazon.com Inc., et al.

[経緯]

 Affinity Labs of Texas, LLC.(以下,Af社)は,人口統計学的情報に基づきユーザのポータブルデバイスに配信される広告の選択方法に関する特許(8,688,085)の特許権者である。 Af社は,当該特許クレームのうち,ネットワーク上での音楽配信に関するクレーム14に基づき,カスタマイズされたライブラリから音楽配信を行うAmazon.com Inc.(以下,Am社)のAmazon Music Systemの提供が当該’085特許を侵害しているとしてAm社を訴えた。地裁判事を補助する司法官である下級判事は,’085特許について「選択可能なメディアコンテンツを配信しポータブルデバイス上で選択されたコンテンツを流す」という,単なる抽象的アイデアにすぎず,インベンティブなコンセプトもないため保護適格性を有さないとの意見書を提出し,地裁はかかる意見書に同意したため,Af社は控訴した。

[CAFCの判断]

 まず,クレーム発明が抽象的アイデア等か否かを判断する第一ステップについて,Af社は,’085特許の「ワイヤレスメディア配信が優先日当時に一般的ではなかった」ので,’085特許は具体的な技術革新を含んでいると主張したが,CAFCは,明細書には特定のメカニズムについて一切開示されておらず,また,クレーム14における「カスタマイズされたUI」も,ある特定のカスタマイズ フォームに限定されるものではなく,単に一般的なUIカスタマイズをカバーしたにすぎないため,これらは単なる抽象的なアイデアに過ぎない,とした。
 また,当該抽象的アイデアを遥かに超える意味のある限定がなされているか否かを判断する第二ステップについて,CAFCは,当該クレーム14は一般的な用語を用いて機能を述べた機能的クレームに過ぎず,その機能を実行するための技術的手段を何ら限定したものではなく,クレーム明細書のいずれにおいてもその具体的方法を開示していない,とした。結果として,当該特許は「技術的な課題」 を解決していないとして,保護適格性を有さないとした地裁判決を支持した。

(隈原 英子)

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