専門委員会成果物

特許審判部が副次的証拠を不適切に退けたと指摘した上で,自明との特許審判部の決定を維持した事例

CAFC判決 2016年9月22日
ClassCo, Inc. v. Apple, Inc.

[経緯]

 ClassCo, Inc.(C社)は,電話の呼び出し人のIDを口頭でアナウンスすることを特徴とする呼び出し人IDシステムに関する特許(6,970,695)を保有している。’695特許は,当事者系再審査において,非自明性違反による拒絶の決定がなされた。特許審判部は,特許4,894,861が本発明の特徴以外の全ての要件を開示しており,特許5,199,064が本発明の特徴を開示しているため,両文献の組み合わせにより自明であると認定した。C社は,非自明性を客観的に示す証拠として,長期間未解決のニーズや商業的成功を示した。しかし,特許審判部は,これらの証拠が先行文献に開示された特徴に焦点を当てたものであり,クレーム発明のメリットへの結び付きを示すものではないとして,拒絶の決定をした。これを不服として,C社はCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,特許審判部の決定を維持したが,C社の証拠を不適切に退けたと指摘した。
 まず,CAFCは,Huai-Hung Kao判決を根拠に副次的証拠が示された場合には適切に考慮する必要があり,副次的証拠とクレーム発明のメリットとの結び付きを示す必要があると説明した。 特に,CAFCは,上市された商品がクレーム発明を具体化するところにおいて,商業的成功の証拠は自明であるかどうかの分析に価値があると説明した。
 C社が提出した売上高やマーケットシェアに関する副次的証拠において,C社の製品の市場は全ての呼び出し人IDシステムからなり,呼び出し人IDを単にディスプレイに表示する従来の呼び出し人IDシステムも含むものとなっている。CAFCは,特許審判部が製品ではなく市場に焦点を当てて証拠を退けたことが不適切であると指摘した。
 CAFCは,Graham判決の最初の三要件に基づいて,両文献の組み合わせはクレーム発明が自明であることを強く示しているとした特許審判部の判断を支持した上で,副次的証拠を適切に考慮すれば,特許審判部の自明との結論は正しいと判断した。CAFCは,C社が提出した副次的証拠が上記両文献の組み合わせと比較して,非自明性を確立するには依然として強くないとして,特許審判部の決定を維持した。

(山口 健太郎)

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