専門委員会成果物
IPRにおける補正においてPTABは発明の新規性・進歩性認定に構成要件の組み合わせを考慮すべきと判断された事例
CAFC判決 2016年８月30日Veritas Technology LLC. v. Veeam Software Corp.
［経緯］
Veeam Software Corp.（VS社）がVeritas Technology LLC.（VT社）のUS特許7,024,527（’527特許）に対してUSPTO特許審判部（PTAB）に当事者レビュー（IPR）を提起し，それを受けてVT社は新たな請求項26，27を補正により追加した。PTABが実体審理をした結果，旧請求項は非自明性がないという理由で無効を認めた上，新請求項の補正の申立てを認めなかった。
その結論に対してVT社はCAFCへ上訴した。
［CAFCの判断］
�ゝ貔禅畊爐枠鷦�明性がないというPTABの認定は適切と判断を下した。��PTABの新請求項追加を認めないとした決定を破棄した。
PTABでは，VT社は新たな特徴を含む新請求項の補正を提出するとともに，それらが非自明性を有する理由を説明した。しかしPTABは，新たに追加された特徴と元から存在する特徴との組み合わせに関する主張のみでは不十分と認定し，新たな特徴が先行例に存在しない説明も必要であることを理由に，新請求項の補正を認めなかった。
その結論に対し，CAFCはKSR Int’l Co. v. Teleflex Inc. 最高裁判決等の判例を引用し，発明の多くは既存技術の組み合わせであり，その組み合わせの元となる技術自体が公知であっても，その組み合わせは新規性・非自明性を有し得ると説明し，PTABの結論を破棄し，補正した新請求項をもう一度審理するよう差し戻した。
発明の新規性・非自明性を判断する際，各構成要件のそれぞれの特徴だけでなく，それらの組み合わせに基づいた特徴についても新規性・非自明性の判断を求めることができることが再認識できた判例である。
（栗 明明）
