専門委員会成果物

意見書の主張により,物のクレームの構成要件が,特定のプロセスによって準備される必要があると判断され,非侵害とされた事例

CAFC判決 2016年8月19日
E.I. du Pont de Nemours and Co. v. MacDermid Printing Solutions, L.L.C.

[経緯]

 E.I. du Pont de Nemours and Co.(以下,D社)は,MacDermid Printing Solutions, L.L.C.(以下,M社)がD社の特許6,773,859(’859特許)および特許6,171,758(’758特許)を侵害したとして訴訟を提起した。
 裁判中,’758特許の用語“dimensionally stable”について争いがあったが,地裁は,明細書の記載と意見書の主張から,“dimensionally stable”は“special annealing process”によって準備される必要があるとし,その要件を欠くM社 製品は非侵害であると判断した。
これに対し,D社は,物のクレームにプロセスの限定をして解釈することは失当であるとして,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁の判断は物のクレームにプロセスの限定をして解釈したものではないとした。
その上で,CAFCは,D社が審査経過の中で新規性・非自明性の拒絶を克服するために,当該“special annealing process”に頼り,それが“important” and “critical”であると,繰り返し特徴づけていたと認定した。そして,そうした主張は,権利範囲の放棄を構成するとした。
 また,CAFCは,D社が権利を確保するためにそうした主張を行い,その結果権利化に成功したことを指摘し,一般公開されている審査記録から見れば,D社は今になって放棄した権利範囲を取り戻そうとすることはできないとした。
 以上のことから,CAFCは,“dimensionally stable”は“special annealing process”によって準備される必要があると結論し,その要件を欠くM社製品は非侵害であるとの地裁の判断を支持した。

(今津 康元)

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