専門委員会成果物

ReexaminationにおいてPatent Trial and Appeal Board(PTAB)が自明として特許を取り消した判断が,十分な証拠に基づいていないとしてCAFCで棄却された事例

CAFC判決 2016年8月31日
In Re:Natural Alternatives, LLC

[経緯]

 Natural Alternatives, LLC(N社)は,砂糖が除去された後の甜菜の糖蜜(DSBM)を含む凍結防止剤についての特許6,080,330(’330特許)の特許権者である。 実施権の許諾を受けていたUniver社はUSPTOに対して’330特許の再審査(Reexamination)を請求した。審査官は先行技術を組み合わせて,一応自明(prima facie case of obviousness)であることを理由に特許を無効とし,PTABでも特許無効の判断が維持されたため,N社はCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

  CAFCは特許が一応自明であることを証明することは審査官の責任であり,発明が自明であると判断するためにはクレームにおいて限定されている要素が先行技術において開示されていることについて十分な裏付けが必要であるが,審査官は実質的な証拠による裏付けを示していないとして,先行技術(文献1)にクレームにおいて限定されている要素が開示されているとの審査官の判断を否定した。
 また,CAFCは別の先行技術(文献2)について’330特許と実質的に同一の技術分野であるとの審査官の判断に対し,審査官は文献2と’330特許とでは目的が異なっている点を示しておらず,技術分野が実質的に同一であることについて十分な根拠を示していないと判断し,文献1と文献2を組み合わせる一応の動機付けを示していないと判断した。
 上記理由により,CAFCは’330特許は文献1と文献2の組み合わせにより自明であるとして特許を取り消したPTABにおける判断を棄却した。

(矢口 敏昭)

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