専門委員会成果物

PTABによる一部Claimsの無効判断を支持する一方で,維持と判断されたClaimsは無効と覆した事例

CAFC判決 2016年9月9日
Software Rights Archive, LLC v. Facebook, INC., et al.

[経緯]

 Software Rights Archive, LLC(S社)は,データベースの検索技術向上に関連する特許3件(米国特許5,544,352(’352特許),5,832,494(’494特許)及び6,233,571(’571特許)。うち,’494と’571特許は共に’352特許の一部継続出願)をFacebook,Twitter and LinkedIn(F社)が侵害しているとして,2012年にカリフォルニア州北部連邦地裁に提訴した。
 これに対して,F社は,当該特許3件は無効であるとして,各特許に対するIPRを2013年に提起した。結果,’352特許は対象Claimsすべて無効,’494特許と’571特許は共に対象Claimsの一部が無効(残りのClaimsは維持)とPTABは判断した。
 これに対してS社はCAFCに控訴した。うち,1件(’352特許)に関する控訴では,既にCAFCがPTAB判断(対象Claimsすべて無効)を支持する判決を2016年に出しているため,残り2件(’494特許と’571特許)に対するPTAB判断が今回控訴の争点となった。  

[CAFCの判断]

 (CAFCの判断は’494特許と’571特許で共通点が多いため,以下では’494特許に関する判断を中心として紹介する)
 Teva判決に基づき,CAFCはde novo基準でPTAB判断をreviewした。その結果,まずPTABが無効と判断したClaimsに対する判断を支持している。具体的な例として,’494特許claim 45に関して, PTABは先行文献(Fox papers)からobviousであるとして無効判断をした。これに対して,S社は,その先行文献(Fox papers)はあくまで書誌的引用に限定されたものであるのに対して当該’ 494特許はWebを用いた検索である点,加えて,先行文献はWebが広く使われ始めた時代よりも前の文献である,旨に基づき,obviousではないとの主張を行った。
 CAFCはこの主張を退けた。まず「obviousness議論は文献を個別に攻撃(attack)することでは否定されない」とのCAFC先例に基づき,Fox Papersに明確な記載がなくても,その継続に より出された成果(follow-on work)としてPublicになった関連文献(Fox Envision)でそのWebを用いた検索の動機づけがある。その点に鑑みて,Fox PapersとFox EnvisionのCombinationにより’ 494特許claim 45はobviousであり無効とのPTAB判断をCAFCは支持した。
 他方で,PTABが維持と判断したClaimsは無効であると覆した(ちなみに,CAFC少数派はPTABの維持判断を支持している)。具体的な例として,’494特許claim 15と16に関して, PTABは先行文献(Fox SMART)では検索の前提となるクラスター分けに関する点で開示があると言えず,維持判断をした。これに対してCAFCは,「PTABは先行文献がteachする全てを 読み取る義務がある」とのCAFC先例に基づき,同じ先行文献(Fox SMART)の記載,及びその中でクラスター分けに関してreferしている文献(Fox Thesis)の記載にも鑑みて,PTAB判断を覆し, ’494特許claim 15と16は無効と判断した。

(岸田 剛一)

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