専門委員会成果物

原告社外弁護士が前雇用会社を被告とする訴訟準備に重要な役割を果たしたとして訴訟代理人不適格および訴訟却下と認定した地裁判決を支持した事例

CAFC判決 2016年9月12日
Dynamic 3D Geosolutions LLC v. Schlumberger Limited, et al.

[経緯]

 Dynamic 3D Geosolutions LLC(D社)は,地質学的データの3次元ディスプレイに関する他社特許7,986,319(’319特許)を2013年12月に購入して保有している。D社は親会社のAcaciaグループ(A社)とともに,2014年2月にSchlumberger Limited(S社)を’319特許侵害で地裁に提訴した。なお,D社は,提訴時に従業員を有していない特許保有会社である。 A社社内弁護士かつD社社外弁護士であるC. Rutherford(R氏)は,2006〜2013年の間,S社社内弁護士であり,社内プロジェクトで’319特許の検討を行っていた経緯がある。そして,R氏は2013年A社移籍後に,’319特許の購入およびS社に対する提訴に関してD社訴訟代理人(CEP)を含めて検討し,A社最高経営責任者へ提案することを承認していた。
 S社はR氏の潜在的利益相反を理由として,D社訴訟代理人不適格の申立てを行った。
 地裁はS社の申立てを認めて,R氏のA社社内弁護士かつD社社外弁護士資格およびCEPの訴訟代理人資格は不適格であること,および,訴答はS社の機密情報を保持しているR氏により作成されたことから訴訟棄却と判決した。
 これに対し,D社はCAFCに控訴した。 

[CAFCの判断]

 口頭審理直前にD社とA社は和解による控訴取下の申立てを行った。一方,S社は和解により控訴審を終結すべきでないと反対し,CAFCは審理を継続した。
 CAFCは以下の認定を行い,地裁の判決を支持した。
  • R氏がS社のために行った行為と,A社およびD社のために行った行為は,実質的に関連している。
  • R氏とCEPとの共同作業により,R氏の知識はCEPに帰属することとなり,CEPは訴訟代理人不適格である。
  • ’319特許購入やS社提訴準備等のR氏の行動は,本ケースの全ての局面を汚染(contaminate)した。
  • 地裁が,汚染された井戸(poisoned well)による訴答を継続するよりも新たな訴訟の開始をD社に求めたことは,裁量権の濫用ではない。 なお,訴訟費用はS社負担とされた。

(兼広 秀生)

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