専門委員会成果物
IPRにおいて非自明性立証責任は特許権者には移らないと判断された事例
CAFC判決 2016年７月25日In re：Magnum Oil Tools International, Ltd.
［経緯］
Magnum Oil Tools International, Ltd.（Ma社）は，オイル掘削技術に関連する特許8,079,413（’413特許）の特許権者である。McClinton Energy Group, LLC（Mc社）は，Ma社の’413特許の全ての請求項に対して以下の�ゝ擇哭△陵�由により特許性が無いとしてIPRを請求した（IPR2013-00231）。�� 主引例Alphaと引例Cockrell及び引例Kristiansenとの組み合わせにより自明
�� 主引例Lehrと引例Cockrell及び引例Kristiansenとの組み合わせにより自明
ただし，�△亮臘イ亡悗靴討話韻豊，亮臘イ魄�用しているに過ぎず，主引例Lehrと構成要件との対比などの分析はなされていなかった。
にもかかわらず，PTABは，上記�△亡陲鼎�，’413特許の全請求項の特許性がないと最終決定を行った。
これに対しMa社は，Mc社が上記�△亮�明性に関する合理的蓋然性の根拠を立証できておらず，PTABの最終決定は誤りであるとしCAFCに控訴した。
［CAFCの判断］
CAFCは，USPTOのIPR手続きにおいて審理開始決定後での非自明性の立証責任は申請者から特許権者に移るとの主張に対し，米国特許法316条（e）の「IPRにおいて，請求人は優位な証拠により，非特許性の提案を証明する義務を負うものとする」という規定に基づき，特許不可理由の立証責任は審理開始決定後であっても申請者側にあり，特許権者に立証責任を移したPTABの判断は誤りであると判断した。また，PTABは引例の組み合わせの動機付けに関する十分な論理的根拠を明確に出来ていないと判断した。
以上の判断より，CAFCは自明性の結論に関する十分な証拠が無いと判断し，PTABの最終決定を差し戻した。
（南 靖彦）
