専門委員会成果物

最小限の接触(minimum contact)に基づいて被告である外国企業への人的管轄権の行使が認められた事例

CAFC判決 2016年7月20日
Polar Electro Oy, V. Suunto Oy’s

[経緯]

 Polar Electro Oy(P社)は,フィンランドの企業であるSuunto Oy’s,(S社),その姉妹会社でデラウェアの企業であるAmer Sports Winter & Outdoor(A社)が特許を侵害している としてデラウェア地裁に提訴した。
 S社は,A社のオーダーに基づいてイ号製品をフィンランドからデラウェアの小売業へと輸出していた。
 しかし,デラウェア地裁は,S社がデラウェアに対して特別な注意を持っていたわけでは無いことを理由に,S社のデラウェアへの十分な接触(sufficient contact)が無いことから,人的管轄権が欠如しているとして告訴を棄却した。
 これを受け,S社はCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 P社は,S社が,(1)A社とデラウェアを含む米国における販売契約を結んでいたこと,(2)イ号製品をデラウェアの小売店へ輸出していたこと,(3)自社ウェブサイトで,デラウェアの 消費者がイ号製品を手に入れられること,及びイ号製品が運ばれる小売店のリストを示していたこと,(4)自社ウェブサイトを介してデラウェアの消費者へオンライン販売を行ったこと, (5)デラウェアの消費者に対して,製品保証及びデータ機密義務を継続していること,を主張した。
 これに対して,S社は,A社との契約では,A社がS社からイ号製品を購入し,所有権がフィンランドで移ること,及び,S社が米国内での出荷や販売を制御しておらず,イ号製品を売買するために米国を訪れたことも無いことを主張した。
 CAFCは,S社が,イ号製品がデラウェアで売られるであろうことを十分に予測して意図的にイ号製品をデラウェアの小売店へ輸出していたことは,米国市場だけでなくデラウェア市場にイ号製品を供給する意思と目的があることを明確に示していると認定した。
 また,CAFCは,S社が意図的にイ号製品をデラウェアへ輸出していたことは,S社がデラウェアへ最小限の接触(minimum contact)を有することを示しており,法の手続きにおいて人的管轄権を行使することが妥当で公正であることを示していると認定した。
 そして,CAFCは,S社に対する人的管轄権が無いという地裁の決定を無効にし,地裁へ差し戻しを行った。

(菱川 輝信)

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