専門委員会成果物

再審査係属中に存続期間満了となった特許に対して,PTABはBRI基準を適用して審査を行うべきではないと判断した事例

CAFC判決 2016年8月9日
In re:CSB-System International, Inc.

[経緯]

 CSB-System International, Inc.(以下C社)が出願人である,電子データ処理に関する特許3,631,953(’953特許)に対して,第三者から査定系再審査請求が行われた。
 再審査において,’953特許は先行例によって最先の発明ではない,あるいは自明ではないと拒絶され, C社はこれを不服として審判部に審判請求を行った。そして審判係属中に,’953特許は存続期間満了となった。
 審判部は,審査官のクレーム解釈を分析する際に,BRI(Broadest Reasonable Interpretation)基準を採用することとし,最終的には,審査官のクレーム解釈と拒絶を支持した。
 C社は,審判部の決定を不服としてCAFCに控訴した。 

[CAFCの判断]

 再審査において,存続期間が満了していない特許に対しては,BRI基準を使用しなければならない。これは,特許権者は再審査係属中に請求項の範囲を狭める補正ができるからである。 (In re:ICON Health & Fitness等)
 しかし,USPTO規則(37C.F.R.§1.530(j))によれば,審査経過中に存続期間が満了した特許に対して特許権者は補正をすることができず,実際,審判係属中に存続期間が満了した特許に対して補正が認められなかった判例(Institut Pasteur & Universite Pierre Et Marie Curie v. Focarino)がある。
 今回のケースにおいても,C社は審判係属中に’953特許の補正ができないことから,審判部は,BRI基準ではなく,Philips基準を適用するべきである。
 ただし,Philips基準によるクレーム解釈を適用したとしても,再審査における先行例によって,’953特許が最先の発明ではない,あるいは自明ではないとの結論は変わらない。
 よって,審判部の拒絶の決定を支持する。

(津田 哲志)

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