専門委員会成果物

CAFCがTV取付キット特許のPTABクレーム解釈を棄却した事例

CAFC判決 2016年6月29日
In re:LF Centennial Ltd., et. al.

[経緯]

  LF Centennial Ltd.(C社)は,TV取付キットに関する特許(8,079,311)の特許権者である。
 C社は,2011年12月にBell’O International Corp.(B社)他を特許侵害として地裁で提訴した。特許侵害訴訟では,クレームに記載されている「spine(脊柱)」という用語の解釈が争点となった。
 地裁のクレーム解釈の判決を待たずに,2012年9月,B社がC社特許のクレーム1〜16に当事者系再審査を請求し,2013年9月に審査官は各先行技術文献に基づいてC社の’311特許は新規性および非自明性なしとして拒絶審決をした。
 不服申立において,PTABは「spine(脊柱)」という用語は「コンソールの背面部の中心位置に配置される必要は無く」,また「コンソールの脚またはサイドパネルと区別される必要はない」 とのクレーム解釈をした。この解釈に基づき,PTABはUS特許7,178,775によってクレーム1,11および14を新規性なし,クレーム12,15および16を非自明性なしとする拒絶を支持した。
 その後,C社はCAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,クレームの技術的範囲を可能な限り広く解釈して「spine(脊柱)」をコンソールの脚またはサイドパネルを含むとして用語解釈したPTAB判断を不当に広いものであると 結論付けた。通常の用語解釈として辞書において「spine」とは「脊柱:背骨または脊柱の支柱」または「脊柱に似た部分」と記載されていること,特許明細書の対応記載および図面ではspine (脊柱)およびサイドパネルを明確に区別していることからこれらを同等のものであるとはできないこと,との観点から再審理し,当事者系再審査でしたPTABの上記クレームの用語解釈が誤っていると判断した。
 CAFCによる「spine(脊柱)」の用語解釈は,一般的に背面部の中心位置に配された支持構造であり,脚またはサイドパネルを含むものではないというものであった。
 また,新規性および非自明性なしとするPTAB判断について,適切なクレームの用語解釈の下では,先行技術文献のサイドパネルまたは脚が「spine(脊柱)」に当たることは誤りであるというものであった。このため,CAFCは,クレームは新規性および非自明性を有すると判断し,拒絶審決を棄却した。

(西城 克利)

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