専門委員会成果物

CAFC大法廷が,Pre-AIAの102(b)のon-saleに該当するためには,製品が商業上の販売の対象でなければならないと結論づけた事例

CAFC判決 2016年7月11日
The Medicines Company v. Hospira, Inc.

[経緯]

 特許権者であるThe Medicines Company(MedCo)は社内に製造設備を持たない製薬会社のため,第三者であるBen Venue Laboratories(Ben Venue)に,医薬品に関する物の特許出願の1年以上前に,その医薬品の製造を委託していた。Ben VenueがMedCoのために製造した,その医薬品の複数のバッチの合計の市場価格は,2,000万ドルを超えていた。訴訟においては,この商取引がPre-AIAの102(b)のon-saleに該当するか否かが論点の1つとして争われた。
 地裁では,Pfaff判決で示された2段階テストを引用して,製品が商業上の販売または販売の申し出の対象でなければならないという第1条件を満たさないとして,on-saleに該当しないと決定した。
 一方,CAFCのパネルでは,上記商取引が商業上の販売を構成するとして,地裁判決を棄却した。

[CAFCの判断]

 CAFC大法廷は,商業上の販売とは,統一商事法典(U.C.C.)の2-106節に従った一般的な特徴を持つものであると示し,上記商取引は,特許製品の商業上の販売を構成しないと結論づけ,地裁判決を支持し,CAFCのパネルに差し戻した。U.C.C.の2-106(1)節には,「販売」とは「価格に対して売主から買主に所有権を譲渡すること」と規定されているところ,上記商取引では,特許製品のMedCoからBen Venueへの所有権の移転は無かった。また,CAFC大法廷は,委託製造業者による,特許製品そのものではなく,その製品の単なる製造サービスの販売は,発明の商業上の販売を構成しないこと,さらに,製造サービスの購入者による将来の販売のための特許製品の“備蓄”は,102(b)の下,不適切な商業化ではないことを示した。また,CAFC大法廷は,商取引によって,当事者の両方に商業利益があっても,それはon-sale barをもたらすのに十分ではないことを示した。

(野村 亮介)

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