専門委員会成果物

いくらか劣る結果を結果であったとしても,置換可能であると判断された事例

CAFC判決 2016年6月17日
In re:Youqing Zhang

[経緯]

 Youqing Zhangは,編み物がほどけてしまうことを防ぐための方法(構成)に関する特許出願(出願番号US12/023,047)を行った。審査において,本件特許出願に係る発明は,2つの引用例の組み合わせにより自明であるとして拒絶された。
 本件特許出願に係る発明では,「第1の糸はコーティングされていない」という限定がなされている。一方,引用例である特許US4,748,078(Doi)では「コーティングされた糸」が開示され,引用例である特許US4,818,316(Weinle)では「コーティングされていない糸」が開示されている。審査官は,引用例Doiが本件特許出願に係る発明を実質的に開示していると判断した上で,引用例Doiの「コーティングされた糸」を引用例Weinleの「コーティングされていない糸」に置換することは可能であるとして,これらの引用例は組み合わせることができると判断した。
 これに対して,Zhangは,審判請求を行い,これらの引用例を組み合わせることに阻害要因(teach away)があると主張した。しかし,PTABは,当該審査官による拒絶を支持する審決を行った。
 そして,Zhangは,当該審決に対して,不服申立てを行った。

[CAFCの判断]

  CAFCは,引用例Doiに開示された編み物を作るために引用例Weinleの「コーティングされていない糸」を使うことが,引用例Doiの「コーティングされた糸」によってもたらされる長所,つまり触り心地を失わせてしまう,という点を認めている。
 しかし,CAFCは,引用例Doiの「コーティングされた糸」を引用例Weinleの「コーティングされていない糸」に置換したとしても,いくらか劣る(somewhat inferior)結果をもたらすだけで あると判断した。そのため,CAFCは,これらの引用例を組み合わせることに阻害要因はないと結論付けた。

(小林 祐樹)

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