専門委員会成果物

先行文献を組み合わせる動機があるとして拒絶した審判部の判断を支持した事例

CAFC判決 2016年6月14日
In re:Hani Kayyali, et. al.

[経緯]

 Hani Kayyali(K氏)は,被験者が家で眠るときに,屋内無線システムを介して被験者から生理学的/運動学的データを収集して睡眠分析をする方法を出願した。家での睡眠試験は,実験室で行われる睡眠試験に比べ被験者が安眠するため,より正しいデータを提供する。睡眠試験データはリアルタイムに送信され,遠隔地で専門家によって分析される。
 審査官は,WestbrookとFeyの先行文献を組み合わせて拒絶した。Westbrookには,睡眠時無呼吸を検出する生理学的信号を収集/分析するシステムが記載されている。そのシステムはデータを 収集し,データを処理/レポート生成する外部施設へ送信する。Feyには,電子カルテの記録を管理/分析するシステムが記載されている。
 K氏は審判を請求し,Westbrookに対し,遠隔地にいる専門家に睡眠データを分析させるように変更する動機はなく,さらに,Westbrookは専門家を使うことを排除していると主張した。 K氏はまた,Feyは「携帯型の生理学的モニター」が記載されていないため技術的に非類似だと主張した。
 審判部は審査官の判断を支持した。審判部は,睡眠障害の分析結果を得るためにWestbrookのコンピュータ分析に換えて,Westbrookに教示されている睡眠を専門とする臨床医を使って分析する方法に置き換えることは当業者にとって容易だと判断した。また審判部は,睡眠データを検証するために専門家を使うことや,睡眠データを遠隔地に送ることは周知だとした。
 これに対しK氏は控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは審判部の判断を支持した。CAFCは,Westbrookは睡眠を専門とする臨床医による分析は典型的だと述べており,コンピュータ分析に換えて,より良い分析を得るために専門家による分析に置き換える動機があると判断した。またCAFCは,Westbrookは睡眠を専門とする臨床医による睡眠試験は高価で,また,医療機関が限られたガイドラインを提供していたので臨床医による検出結果は変わりうることを示唆しているが,それは専門家を使うことを排除するものではないと判断した。またCAFCは,FeyはK氏の発明の課題である医療装置の携帯性に関連しており,さらに,Feyは携帯型医療装置を使った患者のケアを提供するものであるから,Westbrookが携帯型医療装置を使った患者のケアの恩恵を受けるために,Feyと組み合わせる動機があると判断した。

(山田 量也)

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