専門委員会成果物

101条保護適格性テストのステップ2Bにおいて保護適格性が認められた事例

CAFC判決 2016年6月27日
BASCOM Global Internet Services, Inc. v. AT&T Mobility LLC and AT&T Corp.

[経緯]

 BASCOM Global Internet Services, Inc.(B社)は,AT&T Mobility LLC他を,インターネットコンテンツのフィルタリング技術に関する特許(5,987,606)の侵害で提訴した。これに対し 地裁は,’606特許のクレーム1,22,23は,Alice判決で導入された「発明概念(inventive concept)」を含まず,抽象的アイデア(Abstract idea)を超えるものではないため,101条の 保護適格性が無いと判断した。

[CAFCの判断]

 B社からの上訴を受けたCAFCは,コンテンツのフィルタリング自体が抽象的アイデアである点(保護適格性テストのステップ2A),及び,’606特許クレームの個々の構成要件に「発明概念」が存在しない点では地裁の判断に同意した。一方で,CAFCは,構成要件の組合せには「発明概念」が存在すると判断し,地裁判決の破棄差戻しを決定した。
 即ち,CAFCは,構成要件の組合せに対する発明概念の有無の地裁判断が103条の非自明性の判断に類似する点を指摘しつつ,構成要件の組合せから導かれるフィルタリング技術(各エンドユーザ向けにカスタマイズされたフィルター機能を有するフィルタリングツールを,エンドユーザから離れた特定の場所に設置すること)は,コンテンツをフィルタリングする全ての方法を占有するものではなく,むしろフィルタリングという抽象的アイデアに対する特定かつ個別の実施形態を規定するものであるとして,「発明概念」を含む(同テストのステップ2B)と判断した。
 尚,付随する同意意見において,Newman判事は,CAFCの判断に同意する一方,保護適格性の判断は,明確な定義もない「発明概念」の有無よりも101条の条文そのものに従って行い,その結果生じる不適切なクレームへの対処を他の特許要件(112条,102条,103条)の適用による解決に委ねることを提案した。
 また,Newman判事は,特許性の判断が特許紛争解決に直結することが多いことから,効率的な紛争解決のため,保護適格性の判断より先に特許性の判断を行うことを提案した。

(吉田 晴信)

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