専門委員会成果物

自然法則に関連する発明であっても,35 U.S.C.§101の特許適格性を有すると判示された事例

CAFC判決 2016年7月5日
Rapid Litigation Management Ltd. et. al. v. Cellzdirect Inc. et. al.

[経緯]

 Rapid Litigation Management Ltd.(R社)らは,「少なくとも2回凍結融解でき,かつ最終融解後に70%超の肝細胞が存在する,凍結保存肝細胞の製造方法」に関する特許(7,604,929)を 保有しており,Cellzdirect Inc.(C社)らが当該特許権侵害しているとして地裁に訴訟を提起した。他方,この訴訟においてC社らは,最高裁が示したtwo-part testの基準(Mayo Collaborative Servs. v. Prometheus Labs. Inc.)を示しつつ,’929特許が35 U.S.C.§101および112の規定に違反しており,特許適格性欠如により当該特許は無効であるとしてサマリー ジャッジメントの申立てを行った。その結果,地裁はC社の主張を認め’929特許が35 U.S.C.§101の規定に違反しているとして,特許無効のサマリージャッジメントを下した (35 U.S.C.§112については審理されていない)。これに対し,R社らは,この判決を不服として控訴した。

[CAFCの判断]

 まずCAFCは,’929特許に係る発明が,多数の凍結融解サイクルを生き残るという肝細胞の能力を対象としたものではなく,肝細胞を保存するための新規かつ有用な技術を対象とするものであると判示した。このような理由から,CAFCは,地裁の認定,すなわち’929特許に係る発明は,肝細胞が多数の凍結融解サイクルを生き残ることができるという発見に基づくものであり,自然法則を対象としたものであるとの認定が誤りであることを判示した。
 さらにCAFCは,’929特許に記載の各工程(凍結工程,融解工程,分離工程等)は,当該特許が属する技術分野において非常によく知られたものであるが,これらの工程の組み合わせによって,今まで1回しかできなかった凍結融解が2回できるようになり,有用な肝細胞の保存方法が提供されると説明した。このような理由から,CAFCは,’929特許に記載の各工程の組み合わせは新規かつ発明の思想を提供するものであり,’929特許に係る発明の特許適格性を認めると判示した。
 以上のことから,CAFCは地裁の判決を無効として審理を差し戻した。

(野口 勝彦)

Copyright (C) Japan Intellectual Property Association All Rights Reserved.