専門委員会成果物

デザイン特許の権利範囲に対する機能的要素の寄与が判断された事例

CAFC判決 2016年4月19日
Sport Dimension, Inc., et al. v. Coleman Company, Inc., et al.

[経緯]

 Coleman Company, Inc.(C社)は,救命胴衣に関するデザイン特許623,714(’714特許)の権利者である。’714特許は,胴体部,及び胴体部に接続した2つの腕バンドを有する救命胴衣を開示する。
 ’714特許に基づいてC社は,製品の販売等の中止を求めるレターをSport Dimension, Inc.(S社)へ2013年8月に送付した。その後S社は,’714特許を侵害していない旨の確認判決を求めて2014年1月に地裁へ提訴した。
 地裁は,’714特許における胴体部の形状,及び腕バンドが装飾的要素ではなく機能的要素であることを理由に,胴体部の形状,及び腕バンドを除外してクレーム解釈を行い,S社の非侵害を 認定した。これに対してC社は控訴した。  

[CAFCの判断]

 CAFCは,デザイン特許に関してはデザインの装飾的な側面に限定してクレーム解釈すべきであることを前提に,デザインは機能的要素及び装飾的要素の両方を含み得るものであり,デザインが機能的要素及び装飾的要素の両方を含む場合は,デザインの非機能的な側面に着目してクレーム解釈すべきであるとした。
 またCAFCは,デザイン特許に関するこれまでのクレーム解釈では,機能的な特徴と装飾的な特徴をCAFCが区別してきたと述べた上で,たとえ構成要素が機能的な役割を果たす場合であっても,当該要素を完全に除外してクレーム解釈を行っている訳ではない旨を確認した。
 その上で,胴体部の形状と腕バンドが機能的な役割を果たすという地裁の結論には同意する一方で,これらの構成要素を完全に除外した地裁のクレーム解釈は,デザイン特許のクレーム解釈の原則に反しているとCAFCは認定した。
 以上から,非侵害の地裁判決は破棄され,地裁へ審理が差し戻された。

(仲井 智至)

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