専門委員会成果物
ソフトウェアに係る抽象的アイデアについて，保護適格性をもたらす発明要素の追加の存在が否定され，特許保護適格性を欠くと判断された事例
CAFC判決 2016年５月17日TLI Communications LLC v. AV Automotive, LLC, et al.
［経緯］
�� TLI Communications LLC（Ｔ社）は，デジタル画像を取得，伝送，管理する方法及びシステムに関する特許（6,038,295）に基づき，AV Automotive, LLC（Ａ社）を特許侵害で地裁に提訴した。 地裁は，’295特許が特許法第101条に係る保護適格性を欠くため無効であるとのＡ社の主張を認める判決を下した。�� Ｔ社は地裁の判決を不服としてCAFCへ控訴したが，CAFCは，Alice事件に示すtwo-part testを適用して’295特許が保護適格性を欠くとした地裁の判断を支持する判決をなした。
［CAFCの判断］
CAFCは，two-part test の第１ステップに関して，’295特許は，Ｔ社の主張する様なコンピュータ機能の具体的な改良を目的とするものではなく，インターネットにおける特有の問題を解決するものでもなく，デジタル画像を体系化された手法で分類し蓄積する抽象的アイデアであり，保護適格性を付与するに足る十分な発明概念を追加していない，と判断した。さらにCAFCは，同テストの第２ステップに関して，’295特許に係る（電話ユニット，サーバなどの）各物理的構成要素は，これらの一般的な使用態様に従って，予期される通りに正確に振る舞うに過ぎないとの判断を示した。そしてCAFCは，クレームでは管理された手法でデジタル画像を分類して蓄積する抽象的アイデアが電話システムにて実行されると述べられているが，’295特許はそのアイデアを実行する上で必須となる必要な詳細情報を提供していないと述べた。つまりCAFCは，「それをコンピュータ上で用いる」ということを述べるだけの単なるステップは保護適格性を有し得ないことを指摘した。
以上よりCAFCは，’295特許に係る各物理的構成要素は，抽象的アイデアが保護適格性を満たすほどに十分な発明要素を追加したことにはならない，との判断を示し，’295特許が保護適格性を 欠くとして，地裁の判断を支持すると結論付けた。
（吉田 拓也）
