専門委員会成果物

Seagate判決にて確立された,故意侵害の有無を決定するための2段階テストを最高裁が否定した事例

最高裁判決 2016年6月13日
Halo Electronics, Inc. v. Pulse Electronics, Inc., et al.

[経緯]

 Halo Electronics, Inc.(H社)が保有する特許(5,656,985他)をPulse Electronics, Inc.(P社)の製品が侵害したとして, H社がP社を地裁に提訴した。陪審はP社が侵害しており,さらに故意侵害の可能性が高いと判断した。しかし地裁はSeagate判決にて確立された,故意侵害の有無を決定するための2段階テストを適用した結果, 「客観的な無謀性(objective recklessness)」を満たしていないとし,284条の賠償額の増額を認めなかった。H社は控訴したがCAFCは地裁判決を支持した。それに対してH社は上告した。

[最高裁の判断]

 最高裁はSeagate判決の2段階テストは,明確な制限や条件を含んでいない284条と整合しておらず,不当に厳しく, 地裁の裁量を妨げるものであると否定した。また,特許侵害訴訟では証拠基準は「明白かつ確信を抱くに足る証拠(clear and convincing evidence)」ではなく,「証拠の優越(preponderance of the evidence)」が適用されており,賠償額の増額に関しても例外ではないとし,CAFCへ差し戻した。

(堀江 暁)

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