専門委員会成果物
明細書に記載のない機能に基づく均等侵害が認められた事例
CAFC判決 2016年５月16日Intendis GmbH, et al. v.
Glenmark Pharmaceutical Inc., et al.
［経緯］
Intendis GmbH（Ｉ社）は皮膚疾患治療剤FinaceaR Gelに関する「アゼライン酸を含む組成物」の特許（6,534,070）を独占的にライセンスされている。Glenmark Pharmaceutical Inc.（Ｇ社）は，Hatch-Waxman法の規定に従い，FDAに対してオレンジブックに掲載される’070特許の無効及び非侵害を主張し，パラグラフ�犬両斂世鯆鷭个垢襪閥Δ貌閏劵献Д優螢奪�製品の医薬品簡略承認申請（ANDA）を行った。
Ｉ社は，Ｇ社が’070特許を侵害するとして，ANDA訴訟を地裁に提起した。地裁では，Ｇ社製品に浸透増強剤として使用されているミリスチン酸イソプロピルと，クレームの トリグリセリド及びレシチンとの均等の成否が争点となったが，地裁は，’070特許に係るクレーム1-12に対する均等侵害及び該クレームが無効でない旨を判決した。
Ｇ社は上記判決を不服としCAFCに控訴した。
［CAFCの判断］
CAFCは，下記� 銑�の均等に関する地裁の判断は適切であるとし地裁の判決を支持した。�ゞ囘�侵害については，機能−方法−結果テストに基づき，Ｇ社製品のミリスチン酸イソプロピルが，クレームのトリグリセリド及びレシチンと実質的に同一の浸透増強効果を 有するとして，Ｇ社の均等侵害を認定した。Ｇ社は，明細書にはトリグリセリド及びレシチンの浸透増強効果の記載はないと主張したが，CAFCは，均等論の適用に当たり，明細書に 機能が説明されている必要はないとして，当業者にとってその機能が何であるかの事実認定は外部証拠に依拠できるとした。
�▲�レームの均等範囲に先行技術が含まれるか否かについては，地裁は，Ｇ社製品のミリスチン酸イソプロピルを含む仮想クレームを採用し，専門家証言による先行技術との比較から ，必ずしも置換の必要はなく，成功する合理的な期待も得ないので先行技術は含まれないと判断した。Ｇ社は，仮想クレームは全ての浸透増強剤を含むべきと主張したが，CAFCは，全ての浸透増強剤が均等とされているわけではないとして，Ｇ社の主張を退けた。
��審査経過禁反言については，’070特許は審査段階の減縮補正によりレシチンを含まない製剤を放棄しているとのＧ社の主張に対し，地裁は，当該補正は審査の過程においてレシチンを含まない従属項の記載内容を明確にする目的で行われ，レシチンを含まない製剤は放棄されず，クレームに含まれると判断した。Ｇ社は，上記地裁の判断には誤りがあると 主張したが，CAFCは，審査経過の出願人の主張からも当該補正が明確化を目的とすることは明らかであるとして，Ｇ社の主張を否定した。
（加藤 義裕）
