専門委員会成果物
転職前に発明者が譲渡した特許に対して譲渡人禁反言が適用された事例
CAFC判決 2016年３月23日MAG Aerospace Industries, Inc., et al. v. B/E Aerospace, Inc.
［経緯］
発明者Pondelick（Ｐ氏）は，前会社に特許を譲渡した後，被告であるB/E Aerospace, Inc.（Ｂ社）へ転職した。後に特許は原告であるMAG Aerospace Industries, Inc.（Ｍ社）へ 譲渡され，Ｍ社がＢ社を提訴した。地裁は譲渡人禁反言を適用し，Ｂ社の無効主張を退けた。なお，Ｂ社製品は非侵害との略式判決もなされ，両社が控訴した。［CAFCの判断］
譲渡人禁反言（Assignor Estoppel）は，発明者などの特許の譲渡人や，譲渡人と当事者関係にあるものが特許の有効性について争うことを禁止している。当事者関係かどうかの評価方法として，Shamrock Techs., Inc. v. Med. Sterilization, Inc., 903 F.2d 789, 793（Fed. Cir. 1990）にて８つのファクターが示されている。 これをふまえＢ社は，被疑侵害品の開発決定後にＰ氏が入社し，Ｂ社からＰ氏への金銭的利益がほとんどなく，Ｐ氏が侵害を避けるべく最良の努力をしたこと，から当事者関係には あたらない旨の主張を行った。
CAFCはＢ社の主張を認めつつも，Ｐ氏は現在Ｂ社に勤務しており，�。村劼錬仍瓩涼亮韻鯣鏥真�害活動に用い，�■仍瓩枠鏥真�害品の開発を目的として雇用され，��Ｐ氏はＢ社に 技術部門の管理者として入社し，その後は被疑侵害品を製造する部門のVP兼GMに就任していることから，Ｂ社におけるＰ氏の関与が大きく，Ｂ社は発明者であるＰ氏と当事者関係に あると認定した。
以上より，CAFCは譲渡人禁反言を適用し，当事者関係にあるＢ社の無効抗弁を退けた。なお，侵害論についてはＭ社の主張を棄却し，非侵害と結論付けた。
（河村 知史）
