専門委員会成果物

遺伝子関連の検出方法に関して,Mayo/Alice判決の2ステップを適用し,101条の特許適格性がないと判断した事例

CAFC判決 2016年4月8日
Genetic Technologies Limited v. Merial L.L.C. and Bristol-Myers Squibb Company

[経緯]

 Genetic Technologies Limited(G社)は,Merial L.L.C.(M社)とBristol-Myers Squibb Company(B社)に対して特許侵害訴訟を提起し,遺伝子座のアレルを検出する方法に 関連する米国特許5,612,179(’179特許)を侵害したと主張した。
 これに対し,M社およびB社は,’179特許のクレームは,米国特許法101条の下,自然法則のみで構成される検出方法であるため特許適格性がないことから無効であると主張し,地裁はこの主張を認めた。
 G社は,それに対して控訴した。

[CAFCの判断]

 CAFCは,’179特許の特許適格性の有無を,Mayo/Alice判決で示された2ステップを用いて判断した。
 Mayo/Alice判決の2ステップのステップ1とは,クレームが特許不適格性のコンセプト(Patent in-eligible concept)の一つにあたるかを判断するステップである。具体的には クレームが自然法則,自然現象,抽象的なアイデアであるか判断するステップである。ステップ2は,ステップ1で自然法則,自然現象,抽象的なアイデアであると判断された クレームに,発明思想(Inventive concept)が含まれているかを判断するステップである。
 ’179特許のクレームは,遺伝子座のアレルを検出する方法で,まず遺伝子のDNAをプライマー対で増幅するステップで,プライマー対が非解読領域をスパニングし,十分な ヌクレチドを含有し検出すべきアレルと遺伝子的連鎖にあるDNA配列を定め,遺伝子のDNAを増幅して,そのアレルをもつ増幅されたDNA配列を産生する。次に,増幅されたDNA配列を 分析して,検出するステップで構成される。
 上記クレームに対して,Mayo/Alice判決の2ステップを適用すると,まず,ステップ1においては,そのクレームの検出方法が体の中で自然に発生する現象や過程であるため, クレームは自然法則であると判断した。この結論は地裁と同じである。
 次に,ステップ2において,本願クレームは,新しい物理的テクニックでも,新しい遺伝子座を分析する方法でもなく,明確によく知られ,慣例で,従来技術にすぎず,特許適格性を 有するほどの十分な発明思想はないと判断した。
 その結果,CAFCでも,地裁と同様,’179特許は特許適格性がなく,無効であると判示した。

(桑野 陽一郎)

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