専門委員会成果物

地裁が示した特許侵害を認める判決について,クレーム解釈の誤りを理由に,原審破棄,原告の請求棄却を自判した事例

CAFC判決 2016年2月29日
Eon Corp. IP Holdings LLC v. Silver Spring Networks, Inc.

[経緯]

 Eon Corp. IP Holdings LLC(以下,E社)は,Silver Spring Networks, Inc.(以下,S社)がE社特許(5,388,101,5,481,546および5,592,491)を侵害したとして訴訟を提起した。
 これらの特許は,地元の加入者と基地局の間の双方向通信ネットワークシステムに関するものであった。
 裁判中,これらの特許のクレーム内の“portable”と“mobile”の用語の解釈について争いがあったが,地裁は,意味は明確で陪審が読めば理解できるので,通常の意味を越えてクレームコンストラクションを行う必要はないと判断した。そして,これに基づいて,陪審は特許侵害と損害賠償請求を認めた。
 これに対し,S社はCAFCに控訴した。   

[CAFCの判断]

 CAFCは,地裁の判断は,用語の解釈の争いを解決して明確な理解を提供するものではなかったと判断した。さらに,もしきちんと用語の解釈が為されていれば,陪審は合理的に特許侵害の評決をすることはできなかったとして,差し戻し審理は不要であるとした。
 その上で,CAFCは,前述の用語について,明細書の文脈から,本件特許に記述されているのは,「携帯型電池式加入者ユニットは,メーターの位置に持ってこられるかもしれない」と いうことに過ぎず,建物の外壁に設置されて15年も使われるようなS社の製品は,動かすことが可能だからといって,その範囲に含まれるものではない,とした。
 以上のように,CAFCは,正しいクレームコンストラクションにおいて,証拠が侵害の評決をサポートしない場合,新たなトライアルは不要であるとして,原審を破棄し,原告である E社の請求を棄却すると自判した。

(今津 康元)

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