専門委員会成果物

トライアルの対象とならなかった特許に対しても非侵害と判断した地裁判決を支持した事例

CAFC判決 2016年2月22日
Nuance Communications, Inc., et al. v. ABBYY USA Software House, Inc., et al.

[経緯]

 Nuance Communications, Inc.(N社)は,ABBYY USA Software House, Inc.(A社)らがN社の8つの特許を侵害しているとして地裁に訴えた。地裁の手続き中,N社は自らトライアルの対象を3つの特許に絞った。その後,陪審員は非侵害の評決を出し,地裁は,N社がトライアルで選択しなかった他の特許を含めすべての特許についてN社に不利な判決を出した。N社は,選択しなかった特許でのトライアルを求めることを理由の1つとして控訴した。  

[CAFCの判断]

CAFCは,地裁での手続きにおいて,
  • N社は代表する特許でトライアルを行うことを意図していたこと,
  • 事案管理に関する地裁とのやり取りにおいて,N社はすべての特許でマークマンヒアリングを進めることを期待するが,「最良の」特許でトライアルを行いたいと述べていたこと,
  • N社の懸念がトライアルで特許の数を限定することではなく,誰が特許を決定するかどうかであったこと,
  • 最終的にN社は自ら特許を選択したこと,
  • 事案管理の専門委員の提言のどこにも1回以上のトライアルが開催されるとの示唆もなく,むしろ代表的な特許に対するトライアルが1回開催されることを保障すると結論付けていること,
  • N社はこの提言に対して異議申し立てをしなかったこと,
  • N社はまた,In re Katz Interactive Call Processing Patent Litigation, 639 F.3d 1303(Fed. Cir. 2011)を自らの主張のサポートとして挙げていたが,本事例では,N社は地裁によるふるい分けに積極的に参加し,トライアルで負けるまで異議を申し立てていなかったこと
等の事実を考慮すると,選択しなかった特許に対する2回目のトライアルを行う権利はN社にはないとした地裁の判断に適正手続き違反はないと判断し,地裁の判決を支持した。

(児玉 博宣)

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