専門委員会成果物
コンサルティング契約の記載のみでは発明者を特定できないとした事例
CAFC判決 2016年２月５日TriReme Medical, LLC v. AngioScore, Inc.
［経緯］
��AngioScore, Inc.（Ａ社）は，AngioSculptという血管形成バルーンカテーテル製品に関する特許（Ａ社特許）を保有している。Ａ社特許には，発明者として，AngioSculptの開発の際にＡ社のコンサルティングを行っていたロータン氏の名はなかった。�■措劼肇蹇璽織鷸瓩蓮ぅ灰鵐汽襯謄�ング契約を締結しており，その契約書には，（a）締結日以前に存在するロータン氏の発明を特定するために別紙に記載すること，（b）締結日以降の発明は全てＡ社に譲渡すること，と記載されていた。しかし，ロータン氏は別紙に何も記載しなかった。
��TriReme Medical, LLC（Ｔ社）は，Ａ社特許が将来的に脅威となると考え，ロータン氏からＡ社特許におけるロータン氏の寄与分に関する全権利の譲渡を受け，それとともに，Ａ社に対して，Ａ社特許の発明者にロータン氏を加える訂正を行うことを求める訴えを提起した。
�ぃ措劼蓮き◆�a）（b）のコンサルティング契約内容に基づいて，ロータン氏はＡ社特許に関する何らの権利を持っていないことを理由に，当該訂正を拒否した。
�ッ郎曚蓮ぃ措劼亮臘イ匹�り，Ｔ社の請求を棄却したところ，Ｔ社はCAFCに控訴した。
［CAFCの判断］
CAFCは，コンサルティング締結日以前に一日だけ，ロータン氏がAngioSculptのプロト機の試験を実施している事実に注目した。この試験でロータン氏は，動脈からカテーテルを引き抜く際に， バルーンの表面金属に保持力の問題があることを発見した。そして，その後の２回の打合せを通じて，さらに解決策も提言した。のちに許可されたＡ社特許はロータン氏の提言内容と同様であったとされる。 そして，ロータン氏は，当時発明とまでは考えていなかったために，�◆�b）に基づいた契約書別紙への記載を行わなかったにすぎない。よって，たとえ契約書別紙に記載がなかったとしても，ロータン氏が 契約締結前に発明に関してなんらの権利を持たないとは言えず，実際にＡ社特許に関する権利を有し，Ｔ社の訴えを棄却する理由とはならないとして，地裁の決定を差し戻した。（津田 哲志）
