専門委員会成果物

同一ファミリにおいても,用語を厳密に解釈した事例

CAFC判決 2016年2月2日
The Trustees of Columbia University in the City of New York v. Symantec Corporation

[経緯]

 The Trustees of Columbia University(Columbia Univ.)は,同大が保有するデータ分析,およびコンピュータセキュリティ関係の6件の特許を侵害するとして,Symantec Corporation(S社)を 訴えた。地裁では,すべて非侵害(および一部無効)と判断された。
 Columbia Univ.は上記を不服として,CAFCに控訴した。

[CAFCの判断]

 6件のファミリのうち,’084特許および’306特許では,a)通常のプロセス(normal process)により得られるデータを収集する,b)通常使用では観察されないデータを確率論的収集する (以下省略),という構成要件が必須とされた。
 S社はb)の構成を実施しておらず,地裁で非侵害と判断された。CAFCはこの地裁判断を認め,非侵害と判断した。
 次に,’115特許および’322特許では「異常な(状態,機能等):anomalous」という用語が用いられた。地裁では,同一ファミリで用いられる用語は統一されるべき,との観点から, 「anomalous」という用語は,上述のb)通常使用では観察されない,確率論的に収集されたデータと同義であると判断した。その結果,地裁では’084特許および’306特許と同様に,’115特許および’ 322特許も非侵害であると判断された。
 これに対してCAFCは,同一のファミリであっても,親出願が違う,発明者が異なる,などの条件,および,審査経過などを総合的に勘案すると,anomalous=「確率論的に収集されるデータ」と判断する ことは出来ない,とし,地裁に差し戻した。
 残る2件(’544特許および’907特許)も地裁判断を認めた結果,6件のうち4件は非侵害および一部無効とし,’115特許および’322特許に関しては,クレームの解釈が間違っているとして地裁に 差し戻された。

(安福 孝次)

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