専門委員会成果物
Inter Parts Review（IPR）における最終決定の際に，Patent Trial and Appeal Board（PTAB）は，自明性に関する認定を詳細に説明しなければならないと判示された事例
CAFC判決 2016年１月22日Cutsforth, Inc. v. MotivePower, Inc.
［経緯］
Cutsforth, Inc.（Ｃ社）は，電気装置または嵌め込み部品に電流を通すために使用される，取り外し可能なブラシホルダーに関する特許（7,990,018）を保有している。他方，2013年５月８日に MotivePower, Inc.（Ｍ社）は，3,434,708特許，5,043,619特許，および3,864,803特許に基づき，’018特許の全ての請求項（請求項１〜24）は自明であるとして，IPR（IPR2013-00274）を請求した。 その後，PTABは，全ての請求項について審理を開始し，’018特許が’708特許，’619特許，および’803特許に基づいて自明であり，無効であるという最終決定を下した。Ｃ社はこの最終決定を不服とし， 控訴した。［CAFCの判断］
CAFCは，’018特許の請求項１，５，および８に対するPTABの最終決定に対して，以下のように述べた。�＼禅畊爍韻紡个垢�PTABの最終決定は，Ｍ社が主張した自明性に係る根拠を要約し，これを最終決定の理由の１つ
として形式的に採用しているに過ぎず，PTAB独自の具体的な理由が何ら示されていない。
�∪禅畊爍気紡个垢�PTABの最終決定は，部品の位置が単なる設計上の選択であると認定しているに過ぎず，何故
当業者が’708特許記載のような特定の位置に部品を置くのが自明かについての理由を何ら 提供していない。
��請求項８に対するPTABの最終決定は，Ｍ社の論拠を採用しているに過ぎず，改良（変更）が当業者にとってどの
ような点で自明であるのかについての理由が何ら示されていない。
上記� 銑�の点を踏まえ，CAFCは，PTABが最終決定を下す際に，その理由を明確に述べなければならないと判示するとともに，認定の根拠を説明しなければならないと判示した。そのうえで，CAFCは，PTABの最終決定には，自明性の認定を支持する十分な説明がなされておらず，事実認定の基となる実質的な証拠があるのか否かを適切に判断することができないことから，PTABの最終決定を無効とし，審理を差し戻した。
（野口 勝彦）
