外国特許ニュース

〈韓国〉韓国特許法改正

 以下,主な改正点について解説する。
  • 出願審査請求期間の短縮(第59条2項(改正))
     改正前は,出願審査請求を行う場合,特許出願日から5年以内に行う必要があった。そのため,長期にわたり権利の帰趨が未確定の出願が多く存在し,第三者の監視負担が増加する 問題点があった。これに対し,改正法では,特許出願日から3年以内に短縮して,権利確定の促進を図った。出願日が2017年3月1日以降の出願から適用される。
  • 職権再審査制度(第66条の3(新設))
     改正前は,瑕疵ある特許出願の設定登録を事前に防止する手段がなかった。これに対し,改正法では,特許決定した特許出願に関して明白な拒絶理由を発見した場合には,審査官は職権で特許決定を取消し,その特許出願を再審査できることとした。尚,権利保護の安定性の観点から,特許権が設定登録された後は職権による再審査を行うことはできない。2017年3月1日以降に特許決定された特許権から適用される。
  • 特許権移転請求制度(第99条の2(新設))
     改正前は,正当な権限なき第三者が特許出願をして特許を受けた場合,特許を受ける権利を有する者は当該特許を無効にするという審決を受けた後,別途,特許出願を行い特許権を 取得する必要があった。これに対し,改正法では,特許を受ける権利を有する者は,特許法院に当該特許権の移転を請求し,特許法院の判決を受け,特許権を移転登録する方法でも特許権を取得できるようにし,正当な権利者の便宜を図った。2017年3月1日以降に設定登録された正当な権限なき第三者の特許権から適用される。
  • 特許取消申請制度(第132条の2から第132条15(新設))
     改正前は,特許権の設定登録日から登録公告日以後3ヶ月以内には何人も特許無効審判を請求することができるが,特許無効審判は審判請求の理由の要旨変更が比較的容易であること,審決取消訴訟において審理範囲の制限がないこと等,手続きが複雑であり審決が確定するまでに長時間を有していた。これに対し,改正法では,日本の特許異議申立制度に相当する特許取消申請制度が新たに導入され,何人も特許権の設定登録日から登録公告日以後6ヶ月以内に,審査で引用されなかった先行技術文献に基づく新規性欠如・進歩性欠如等(第29条 (同条第1項第1号に該当する場合と同じ号に該当する発明により,容易に発明することができる場合は除く。)及び第36条第1項から第3項)を理由として,特許審判院に特許取消 申請を行う事ができ,審判官が査定系の手続きを通じて,当該特許取消の可否を迅速に決定することが可能になった。また,特許取消申請制度の導入に伴い,特許無効審判の主体要件が 利害関係人または審査官となった(第133条(改正))。2017年3月1日以降に設定登録された特許権から適用される。
  • 侵害訴訟における被疑侵害者の証拠提出義務規定(第132条(改正))
     改正前は,侵害立証や損害額の算定に必要な証拠であっても,被疑侵害者が営業秘密を含むと主張することで,資料の提出を回避することができ,特許権者は侵害立証や損害額の算定に必要な被疑侵害者の売上帳簿等の資料を入手できない場合が多くあった。また,資料提出命令の対象も書類に限定されていた。これに対し,改正法では,侵害立証や損害額の算定に必要な資料であれば,被疑侵害者が営業秘密を含むと主張しても,資料の提出を拒否する正当な理由とならず,また,資料提出命令の対象も拡大され,デジタル資料も含まれる ことになった。さらに,当事者が正当な理由もなく資料提出命令を拒否する場合は,特許法院は相手方の主張を事実と認めることができる事とした。2016年6月30日以降の最初に提起される訴訟から適用される。

(参考ウェブサイト)

国家法令情報センター(韓国語)

(舟津 宇紘)     

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