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〈中国〉最高人民法院による専利権侵害紛争案件の審理における法律応用の若干問題に関する解釈について
最高人民法院は2016年３月22日に「最高人民法院による専利権侵害紛争案件の審理における法律応用の若干問題に関する解釈（二）（以下，「専利権侵害司法解釈二」とする）」を公布し，2016年４月１日に施行された。本専利権侵害司法解釈二は，2009年12月に公布された「専利権侵害紛争案件の審理における法律応用の若干問題に関する解釈（以下，「専利権侵害司法解釈一」とする）」の内容を近年増加傾向にある専利権侵害訴訟案件に基づき補完するものである。本専利権侵害司法解釈二は，�＼賤�権の司法保護の強化，�∪賤�権の保護範囲の明確性向上，��新たな イノベーションに対する制限，公共利益，および他人の合法的権益に対する損害防止を原則とし，その主な内容は以下の通りである。
（1）間接侵害制度の創設
中国の専利制度では，日本の特許法第101条における「間接侵害」の要件が明確ではなかった。本専利権侵害司法解釈二では，第21条に専利権の間接侵害制度が創設され，間接侵害の成立要件が明確化された。
（2）損害賠償立証制度の改善
侵害訴訟における賠償額が低いという要因の一つに，損害額を認定する立証責任が権利者側にあり，立証が困難であったことが挙げられる。この立証困難の問題を解決するため，本専利権侵害司法解釈二の第27条では，権利者が２つの要件を満たした場合，人民法院は侵害者に賠償額の証拠となる帳簿や資料等を提供するよう命じることができると規定されている。また，侵害者が証拠提出を拒否，あるいは詐称した場合，人民法院が権利者の主張と証拠に基づき賠償額を認定することができる。損倍額の立証責任を侵害者側に転換することで，権利者の負担軽減と，高額な賠償額が認定されるケースが増えるものと予想される。
（3）無効審判と侵害訴訟の並行プロセスに関する取り扱い
侵害訴訟後に当該専利権が無効審判により無効とされた後，侵害訴訟を審理する人民法院は，審決取消訴訟の最終判決を待たずに「却下」の裁定をすることができる（第２条）。
これにより，侵害訴訟の審理期間を短縮し，権利者の利益を保護することができる。
また，請求項の記載不備（請求項が明らかに明細書にサポートされておらず，唯一に解釈できない）により，請求項の権利範囲を確定できず，無効理由が明らかな場合は，一般的に訴訟中止が裁定される（第３条）。また同条の後半では，人民法院が審理中に記載不備による無効理由を発見した場合，請求項の保護範囲を確定できることも規定されている。
昨今では，中国における侵害訴訟の受理件数が米国を抜いて世界一となり，海外企業が中国企業から侵害訴訟を提起されるケースも散見される。本専利権侵害司法解釈二は，権利者に有利な規定だけでなく，専利権の保護範囲に不備があった場合は非侵害の判決がなされる可能性が高く，権利者にとって不利な場合もある。したがって，中国における
出願時には請求項および明細書の記載内容が一層重視されることとなり，出願人には明細書作成時に留意が必要である。
（参考）
１）最高人民法院ホームページ「最高人民法院による専利権侵害紛争案件の審理における法律応用の若干問題に
関する解釈（二）原文（参照日：2016. 6. 8）
http://www.court.gov.cn/fabu-xiangqing-18482.html
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