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会務報告&部会報告
関西化学部会（第2回）
| 時 | 2021年11月5日（金）14:00−16:00 |
|---|---|
| 所 | オンライン会議 |
| 人 | 司会：島野 業種担当役員、大野、中登、佐藤各幹事
参加数 40社（49名） |
議 事
1. 会務報告
本年度の関西化学部会の構成、年間活動方針、活動計画、及び特記事項（『季刊じぱ』への記事掲載）を島野業種担当役員が説明した。2. 講演
| 演題 | 大学における知的財産教育 〜大学教育を通じて『知財の学び』を考える〜 |
|---|---|
| 講師 | 大阪工業大学知的財産部 大阪工業大学専門職大学院知的財産 研究科 教授・弁理士 五丁 龍志 氏 |
講演内容について
当日は、『大学における知的財産教育 〜大学教育を通じて「知財の学び」を考える〜』 というタイトルで、日本で唯一、知的財産専門の学部を有する大阪工業大学における教育の考え方、実際の教育手法に関する内容であった。 大阪工業大学 知的財産学部は、知的財産専門の学部であるが、入学してくる学生は、知的財産に関する専門の教育を受けてもいない学生である。そういった、いわば知的財産の素人に対し、- どのような形の教育を行なうか
- どのようにしてスキルを身につけさせるか
（１）知的財産教育について
大阪工業大学 知的財産学部に入学してくる学生は、知的財産について白紙の状態、素人の状態で入学してくる。そのような学生に対し、『知的財産のプロフェッショナルを育てる』という覚悟を持って指導・教育に当たっているとの紹介があった。一方、企業における知的財産教育も、新入社員向けの研修から技術者向けの研修など、それほど知的財産に関する知識・スキルの高くない人を対象にするケースが多いと考えられるため、企業内での知的財産教育に対し、大学での知的財産教育の考え方や進め方は参考になる点もあると考えられた。
（２）大阪工業大学 知的財産学部の狙い
知的財産は企業の経営活動に直結しているため、法律に関する知識に加え、実務の知識・スキルが重要である。従って、学生に対して、知的財産に関する法律の知識を教えただけでは不十分であり、実務に役立つ知識・スキルを身につけさせ、実際の社会・企業において活躍できる学生を育てるようにしているとのことであった。知的財産に関わる業務は出願、調査、侵害判断、交渉など実務・実践が中心となっており、この部分を卒業生の強みとして教育しようとしても、企業で実務を担当している人にはかなわない部分もあるとのことであった。そのため、学生に対しては知的財産に関する法律知識を教え込むことに加え、知的財産の世界におけるルール・基本作法を学ばせるようにしているとの紹介があった。こうすることで、卒業生は、どのような企業の知的財産部に就職・配属されたとしても、知財の世界における基本的なルール・マナーが身についているため判断を誤ることなく、一定のレベル以上の業務ができるようになるとのことであった。
（３）大学での知的財産教育の実例
1年〜2年次前期にかけて知的財産の基礎的な知識、法律に関する知識を教え込み、2年次後期から中間対応や侵害回避といった学んだ知識の実践、知的財産をどう経営に活かすか、といった知識の発展に関する教育を行なっているとの紹介があった。知的財産に限らず、自分が深く関わる物事に対し、その意味について納得する、存在する意味・理由について納得する、ということが重要であるとの説明があった。その上で、企業の技術者に対し、知的財産が重要だ、と説明してもなかなか理解されないという状況は、技術者に対して知的財産の重要性が説明できていないためであり、言い換えれば知財の意義・存在する理由に納得できていないことが原因にあるとのことであった。知財教育では知的財産の意味・存在する理由を納得してもらうようにすることが望ましいとの説明があった。
知的財産がなぜ重要であるかを学生自身が考え、しっかりと理解・納得してもらうため、スマートフォンを購入するとき何を理由に選択・購入するか、知的財産権で保護されなくなり、価格のみで選ばれるようになった場合はどうなるか、といった事例を交えながら知的財産権の重要性を学生に考えさせているとの紹介があった。このように、これから深く学ぼうとする知的財産について、その存在意義・存在する理由を納得するよう教えているとのことであった。
法律に関する知識を教え込んだ後は、その知識を実践する教育として、『発明の抽出』、『中間応答』、『侵害判断』等を仮想事例によって教育・実践させているとの紹介があった。
大学教育として知財実務の知識・スキルを身につけさせようとしているため、学生には、技術の分野に関わらず、『発明の発掘』、『中間応答』、『侵害判断』といった知的財産に関わる実務が一定のレベル以上で行えるように教育しなければいけないと考えているとのことであった。そのため、どんな技術分野においても知財実務ができるよう、各知財実務に対し、しっかりとした型付け、知財実務のマニュアル化がされるよう教育を行なっているとの説明があった。
学生に対し、知財実務について、しっかりと型を付けさせるため、講義の中で分かりやすい仮想事例を使い、どのような手順で、どのような作業を行なうかをやってみせた後、違う仮想事例を使って同じ作業を行なわせ、その知財実務におけるマニュアルを作成し、作成したマニュアルを検証することを繰り返し行なっているとの紹介があった。次いで、作成したマニュアル通りにやってみて、上手くいかなければ修正するという作業を繰り返し行なうことで、マニュアルの完成度が高くなり、学生にはしっかりと型が付けさせられるとのことであった。この過程で作られた型、マニュアルは講義で取り上げた仮想事例だけでなく、化学系・機械系を問わない、つまりどのような技術分野においても応用できる実務マニュアルとなるとも説明があった。このような知識の実践を、企業の知財実務でも多い『発明の抽出』、『新規性・進歩性の判断』、『拒絶理由通知への応答』、『侵害判断』といった場面毎に行なっているとのことであった。
（４）知財教育のまとめ
大学で知財教育を行なう場合、知財を知らない学生を、実務ができるようになるまで教育していかなければならないとのことであった。また、法律の知識を教えただけでは使えるようにならないので、実践が必要になってくる。法律的な知識・ルールと、知識の実践は全然違うものであるとの意見もあるが、基本的な知財の知識・ルールをしっかりと身につけた後、簡単な事例から徐々にステップアップさせるという実践を行い、型を付けていくようにしないと学んだ知識を自由に使えるようにはならないとのことであった。企業に入社してくる新入社員も知財に関する知識は学んでいないと考えられ、そのような人に、知財部の人間が当たり前と思っていることをいきなりやらせようとするのは難しいとのことであった。知財教育では知財を“知らない”人から、知財に関する知識を“使える”という段階まで徐々に引き上げることを目指し、その型作り、実務マニュアルをイメージした知財教育を行なっていくと、教える人も楽になるだけでなく、知財に関する知識の定着、知識の実践が進むとの説明があった。
（５）質疑応答
- 企業において開発部門から知財に異動してくる人は多いと思うが、そういった人への教育で注意する点、効果が高まるコツはないか。
⇒ 開発出身の知財担当者は、発明を抽出する際、先入観から発明を特定してしまう傾向がある。開発者からヒアリングを行ない、発明を抽出するときは細かく対比して発明を把握するよう学生に対して指導している。 - 発明の抽出において、先入観で抽出しない、発明を始めから決め打ちしないようにする教育法・考え方はないか。
⇒ 知財教育の際、分かりやすいように業務に関係した技術分野で教育を行なうと、発明の抽出の手順を省略したり、発明の決め打ちをしたりする可能性がある。敢えて日常業務で扱う技術分野から離れた技術分野で知財教育を行なうと、基本に忠実になり、手順通り発明を把握しようとすることができる。 - 大学の講義では、審決・判例を使っているか、審決・判決例を扱うときの注意点は。
⇒ 法律を勉強するうえで、判断が確定した審決・判例は法律的な効果を生み出すため、ある法律に基づいて、どんな判断がされるのか、を学ぶのに役立つ。審決・判決の学習は時間がかかるため重要度が高いものからやるのがよい。 - 若手の知財教育を担当しているが、教育対象者の専門とする技術分野が様々な分野にわたる場合が多い。例題を出す場合は簡単な例題にした方がよいか。
⇒ 開発担当者は知財が業務の中心でないため忘れてしまうことが多い。忘れないようにするためには型作りが大事だと考える。簡単な例題をやった後、専門の技術分野で実践したり、一度穴埋め形式やってみたりするとよい。
⇒ 知的財産の教育は座学で知識を身につけただけでは実践できない。実践に必要な知識を教え、実践を繰り返すことで実務の型を付けさせるとよい。 - 知財教育において、どうやってモチベーションを持たせ、維持させるようにしているか。
⇒ 知的財産学部に入学する学生であっても知財を学ぶことの本当の意味をわかっている、理解している学生は少ない。知的財産を学ぶことに対してモチベーションを持たせるには、知的財産がなぜ存在するかを理解・納得できるよう教えることが重要と考える。
学生には、知的財産は数ある製品の中から自社の製品を選んで購入してもらうための差別化要素を独占し、効率よく利益を生み出すための手段である、と教えている。そして、効率よく利益を生み出す権利について知っておくこと、基本的な考え方を学んでおくことは社会に出たとき役に立つ、ということを教えることで知的財産について学ぶモチベーションを持たせるようにしている。
以上
関西化学部会（第1回）
| 時 | 2021年6月14日（月）15:00−17:10 |
|---|---|
| 所 | オンライン会議 |
| 人 | 司会：島野 業種担当役員、大野、中登、佐藤各幹事
参加数 73社（141名） |
議 事
1. 会務報告
本年度の関西化学部会の構成、年間活動方針および活動計画を業種担当役員が説明した。2. 講演
| 演題 | 実践に基づいたコンサル型人材育成 〜中間処理から見える、企業戦略〜 |
|---|---|
| 講師 | 住友電気工業株式会社 知的財産部 弁理士 荻野 誠司 氏 |
講演概要
（１）講演内容について
当日は、『実践に基づいたコンサル型人材育成 〜中間処理から見える、企業戦略〜』というタイトルで、講師の過去の経験から学んだ内容に基づく内容であった。まず、知財の品質管理面の紹介があり、権利を活用できるかという点に注意し、権利を活用するためには、特許網を構築して保有しなければならず、その内容を絶えず確認する必要があるとの説明がなされた。
- 社員に対しての教育ができる場面として中間対応を重視しているとの説明があった。その理由として、中間対応は、結果がすぐにわかることに加え、適切に対応するには取得する権利を必要とする事業部の方針を理解し、必要とする範囲の権利を取得しなければならないことなどを挙げられた。
（２）人材育成のポイント
人材育成において、若手社員は他人と質疑、議論することで知識の定着率が高まること、中堅社員は若手社員を教育することで定着率がさらに高まることから、それらを同時行う取り組みとして、『合議』による検討を行っていることの紹介があった。具体的には、『合議』は品質管理を担当するベテラン社員、実務担当の中堅社員、若手社員で構成され、発明者・弁護士・弁理士も交えて出願内容の検討、中間応答方針・訴訟時の応答方針を検討しているとのことであった。
人材育成では『やってみせる』、『説明する』、『やらせてみる』が重要であり、例えば、まずはベテラン社員が実行した後に、担当者に対応させるという流れを作っているとのことであった。
知財訴訟に詳しい弁護士からみた理想の知財部員像とは、
- 自社の製品・技術に詳しい
- 当業者の観点で立証・主張を構築できる
- 立証の準備を会社内で段取りできる
（３）知財業務の品質管理
知財業務の品質管理を行うためには、『質の保証』、『質の評価』、『人材育成』が重要であり、これらのレベル・質を高めることで、知財業務の品質を向上させているとの紹介があった。� 惻舛諒歉據�
知財業務の質を保証するには、業務運用を統一しなければ質の評価ができないため、明細書作成指針など原則的な対応を決め、知財部員間で統一しているとの紹介があった。これにより出願時、中間対応時、査定時の知財業務について業務品質の平準化が図れると共に、コスト削減にもつながっているとのことであった。また、重要度の高い案件については『合議』にかけて仕上げることで、重要案件の品質を高いものにしているとのことであった。
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知的業務の質を評価し、質を継承する取り組みとして、抜き取り評価について紹介があった。
抜き取り評価は、明細書作成時と、中間対応時の業務が対象としており、具体的には、チェックリストに基づき､明細書作成、中間対応の内容をチェックして、悪い点数の出願・中間対応については、当社知財担当者、担当特許事務所の担当者に対し、内容を連絡するという仕組みであった。また、事務所の知財業務を抜き取り評価の対象とし、確認作業を事務所と共同で行うことで、特許事務所のレベル・質の向上につなげる取り組みについても紹介があった。
出願時、中間対応時に続く質の評価として、他社抑止力の評価について説明がなされた。具体的には、各事業部が他社の動向、製品に関する情報を多く持っていることから、権利化後の質の評価は当該権利に関連する事業部にて評価しているとのことであった。
なお、知財部門より、特許権の重要性・他社抑止力を評価する指標を事業部側に伝えているとのことであった。
��『コーチング』
知財部員の教育で、スキルアップして欲しいのは、知的財産部に配属された新人社員であるとの認識のもと、新人に対しては専任のコーチを付け、１年間、原則１対１で指導しているとのことであった。ただし、専任コーチの指導のみで進めると、専任コーチの癖が新人社員にもつくため、偏りが生じないよい注意して新人への教育を進めていることも留意点として説明がなされた。
（４）事例紹介
�� 権利活用できる権利とは
どのような特許権が権利活用・権利行使できる権利となるか、失敗事例、成功事例に基づいた紹介があった。
�� 他社品調査後の出願・権利化
従来技術・既存製品がある中で、どうしたら有効な特許を出願・権利化できるかについての事例紹介があった。
対象となる発明が新規開発によって生み出された発明だけではなく、生産方法やプロセスの改良でも、明細書の仕込みを上手に行うことで有効な権利を取得することが可能であるとの説明があった。
具体的には、有効な権利を取得するためには、
Ⅰ.審査の仕組みを知る。
Ⅱ.明細書をどう工夫するか
Ⅲ.審査官との交渉(面接)をどう進めるか
が重要であることが示された。 特に、�靴凌該佐韻箸慮鮠帖別明棔砲砲�いては、面接制度のメリットとして、
- 直接審査官と交渉できる
- 審査官の心証が把握できる
- 実物を使って説得力ある説明ができる
- データ追加、実験成績証明の提出が認められることもある
- 面接の感触で分割出願、再出願を検討できる
また、調査に関して、最も信頼できる特許調査・先行文献調査は審査官の調査であることについての説明があった。出願、即時審査請求することで、未公開状態のまま拒絶理由を受けることができ、可能性があれば権利化も目指し、権利化が難しそうのであれば出願を取り下げることで当該技術の未公開状態を維持できるという手法など、審査全般について、具体的なテクニックについても紹介があった。
（５）質問事項への回答
��JIPA等の社外活動についての感想に関する質問があり、知財部に配属後、早い段階でJIPAの活動に参加することができたが、自他社の比較、他社担当者からの刺激、他社担当者との人脈形成など、JIPAの活動に参加することはメリットが多かったと回答されていた。
�∪莵塋幻ツ敢困話�が行うか、マンパワーとのバランスはどう考えるかについての質問があり、案件を絞って調査したり、重要度に応じて、開発・知財部のかける工数を変える、などの方法の紹介があった。
�４浜�職の書類チェックについての質問があり、例えば、中間対応時の際のガイドラインを案件の重要度に従って定め、それに沿って判断したりする方法の紹介があった。
�ざζ噂亟蟷�のポイントについての質問があり、共同出願においては相手との関係は対等であると考えるべきであるため、不平等な契約なら変更を申し出る、変更不可なら代案を出したりする方法について、具体事例を交えながら紹介がなされた。
以上
