会務報告&部会報告

2021年度　関西金属機械・関西電気機器　合同部会（第4回）

時 2022年1月21日（金）14:30〜16:30
所 講演会：Web形式
見学・懇親会：なし
人 ＜電気機器部会＞
役員：宇野（GSﾕｱｻ）
幹事：南（ﾊﾟﾅｿﾆｯｸIPﾏﾈｼﾞﾒﾝﾄ）、 竹綱（ｴｽﾍﾟｯｸ）、横井（関西電力）
講師1名、Web参加40名(役員・幹事含む)

議　事

１．開会挨拶

　宇野役員による開会挨拶の後、講演会の講師紹介を行った。

２．講演

演題 『変化する中国先進企業の知財戦略　立ち向かう日本企業の戦略は！〜関西の電気機器業界に向けて〜』
講師 一般財団法人工業所有権電子情報化センター　専務理事、弁理士、鳥取大学客員教授、
IP FORWARD 顧問 　後谷　陽一 氏

講演概要

  1. 講師経歴
    1987年特許庁入庁。審査・審判業務に従事するとともに、総務課、企画調査課等において政府の知財政策を策定する。
    　また日本テクノマート、発明協会において産学の連携、技術移転、知財戦略の展開に携わる。
    　2004年から2007年にかけ、ジェトロ北京センターにおいて、在中国の知財権に関する日本政府代表として、企業サポート等の業務を行う。その後、科学技術振興機構や大学基準協会の委員を歴任。
    　特許庁審査第四部長、審査第三部長等を経て2018年に退職。
    　現在は、工業所有権電子情報化センター専務理事のほか、鳥取大学客員教授も務める。
  2. 講演の内容
    １．発展期の中国企業知財戦略を成功させた日本企業の知財戦略、現在の後発中国企業へ引継がれる
    発展期の中国企業の知財戦略は、全世界の技術文献を調査し、外国企業が中国で特許を持っていなければそれらを利用、外国輸出の際には製品の内容を変更し侵害しないようにしている。それにより、中国企業は自らの製品開発を最小限にとどめ、研究開発費を少なくする戦略を取っていた。
    　一方、日本企業は、日本国内への出願が主であり、グローバルを考慮した出願はしていなかった。そのため、ライバルや中国企業に情報提供するためだけの出願となっていた。
    ２．グローバル競争が開発や製品戦略を変化させたが、知財戦略を伴っていなかった
    　日本企業は日本国内への出願が主だったので、企業のグローバル化により、これまでの知財戦略が無駄になった。グローバルに競争力を維持していくのは困難であったため、多くの分野での製品開発をあきらめ、得意分野に製品を絞っていった。 　　
    ３. コアコンピタンスの変化で電気企業が捨ててきたもの
    　日本企業は、コアコンピタンスの見極めにより多くの技術を捨て、若しくは安く売った。中国企業はそれにより安く技術を習得すると共に知財リスクが少なくなり参入しやすくなった。
    　例えば、関西地域や電気業界といった連携のもとで戦略的共有をしてオープンイノベーションに移行しなければ、先行投資が無駄になる。
    ４．生産拠点として選ばれた国は知財侵害からはじまり、自社技術へと発展する
    　企業が生産拠点として選ぶ進出先国は、貪欲に先進技術を学び取っていくため、知財戦略が必要となる。知財問題は、�仝⇒�取得時の問題、�⊂霾麩咳漫�技術流出の問題、�Ｌ亙鑄覆量簑蠅覆病心瑤砲錣燭襦�
    ５．日本語には既に情報収集能力はないが、中国語は？
    　日本語で情報取れる特許文献は、２００１年は５０％くらいあったが、２０１５年はほとんどが中国語の特許文献となっている。
    　５Ｇなどは中国の特許文献に最先端の情報が入っており、中国語が読めないと最先端情報が得られない。
    ６．最新技術の知財戦略は利益を電気業界にもたらすか
    　ドローンによる農薬のピンポイント散布において減農薬ができ農薬コストの削減がされることにより、予算が農薬からドローンへ移るなどＩｏＴソリューションビジネスにより利益構造が変わることになる。
    ＩｏＴを実現するための層構造は、�ー萋澄↓�通信、�Ｃ濱僉淵咼奪�データ化等）、�な�析（ＡＩ等）、�ネ�活用、�α澗里離咼献優好皀妊襪粒領�のように多くの開発が必要となり、全てを開発するのは難しい。
    ７．面としての権利のマッピングを立体的に捉えると、知財戦略での攻め手の多様化
    　ＩｏＴの層構造を面としてとらえると参入するのは大変になる。��通信に関しては中国、欧米メーカーに牛耳られている。�　銑い悗梁亶海任�る手段としては、半導体チップ、製造装置、材料などの知財を活用するなど、立体的にとらえる必要がある。
    ８．世界から有益な情報と優秀な研究者を集める中国企業
    　標準取得においては、中国、韓国、アメリカ、欧州が中核的な議論をしており、中国においては、中国政府が後押しをしている。
    　中国企業は、昔は日本の研究者を高給で雇っていたが、現在は中国人研究者を世界から回収するようになっている。
    ９．オープンイノベーションに耐える知財戦略へ
    　自社のコア技術と組み合わせる技術は、他社から購入やライセンスで補うオープンイノベーションに移行している。
    　ＩｏＴで全ての産業が交錯する時代は、知財を利用すれば、産業界を超えて利益を電気業界に誘導できる。

質疑

　後谷様によるご講演の後、Web参加者からは、中国に研究所を置く場合の注意点、事業化に利用できる特許権、SDGｓ脱炭素における中国側の捉え方などに関する質問が寄せられ、活発な質疑応答が繰り広げられた。

アンケート

　部会終了後、データエントリー料金値上げに関するアンケートについて参加者へメール送信された。

３．部会報告

　宇野役員より2021年度の部会活動計画の説明を行った。
　第5回の開催については、新型コロナウイルス感染拡大を考慮し中止となる。

４．役員・幹事紹介

　2022年度の役員･幹事の紹介が行われた。

以上　　　　　

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2021年度　関西金属機械・関西電気機器　合同部会（第3回）

時 2021年11月09日（火）14:30〜17:00
所 日本知的財産協会 関西事務所及びWEB（Teams）
人 ＜電気機器部会＞
役員 宇野　元博(ＧＳユアサ) [二業種役員]
幹事 南　康之(パナソニックＩＰＭ)、竹綱　由紀子(エスペック)、横井　賢二郎(関西電力) [二業種会場幹事]
＜金属機械部会＞
役員 花田　考士(栗本鐵工所）
幹事 稲岡　智子(コベルコ建機）、二長　俊行(日立造船）[二業種会計幹事]、友永　忠(ナブテスコ）[二業種記録幹事]
講師１名、他47名　合計55名

議　事

１．開会挨拶

　　宇野役員が開会の挨拶をし、講師を紹介した。

２．講演

演題 『SDGs時代のイノベーションと知的財産制度〜インド・アフリカの事例をふまえて〜』
講師 関西大学　法学部教授　　山名　美香 氏

講演概要

  1. 講師経歴
    　大阪大学博士（法学）。近畿経済産業局近畿知財戦略本部員、内閣府総合科学技術会議知的財産戦略専門調査専門委員、特許庁人材育成協力委員会委員、インド法研究所（インド）客員研究員、トリブヴァン大学法学部（ネパール）客員教授、関西大学法学研究所インド・南アフリカ研究班、関西大学経済・政治研究所アフリカ経済・環境研究班主幹研究員等歴任。専門は知的財産法。2015年よりJICA（国際協力機構）ABEイニシアチブプログラムにてアフリカ７ヶ国の学生指導をご担当。
  2. 講演の内容
    １．SDGsを考える(なぜインド・アフリカなのか)
    　SDGs（Sustainable Development Goals: SDGsは、17の世界的目標、169の達成基準232の指標からなる持続可能な開発のための国際的な開発目標である。すべての人々にとってより良い、より持続可能な未来を築くための青写真であり、貧困や不平等、気候変動、環境劣化、繁栄、平和と公正等、人類が直面するグローバルな諸課題の解決がSDGsの下で目指され始めた。
    そんな中、極度の貧困の中で暮らす人々のほとんどが集中するのが、南アジアとサハラ砂漠以南のアフリカ(サブ・サハラ）である。
    　アフリカは人口が約13憶人であり、2050年には25憶人を超えると言われている。また、インドは人口が約13憶人である。また、2015年の世界の貧困層７億3600万人の半数が、南アジアとサブサハラ5カ国(インド、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、バングラデシュ）に集中しており（世界銀行2019）、サブサハラの他の国を含めると、貧困問題の85％が、南アジアとサブサハラに集中している。さらに、環境破壊、食料・水不足、政治不安、難民問題等も、南アジア、サブサハラで発生している。
    　しかし、インドのGDPの成長率は1995年比で７倍にもなっている。近年はコロナの影響で大幅に減少したが、回復傾向にある（IMF）。2021年3月時点の日系企業のインド進出は1445社に及んでおり、直近は減少しているものの、2006年から見ると増加している。なお、中国進出の日系企業数は2020年１月時点で中小企業を中心に1万3646社である。また、サブサハラのGDP成長率は、コロナ前は世界平均を上回っていた（IMF）。このように、インド、サブサハラは近年成長していることがデータより分る。
    ２．成長するアフリカ？日本との関わり
    　2013年の第5回アフリカ開発会議（TICAD V）で、安倍首相は 「アフリカは、もはや援助の対象ではなく、ビジネス・パートナーである」と宣言している。
    　アフリカの約13億人の人口は、2050年には25億人を超え、中国やインドを上回ると予想されている。そして、2021年1月から始動したアフリカ大陸自由貿易圏（AfCFTA）により、アフリカ全体の共通市場化が進んでいる。さらに、アフリカを介した通商制度の活用で、アフリカが欧米市場向けの製造拠点になることが期待されている。このように、アフリカには潜在的な成長性がある。
    　2016年から2018年の間、アフリカは食料の85％を域外から輸入に頼っており、年間の輸入額は、約350億ドルである。また、2025年までにその額は、1100億ドルに達するとされる。 　　
    ３. インド・アフリカにおけるイノベーションとビジネスモデルの再考
    　このような状況下で、従前の「企業が収益を上げてから、事後的に寄付等の社会貢献で社会を良くするモデル」ではなく、「企業が収益を追求しつつも環境問題や、貧困問題等々の社会問題の解決にも繋がる価値を創造するモデル」である共有価値の創造（CSV：Creating Shared Value）が提唱されているが、CSV提唱前から社会事業をめぐる「新たなビジネスモデル」が実践されてきている。
    　CSVの具体例としては、��BOPビジネス、�∩陲虜�イノベーション、�Ｅ租�的知識活用イノベーション等が挙げられる。�，任惑逝蕊瑤鮹羶瓦箸垢詆郎ち悗鬟ぅ離戞璽轡腑鵑�展開されるマーケットとして捉えており、今やSDGs達成に有望なビジネスモデルとも言えるだろう。�△蓮�農村部を中心とする貧困層を、イノベーションの創作者として捉えるものであり、��は生物資源に関わる伝統的知識を活用にしたイノベーションであり、これらも、SDGs達成に有望なビジネスモデルのはずである。
    1. �，�BOP(Base of Pyramid)ビジネスとは、発展途上国において年間3000ドル（約30万円）以下で生活する低所得者層（BOP層）を対象に、彼らが求める製品・サービスを購入可能な価格帯で提供するビジネスであり、BOP層は、従来は「商売の相手にならない」とされてきた層であった。しかし、21世紀に入ってようやく、中所得発展途上国、さらには、低所得発展途上国もその視野に入ってきた。
      BOPビジネスの登場の意味は、収益を上げつつ貧困を撲滅することである。しかし、顧客、提供する製品・サービスが従来とは異なるために、新規事業の立ち上げも難題が多い。例えば、BOPビジネスだからと言って、安ければ売れる、という定理は存在しない。BOP層向けに低コスト製品を作ることは成功の必要条件であっても十分条件ではない。また、BOP層のニーズ等に対する適切な情報を欠いて、最初に「製品ありき」で、BOPビジネスを立ち上げようとする場合は危険である。高度な自社技術へのこだわりが低価格化の障壁ともなりえる。
      　具体的なビジネスの事例としてよく知られているものとしては、��Vestergaard Fandsen(スイス）による、高品質な浄水装置を中心に埋め込んだ4ドルの飲み水浄化キットや、��Hindustan Unilever(インド）による吸収力の高い紙おむつ・溶けにくい石鹸の開発、��住友化学よるオリセットネットマラリア予防用に殺虫剤を練り込んだ糸仕様の蚊帳を開発、�ぅ筌泪枠�動機による農業用ポンプポンプ使用による新農法（ドリップシステム）で、生産コストの削減に寄与、�テ�本ポリグルによる水質浄化剤納豆菌成分から独自に開発した水質浄化剤（凝集剤（PGα21Ca」）を低価格で販売し、BOP層に貴重な飲み水を提供等が挙げられる。
    2. �△料陲虜�イノベーションの例としては、Honey Bee Networkが挙げられる。これは、Anil Gupta（インド経営大学教授）が貧困層にも存在するアイデアを活かし、社会変革を起こそうとする組織として１９８８年創設されたものである。その後、SRISTI(Society for Research and Initiative for Sustainable Technologies and Institutions:持続可能な技術及び制度のための研究及び独創力の会）という組織に発展している。貧困の村に知財の専門家が訪問し、日々の改善から特許化可能なアイデアの発掘を行い、権利化活動を行っている。2019年度は、米国に10件の出願を行い、6件の特許を取得している。 草の根イノベーションについてのこのような動きが南アフリカにも波及しており、Grassroots innovation を発掘して情報データベースをつくり特許で保護するというHoney Bee Network と類似の活動が展開されている。
    3. ��の伝統的知識活用イノベーションについて、南アフリカでは、国立研究機関(CSIR：Council for Scientific and Industrial Research)、科学技術省国立伝統的知識局、イノベーション財団等が連携し、同国の諸部族コミュニティの生物資源に関わる「伝統的知識」を近代技術と融合させた産官学連携による医薬品、機能性食品、香料、芳香、バイオ農薬関連製品の研究開発を進めてきた。
      　これは、アフリカに豊かな生物資源・伝統的知識を基にアフリカ域内の連携を軸に「イノベーション」を起こし、産業を起こすことの重要性を示している。具体的には、CSIRにおける伝統的知識の活用が挙げられる。代表的な例としては、Hoodiaという植物から抽出された物質を利用して、新しい重量制限（肥満予防）のための食品が開発され事例が挙げられる。本件では、特許化までされ、その植物を保持してきたとされる部族（サン族）の団体にまで利益を配分契約まで締結されている。
      　一方で、2005年からはCSIRは、アフリカ連合（AU）のイニシアティブの下に「アフリカ開発のための新パートナーシップ（NEPAD）」において、南部アフリカで構築されたSANBioプロジェクトの総括拠点となり、南部アフリカ共同体（SADC）諸国13カ国の国立大学及び研究機関を連携させて、アフリカ域内の産官学連携プロジェクトの推進役として動いている。バイオ分野における国際的産官学連携の促進政策の分析は、国際的にも注目されるべき課題であるが、これまでほとんど対象とはならなかったサブサハラ・アフリカ域内で、アフリカ独自のイニシアティブの下で始董ｷし始めた産官学連携は、注目に値する。
    　
    ４．ブランド化戦略！エチオピアの事例
    　現在は、北部ティグレ州を拠点とする政党と連邦政府間での紛争が激化して、国情が不安的な状況にあるエチオピアではあるが、これまでの同国の積極的な国外での知財活用に向けた試みは、興味深く、他の途上国に対しても示唆に富んでいると思われる。エチオピア政府は2005年3月、米国において、ハラー（Harar）、シダモ（Sidamo）、イルガチェフ（Yirgacheffe）について商標出願を行った。前２者については最初は、拒絶されたものの、諦めずに取得を目指し、Harar、Sidamoについても、2006年、2008年商標登録に至った。
    　商標登録が出来たことで、スターバックスとも商標の使用契約についても締結に至っており、ブランド化の確立に成功していると言えるだろう。
    　日本特許庁においても、同様な経緯がある。同政府は、2005年9月に「シダモ」等のコーヒー豆の商標出願を行い、一度商標登録が認められたものの、その後、特許庁は「シダモ」は産地名であるので本来は商標登録事由を欠くとして、日本のコーヒー協会の主張に基づき、登録を無効にした。　それに対して、同政府は、特許庁の決定を不服として知的財産高等裁判所に提訴した。最終的には既に「エチオピア産の高品質コーヒー豆と認識できる」「他商品と識別できるブランド」との理由により、商標登録すべきであるという判断を勝ち取った。（知財高裁平成22年3月29日判決）自国産品のブランド化確立の為に、外国の司法の場でも争おうとする姿勢は、他の途上国にはまだ根付いていない傾向だと思われる。
    ５．インド・アフリカの事例から考える
    　途上国が総じて弱いのは、「創造性」「イノベーション」ではなく、それを投資、起業と結び付け発展させるツールが乏しい点である。　←改行なしで、ツメルこれを解決する方法としては「知財制度」が、重要なツールの一つになる。つまり、途上国の貧しい地域にあっても、埋もれる新たな発想、アイデアをどのように拾い上げて、「イノベーション」に繋げるか、そこでは、知財の保護が不可欠となるだろう。
    　さらに、アフリカでも豊かな生物資源・伝統的知識を基にアフリカ域内の連携を軸に「イノベーション」を起こし、産業を発展させることの重要性を示すプロジェクトがアフリカ連合（AU）主導でも既に開始されている。そこでも、知財の保護なくしては、プロジェクトの発展はあり得ないと考えられている。
    　SDGsが掲げられている現在、日本企業も、インドやアフリカ等の振興国発の新たな「イノベーション」をどうビジネスモデルに組み込み、知財制度の活用を前提として、発展に繋げていくのかそして、世界の課題をどのように解決していくのかを、その成長戦略においても、考えなければならない時代にある。

３．部会報告

　　宇野役員が関西電気器部会の活動状況を、花田役員が関西金属機械部会の活動状況をそれぞれ説明した。

以上　　　　　

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2021年度 関東関西合同電気機器部会（第２回）

時 2021年9月3日（金）13:30-16:30（講演会）
所 ブイキューブ＠白金高輪
人 講師
講演１：株式会社JERA　山下様、大熊様、中島様
講演２：パナソニック株式会社　上田健一様
参加会員（役員・幹事除く）　159名 （126社）JIPA幹事　役員２名、幹事11名
関東：白坂役員、外村幹事、市川幹事、前迫幹事、湯原幹事、臼井幹事、坂本幹事、
岩田幹事、冨田幹事
関西：宇野役員、南幹事、竹綱幹事、横井幹事

１．講演１

演題 「川崎火力発電所オンライン見学」
講師 株式会社JERA　川崎火力発電所　広報グループ　山下様、大熊和様、中島満様

講演概要

（１） 発電所概要説明
  • 火力発電とは　燃料を燃やしてタービンを回し発電
  • 電気の安定供給　エネルギーミックス
    火力発電は天候に左右されない、安定供給が可能。
  • 当発電所は高出力、クリーンな都市型火力発電所
    1961年　最初は石炭
    2016年　最新鋭LNG火力発電所となる
    敷地面積28万�屐∩軆侘�342万KW
（２） 設備の３つの特徴
 特徴１ 高出力、高効率（コンバインドサイクル発電）発電効率61％
圧縮した空気と燃料を混ぜ合わせてガスタービンを回す
排熱で水を蒸気に変えて蒸気タービンを回す
 特徴２　 クリーン
液化天然ガスLNGを燃料とし、燃焼時にばいじんを出さない。
排ガスも触媒を使い浄化。敷地の緑化率も高い（25％）
 特徴３　 地域との共存
近隣工場に蒸気を提供（14000世帯分のCO2削減）
　
（３）補足説明
火力発電の熱効率について
 1970年  42％
  50％　コンバインドサイクル（CC）
  54％　アドバンスコンバインドサイクル（ACC）
 2016年 61％　MACC
熱効率が上がるとCO2が減る。1％で杉の木71本の年間CO2吸収量に相当する。
（４）施設内を中継で案内
  • 中央操作室
    4名×4班　2交代作業　24時間体制
  • MACCタービン建屋の紹介
    天井１５ｍ　3台の発電機がある　もう1台　合計4台
    室内28.5度　外部よりも5度高い（夏場は40度ぐらいになる）
    ガスタービン、蒸気タービン（発電機を回す）
    1分間に3000回転　騒音８０ｄｂ（走行中の地下鉄の車内と同レベル）
  • MACCIIタービン建屋の紹介
    ガスタービン、蒸気タービン、発電機がある。
    予備の部品も用意している（故障時に速やかに修理して安定供給可能にするため） 　
  • 定期検査時の様子の説明
    点検時には400名ぐらいで作業をする。点検時に広いスペースが必要
    タービン近くで点検できるので移動量が少なく作業効率が良い
    3交代で点検することで作業日数を80日から30日に短縮　
  • 純水装置タンク・・・蒸気を作るための純水を貯蔵するタンク
  • 蒸気タービンで仕事を終えた蒸気を海水で冷やして水に戻す
  • 取水口と放水口の海水温度の差を7度以下にしている（海洋生物への影響考慮）　
  • 蒸気供給配管　近隣の工場に蒸気を提供している(地域貢献)
  • 排熱回収ボイラー　ガスタービンの排熱を利用して蒸気を作る設備
    重量は東京タワーの2本分の重さ
    長崎で作り3分割して海上輸送し、現地で組み立て（建設工程を短縮）　　 　
  • 脱硝装置　発生する窒素酸化物にアンモニア注入することによりにより水と窒素に分解する 　　
  • 煙突　3本×２セット　　高さ85ｍ　他の発電所よりも低い
    羽田空港があり、飛行機の運行に支障が無いようにしている。 　　
  • 夜景　土曜日の夜はライトアップ　好評
（５）よくある質問

�｜録迷从�
　 東日本大震災のとき当施設は震度５強だった。
　 被害は配管基礎の沈下、側溝の沈下のみ。発電は継続できた。

��耐震補強
　 排熱回収ボイラ、煙突はダンバー等で地震対策済み。

質疑応答

 質問１：現場の管理で一番つらいことは何ですか？
 → 効率が良い発電所であり、止めている時間を短くする、トラブルがあってはならない、といった使命がある。
現場パトロールで不具合を見つけた場合には、安全最優先で作業する。
 質問２：現在稼働している発電機（ＭＡＣＣ）の耐用年数は何年ですか？
 → 耐用年数の設定はない。メンテナンスをしながら使い続ける。発電所そのものが古くなるので、だいたい
30年を超えたあたりからリフレッシュ計画が行われる。
 質問３：火力発電において技術的に一番難しいことはなんですか？
 → コンバインドサイクルを導入後、効率アップのために、ガスタービンを改良している。高温のガスが当たる
部分のガスタービンの改良が発電効率を上げる肝になっている。
 質問４：発電所内にタービンの予備部品があるが、ほこりなどがついて不具合はないのか
 →予備部品はケースに入っている。ケースの出し入れも時間がかかるので、これも短縮している。
 質問５：発電の技術開発はJERAにて単独で行っているのでしょうか？東京電力や中部電力と共同開発
　　　　　という形が多いのでしょうか？
 →不具合などは一緒に話し合って企画等をしている。いろんなメーカーと一緒にやっている。
 質問６：ＭＡＣＣ等の技術について特許は取得されていますか？
 → メーカーのノウハウなので、メーカーによる。
 質問７：これまでにあったトラブルで大きなもの印象に残っているものはありますか？
 → 蒸気の配管の厚みが薄くなっていて、蒸気が吹いてしまったことがあった。幸いけが人はいなかったが、
夏場で電気が必要な時期だったので大変だった。

２．講演２

演題 「社会課題解決に向けたパナソニックの知的財産活動」
講師 パナソニック株式会社　知的財産　上田　健一　様

講演概要

（１） 講師自己紹介
2001年入社　知財部門配属
　　 権利取得、デジタルＴＶ権利取得、ライセンス契約、特許売却などを担当
2017-2021年、パナソニックＲ＆Ｄシンガポール（株）
　　　APAC地域知財基盤構築、マネジメントを担当
2021　知的財産センター　知財戦略部　コーポレート知財戦略全般担当
（２）パナソニックの紹介
  • 主要商品
    　　アプライアンス（エアコン、テレビ等）
    　　ライフソリューションズ（照明機器、空気清浄機等）
    　　コネクテッドソリューションズ（エンターティンメント、プロジェクター等）
    　　オートモーティブ（コックピットシステム、車載用リチウムイオン電池）
    　　インダストリアルソリューションズ（制御機器、電子部品等）
  • 経営理念と社史の紹介
    　　事業を通じて人々のくらしと社会への発展
  • パナソニックが目指す姿
    　　くらしアップデート
    　　A Better Life 1人ひとりの「今」に合わせた「理想の暮らし」の実現　
    　　A Better World 「くらしアップデート」が普及する社会の構築
    　　お客様・パートナーとの共創
　
（３）パナソニックの社会課題の取り組み
　　よりよい社会の実現
　　SDGｓの取り組み
　　　ＣＯ２ゼロ化、サステナブルな町づくり、安全なモビリティ
（４）社会課題へのパナソニックの知財活動
WIPO GREEN
�� 水中プラズマ技術
�� 人口光合成
�� 休眠特許をシンガポールの企業、大学で活用し、知財起点のオープンイノベーションを推進（ヘルスケア技術）　　　　　
（５）知財を起点としたベトナム社会課題への挑戦

ベトナムの社会的課題��
　　大気汚染　年間1.5兆円の損失（GDPの5.6％相当）
　　室外空質（Outdoor Air Quality）は目に見えるため課題意識高い。
　　一方、室内空質（Indoor Air Quality『IAQ』）は見えないため、課題認識不足。

ベトナムの社会的課題��
　　IAQを測る「ものさし」や国家環境基準が無い
　　IAQを測る「ものさし」や国家環境基準を策定するノウハウがない（建設省）

ベトナムの社会的課題（まとめ）
　　IAQの重要性の認識向上
　　現地のIAQを適切に測る「ものさし」・国家環境基準策定のノウハウ不足
　　社会課題の「見える化」+社会課題解決に向けた「知財ソリューション提供」
　IAQ国家規格策定への挑戦

  • ものさし、国家環境基準を策定するには、様々なノウハウが必要
  • 以下のプロセスで、ベトナムにおける国家環境基準策定を推進

�＼賁膕箸瞭�にあるノウハウを書面化（知財の見える化）
　　測定項目、測定方法、適正基準、測定仕様書
　　（明細書ではなく測定仕様書を作成）

��現地の専門家との擦り合わせ（知財のブラッシュアップ）
　　測定仕様書　→　現地専門家との技術レク

�８従�のIAQ環境把握+現地の環境での適正調査（知財のブラッシュアップ）
　　現地専門家との技術レク　→　フィールドサーチによる測定方法評価

�じ獣論賁腟ヾ悗範�携し、国家規格素案として建設省への提供（知財の共有）
　　ﾌｨｰﾙﾄﾞｻｰﾁによる測定方法評価→ワークショップによる国家規格(案)報告
　　現在、国家規格として評価中

  • 現地専門機関を活用して空気の課題を見える化
    　　　化学物質による人体への影響　シックハウスの現地調査を実施
  • 現地調査の結果を、様々なメディアを通じて啓発活動を実施
    　　SDGsとの関係性について
    　　　SDGs3.9　環境汚染による死亡と疾病の件数を減らす
    　　　SDGs9.a　開発途上国への支援強化により、持続可能で強靭なインフラ開発を促進
    　　　SDGs11.6　大気や廃棄物を管理し、都市の環境への悪影響を減らす
（６） よくある質問
  • 知財部門の立ち位置は？
    ベトナム（建設省、専門協会）と日本（技術部門、広報部門、渉外・標準化部門）の橋渡し。ベトナムでは現地とのネットワーク構築、プロジェクトマネジメント、日本では、ノウハウ抽出、活用、マーケ・渉外戦略連携　
  • 知財の業務範囲外なのでは？
    社会的課題解決を進める中で、従来の活動領域を拡大する必要がある。
    具体的には、取扱う知的財産を、特許を中心とする知的財産権から、ノウハウを含む知的財産へ拡大する必要があり、また、同一産業内で競争を行う競争戦略から、他者との連携を通じた協創戦略への変更が必要であると考えており、今回の取組は、拡大された知財活動の範囲だと考えている。
  • このプロジェクトによる会社への貢献は？
    国家規格の策定により、ベトナムでビジネスを進める上でのソフトインフラを構築できた。
（７）まとめ
�｜虜發亮虍�範囲の拡大
　　社内外、社会の色々なところに「知財」、「知財活躍の場」は落ちている

��知財の運び屋
　　知財部門の役割は「知識を繋いで新たな未来を創る」こと
　　適切な人に適切な知識を運び、社会課題解決・事業創出のプロになる

質疑応答

 質問１：シンガポールはスタートアップの資金提供等もしやすいイメージがありますが、そのようなこともシンガポールであった理由のひとつだったでしょうか。その場合、具体的な事例、進め方のアドバイスなどあればご教示いただけないでしょうか？
 → 投資家が多いのでお金が集まりやすいというのはターゲットの１つ。加えて、シンガポールで活動していると政府の補助金が多い。補助金+投資家からの支援が大きいと考えている。
 質問２：アセアン各国への未活用の知的財産権の活用について、それぞれの国で権利化した技術が対象となっているのでしょうか？
 → アジアにも出願を行っているが、今回の内容は、アジアには、関連特許はなく、技術提供を中心として活動している。
 質問３：休眠特許をシンガポールでSDGｓに活用するとのことですが、貴社の特許のみを活用するのでしょうか？それとも、日本の他社の特許も更に活用した方が良い場合、その特許の利用を仲介する等も含めて活動されているのでしょうか？
 → 現在は自社の特許のみ。自社でのプロセスが確立したら他社特許も考える。
 質問４：休眠特許等の提供について、特許の価値は様々な観点があると思いますが、提供可否をどのように判断しているのでしょうか。
 → 提供側と活用側の両方の事情を踏まえて判断している。提供側の事情としては、当社の事業に影響が少ない売却した事業（ヘルスケア）に関する特許を提供している。一方、活用側の事情としては、シンガポールの大学からも様々な分野の提示があり、その中の一つにヘルスケアに関する特許・技術がほしいとの話があった。
 質問５　：休眠特許をシンガポール（APAC）のテマセク大学に「開放した」とのお話しだったと思いますが、そのセレクションは、大学側が貴社の多数の未活用特許を調べて選ばれたのか、貴社の担当者の方が選んで提供のご提案をなさったのか、どちらがメインで運用されたのでしょうか？
 → シンガポールの大学側から欲しい技術を教えてもらい、パナソニック側で特許を選定した。
 質問６：休眠特許の活用について、やるやらないは別として、知財部員なら考えるところですが、パナソニックさんで進められたSDGｓに繋がる休眠特許の活用は、通常の休眠特許の活用と、手法が異なるのでしょうか。社内承認のプロセスが違うとか、事業部からの同意が得られやすいとか、何か特徴的なことがあるのでしたらご教示お願いします。
 → SDGｓで特別な扱いということはなく、通常の休眠特許の活用プロセスと同じ。
 質問７：未利用技術を提供されているということですが、未利用技術の提供も意識してASEANに特許出願をしている、ということでしょうか。
 → 事業のための特許出願を行うことが前提であり、事業戦略を踏まえ地域を選定し、出願している。
 質問８：ベトナムなどの途上国は、環境問題への意識は日本と比べてどのような状況なのでしょうか？
 → 室外については割と意識が高い（見えるから）が、室内については先進国に対して低いと思った。ただ、コロナ問題で、特定の分野（IAQ等の室内空質）については、関心が高くなっている。
 質問９：ＩＡＱ測定基準作成に当たり一番ご苦労された点はどこでしょうか。
 → 知財の役割としてご説明した、現地とのネットワーク作りとプロジェクトマネジメント。政府に繋がっている人物は足で探した。大切なパートナーを見つける、現地の専門家、マスコミを集めるのが大変だった。
 質問１０：国家規格策定への推進など、従来の知財の活動とはかなり違う活動をされておりますが、当初から社内のご理解等は得られていたのでしょうか？また、どのように理解を得られたのでしょうか？
 → もともとアセアン拠点を立ち上げ、アセアンに適する知財活動を推進する、というミッションだった。また、当社では、組織責任者も含めて、新たなチャレンジに対して寛容だった。他職能である、営業や広報には、知財の活動として説明するのが難しかったが、進捗を見せることで、徐々に活動を理解して頂けるようになった。

　　以上　　

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関西電気機器部会（第1回）

　時　 2021年6月4日（金）14:30〜16:30
　所　
  • 講演会：Web形式
  • 見学、懇親会：なし
　人　 役員：宇野（GSﾕｱｻ）
　幹事：南（ﾊﾟﾅｿﾆｯｸIPﾏﾈｼﾞﾒﾝﾄ）、 竹綱（ｴｽﾍﾟｯｸ）、横井（関西電力）
　講師1名、Web参加75名(役員・幹事含む)

議　事

１．開会挨拶

　宇野役員による開会挨拶の後、講演会の講師紹介を行った。

２．講演

　演題　 『日産自動車の技術開発と知的財産活動』
　講師　 日産自動車株式会社　知的財産部　部長
(一社)日本知的財産協会　理事長　　別宮 智徳 氏

講演内容

別宮様より、日産自動車における技術開発、および知的財産活動についてご講演いただいた。
(1)日産自動車の技術開発
　最初に日産自動車の会社概要をご紹介頂き、その後、技術開発についてご説明頂いた。

　自動車業界を取り巻く課題「エネルギー」「地球温暖化」「渋滞」「交通事故」に対して、日産自動車として「電動化」、「知能化」技術を進化させ続きてきた。
　電動化戦略においては、バッテリーEVとe-POWERによるCO2削減、2030年早期の電動化100%を目指している。また知能化については、運転支援技術を進化させ、日産自動車が関わる交通事故死者数の実質ゼロ、全てのリスクに対応できることを目指している。

(2)日産自動車の知的財産活動
　特許戦略としては、2005年以降、特許件数を厳選し質重視としている。開発課題の把握と特許競争力分析により戦略的に特許網を構築、その見える化と活用を図っている。
　意匠戦略としては、オリジナルデザインの創出と権利活用により、自社デザインを保護し、ブランド構築に貢献している。
　商標については、グローバルで単一の名称を使用し、既存の名称を適切な製品に適用している。
(3)質疑
　別宮様によるご講演の後、Web参加者からは、特許網構築やPCT出願、特許の質重視戦略などに関する質問が寄せられ、活発な質疑応答が繰り広げられた。

３．部会報告

　宇野役員より2021年度の部会活動計画の説明を行った。
　新型コロナウイルス感染の影響が継続しており、本日の第1回部会は見学・懇親会なしの完全Web形式での開催となった。
　第2回は、9月3日に東西合同部会としてWeb形式で予定している。例年実施している見学会はJERAの川崎火力発電所をオンラインで見学する予定である。その後パナソニックの上田様からご講演頂き、宿泊・懇親会は行わない予定である。
　第3回以降は、コロナ感染の状況を踏まえながら計画していく予定。

４．見学、懇親会

　新型コロナウイルス感染による緊急事態宣言発出を踏まえ、見学会と懇親会は中止とした。

以上　　　　　

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