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会務報告&部会報告
関東金属機械部会（第3回）
| 時 | 2021年11月24日（水） 14：00〜16：10 |
|---|---|
| 所 | 日本知的財産協会 東京事務所 第2会議室 （Web開催） |
| 人 | 吉田業種担当役員 石川・會田・藤岡各幹事 一瀬・岩崎・赤塚各副幹事
司会進行：藤岡石川幹事 聴講者：80名（68社） |
議 事
1. 部会報告
下記事項について石川幹事より報告- 会員情報
- 部会出席者推移
- 年間行動計画
2. 講演
| 演題 | 「米国特許訴訟の最新動向 - 注目されるテキサス州西部裁判所の現状やAIA後に重要性を増すITCの状況について経営戦略のための知財」 |
|---|---|
| 講師 | キルパトリック・タウンゼント知財総合事務所 所長 弁護士（ニューヨーク州） 弁理士 穐場 仁 氏 |
講演概要
１．テキサス州西部裁判所の現状
- テキサス州西部連邦地裁ではここ2〜3年、Alan Albright判事が活躍中。
- 以前はカリフォルニア州やデラウェア州での特許訴訟が多かったが、2020年は全米の約20％がテキサス州西部連邦地裁（Waco）で提起。
- 裁判官がクレーム解釈を行い、無駄な手続きを減らす。全体の訴訟手続きを早く行うのが特長。
- テキサス州ウェーコ市(Waco)は、陪審員の教育レベルも影響し、原告に有利な判決が出る傾向あり。
- Albright判事は小数の判事が多くの特許事件を取り扱うことがより効果的という考えで、裁判地を変更すること（移送）に消極的。
- Albright判事の移送申立の却下や判断の先送りに対し、被告はCAFCに職務執行令状を請求することにより対抗。
- Albright判事が認めた移送申立22件のうち9件はテキサス州西部の他の地裁への移送で、判事の近くへの移送。
- 上院司法委員会は、Albright判事への失望や懸念をレターで表明。
- IPRが係属中の場合、訴訟手続きは中断されるのが通例であったが、Albright判事は中断せず。
- Albright判事は、特許保護適格性違反の申立はほぼ勝つことが不可能と公言。
- Albright判事一人で全てを捌くことはできないため、スタッフを増強。
- Albright判事は優秀で信念があり、自分の考えを曲げない人。原告有利という話もあるが、キルパトリックが関連した訴訟の7件中5件は被告が勝訴。
- 公判で少ない数の論点に絞り込んで議論することが重要。
２．国際貿易委員会（ITC）のトレンドと判決
- 独立した準司法的な行政庁で、ワシントンに所在。
- ITCは、特許だけでなく、著作権あるいは商標侵害、又は営業秘密の不正流用を含めて調査を実施。
- 典型的な地裁での訴訟と異なり、Section 337 調査では3つの異なる当事者（原告、被告、公共の利益）が存在。
- ITCによる救済では、差止は可能だが、損害賠償は行えない。
- 差止としては、限定的排除命令（被告製品の輸入禁止）、停止命令（既に米国内に存在する製品の販売停止）、一般的排除命令（侵害製品をその供給元に関わらず全て輸入禁止 (訴訟に加わっていない供給元も含む)）の３種類あり。
- 国内産業要件は米国内での製造を求めておらず、外国で製造し、米国へ輸入しているケースも要件を満たす可能性あり。
- 自社が被告として訴えられていなくても、自社で扱う製品が一般的排除命令の対象になる可能性あり。誰もが被告になりうる。ITCの訴状監視で確認。
- 特許による訴訟は年間6,000件くらいあるが、ITCは2020年で年間50件ほど。
- NPEによる訴訟が増加。
- 最近のITCの注目すべき判決として、営業秘密に関するグローバル係争：Certain Botulinum Products, 337-TA-1145（問題発生地は韓国）やCanadian Solar Inc., et al. v. The Solaria Corp. あり。
３．質疑応答
以下のような質疑があった。- ITCでトライアルに進む率が50％と高いが、被告側が和解しない等の特長があるか？
- 米国に会社がないNPEも、アメリカで事業をやっていると言えるか？
- ITCと地裁のマークヒアリングのタイミングは変わるか？
- ディスカバリーについて注意すべき点は何か？
以上
関東金属機械部会（第2回）
| 時 | 2021年10月1日（金）14:00〜16:30 |
|---|---|
| 所 | 日本知的財産協会 東京事務所 第2会議室 （Web開催） |
| 人 | 吉田業種担当役員 石川・會田・藤岡各幹事 一瀬・岩崎・赤塚各副幹事 聴講者：106名（79社） |
議 事
1. 部会報告
會田幹事より、第２回部会開催におけるご案内とお願い、及び、関東金属機械部会会員情報、部会出席者推移、2021年度年間行動計画について報告され、更に講演会テーマと講師の略歴の説明があった。2. 講演
| 演題 | 「中国企業との特許ライセンス契約と中国の独禁法・技術輸出入管理条例・民法典」 |
|---|---|
| 講師 | BLJ法律事務所 代表弁護士 遠藤 誠 氏 |
講演概要
Ⅰ. 中国における技術契約(ライセンス契約)の現状
- 技術契約(ライセンス契約)は右肩上がりで推移しており、技術分野別では特に電子情報技術が伸長している。
- 中国国外から中国へのライセンスはアジア地域からが多く、その中で日本は第一位となっている。
Ⅱ.中国の独禁法・技術輸出入管理条約・民法典
- 日本企業が中国企業とのライセンスを行う場合に重要とされる各法令について
- �‘閥慄�
- 中国の独禁法は比較的新しい法律で、主にEUの独禁法を参考にしており2008年8月1日に施行された。現在改定作業中であり、2021年中に改定される予定となっている。
- 中国独禁法においてライセンス契約の観点では特に「独占合意」「市場支配的地位の濫用」が重要であり、「市場支配的地位の濫用」については日本の独禁法にはない概念である。市場シェア50%以上を有していれば市場支配的地位に該当すると推定されるがそれ以下でも該当する場合もあり一概には言えない。
- ��技術輸出入管理条例
- 技術が中国と外国の国境を超える場合を規制している。
- 2019年の改正により、「契約に規定してはならない内容」の削除(ライセンサーの権利保証義務/抱き合わせ・付帯条件の受け入れ要求の禁止/原材料等の購入ルートを制限することの禁止など)がなされた。
- �Ｌ泳‥�
- 従来「契約法」、「民法総則」など個別の法律があったが、統合・改正され「民法典」として2021年1月1日に施行された。
- 民法典では「技術譲渡契約」と「技術許諾契約」は明確に区別された。
- �‘閥慄�
- ライセンサーの保証責任を回避・制限する方法
- 民法典では契約書中に別途定めることで免責されることが可能。
- 技術輸出入管理条例の適用を回避することが望ましいため、日本法を準拠法とし、紛争解決は日本仲裁とする旨を契約書中に規定し、実務上、中間に日本企業の子会社を挟む/日本企業の香港子会社を挟む/中国企業の日本子会社を挟むなどが行われている。
- ライセンサーの義務違反に基づく賠償責任を既に受領したロイヤルティの額を上限とする旨を契約書中に規定する。
- 技術保証責任を回避・制限する方法
- 製造にかかわる様々な条件の違いからライセンサーが技術保証することはできないと考えるのが合理的であるため、回避・制限するための方法として以下が挙げられる。
- �．薀ぅ札鵐機爾僕�利な内容になるように具体化した契約条項とする
- ��技術保証や技術目標の具体的内容につき、客観的な数値基準(ライセンサーにとっては比較的低いハードルのもの)などを予め規定しておく
- ��ライセンシーが許諾技術に他の技術を付加したり異なる条件で使用したりした場合には保証責任が生じないことを規定
- �ぅ薀ぅ札鵐掘爾�製造した製品の品質についてライセンサーは責任を負わないことを規定
- 製造にかかわる様々な条件の違いからライセンサーが技術保証することはできないと考えるのが合理的であるため、回避・制限するための方法として以下が挙げられる。
Ⅲ. 特許ライセンスの拒絶が独禁法の市場支配的地位濫用行為に該当するとされた判決について
- 判決の概要
- 2021年4月23日、日本のH社が中国の寧波科田磁業有限公司への「焼結ネオジム永久磁石技術」に関する特許ライセンスの拒絶が中国独禁法の市場支配的地位濫用行為に該当すると判断された。H社の特許は、いわゆる標準必須特許ではなく「事実上の標準」としての事案であるが、ある製品を製造するために必要不可欠である、独禁法上の「不可欠施設(Essential facility)」に該当するとされた。
- 本判決の争点
- 寧波科田がH社特許に対し無効手続を提起したことを理由にH社がライセンス拒絶することは市場支配的地位の濫用行為の一つである「取引拒絶」に該当するとして判示した。
- 本判決に対する検討
- H社の顧客である欧米の企業はH社の正式なライセンシーが製造した製品以外は購入を避けるようになったことから、寧波科田が欧米の顧客企業に製品を輸出できなくなったことを解消するために提起したものと考えられる。
- 特許権は排他的独占権という性質を有しており、本件特許が標準必須特許ではないことを鑑みると、ライセンスの自由、特許権者のインセンティブに対する配慮が不十分であったと言える。
- 寧波科田とH社とのライセンス交渉過程において、寧波科田は非侵害を主張していたが、H社からの技術質問リストに対して回答しなかったという事実が認定されておらず、更にH社が市場支配的地位を濫用して寧波科田の営業秘密を意図的に入手しようとしたとしており、事実認定に疑問が残る。
３．質疑応答
中国企業との技術ライセンス契約と関連の法令、及び本法令に係る裁判事例について＜判例法の国ではない中国での訴訟について＞＜独禁法と特許法との関係について＞等、参加者から多数の質問があり、それぞれの質問に対し遠藤様より丁寧なご回答を頂いた。４．その他
今回も新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からWeb開催となり懇親会は見送られたが、多くの会員企業の皆様に参加頂くことができた。以上
関東金属機械部会（第1回）
| 時 | 2021年8月4日（水）14:00〜16:00 |
|---|---|
| 所 | 日本知的財産協会 東京事務所 第2会議室 （Web開催） |
| 人 | 吉田業種担当役員 石川・會田・藤岡各幹事 赤塚・一瀬・岩崎各副幹事
司会進行：藤岡幹事 聴講者：117名（70社） |
議 事
1. 部会報告
下記事項について吉田業種担当役員より報告- 会員情報
- 2020年度の年間行動実績、部会出席者数推移、アンケート集計結果
- 2021年度の部会活動方針、年間行動計画、幹事会
2. 講演
| 演題 | 「経営戦略のための知財」 |
|---|---|
| 講師 | 日本知的財産協会 専務理事 久慈 直登 |
講演概要
１．SDGsプロジェクトについて （赤井様）
- JIPA GREENシンポジウム（6/17、ビデオ配信、アクセス数：1,918（28か国））
議題「クリーンオーシャンをテーマにWIPO GREENの活用を考える」 - WIPO GREEN データベースについて
技術登録しているＪＩＰＡ会員：915件（36会員） - SDGs PJメンバー（23名/18社）の紹介
- 関東金属部会所属 WIPO GREEN登録技術の紹介
日立金属株式会社：�．船織鷸瀬▲襯潺縫Ε爛戞璽垢離札薀潺奪�ハニカム構造、��熱電変換材料・モジュール
貝印株式会社：紙カミソリに関するデザイン・素材・構造等の技術5件
２．最近の知財ワールドの主な関心事項と対応するJIPA組織
- DX：国境を跨ぐ規制の問題。JIPAでは、データ・IOT・AI研究会で対応
- 米中技術バトル：中国輸出管理法、秘密特許制度、第一国出願義務付け等の問題。JIPA経済安全保障研究会で対応
- 標準：ISO56006 IP management等、国内ではJISにするのかどうかという問題。4次PJ標準分科会で対応
- ESG投資、IPL、コーポレイトガバナンスコード：SDGsに関する情報の開示の問題。特許庁長官とダイアログで対応
- EPS：5Gライセンスの業種間バトル。METI研究会参加WGで対応
- オープンイノベーション・連携：各種研修での各社事例の紹介で対応
３．著書「経営戦略のための知財」
- 本書を書いた動機とその結果
- 過去の著作「喧嘩の作法（2015年Wedge社より出版）」ではそれまでの経験・思い出を中心に記述。尚、この著作に関して講演をした際「話より本の方が面白い」と言われた経験があることから（本の方が丁寧に書いてあるのでやむを得ないが）、本日の講演では本に記載のない裏話を中心としたい。
- 日本全体の国際展開の遅れ、語学力の低さ（日本語の難しさに起因）、GDBに対する輸出割合の低さ、知財戦略がお粗末等の諸課題に関し、本書を読んだ皆さんに問題を考えてほしいとの思いで著作。
- 「経営戦略としての知財」の目次
- 第1章 新しい戦場
IPランドスケープを含め、今後は情報分析が知財最大の仕事になりそうだ - 第2章 データをめぐる争い：
データの重要性が高まる中、知財の仕事は契約屋が出番となる。知財部員はデータに関する知識、新しい法規制を 勉強しなければならない - 第3章 日本企業によるオープンイノベーション：
日本企業は戦後の自前主義の成功が身に沁みついており、他社との連携が苦手 - 第４章 ベンチャーもパートナー
アメリカでなぜ知財の融資が成功しているのか、産学連携は今後どうすべきか。 - 第5章 世界のリアル
中国企業の知財戦略の特徴、対中国の考え方など - 第6章 知財をツールとする日本企業の連携戦略
- 第1章 新しい戦場
- 「第3章：日本企業によるオープンイノベーション」の続き
- AI＋BD＋Cloudの環境が整った今、他社との連携を考えない方がどうかしている
- どう組み合わせるのかはセンスが問われるが、直観的センスではなく、情報を知っておくことが重要（情報屋の出番）
- データの範囲は無限であり、全体マネジメント、自社のポジショニングをよく考えないと失敗する。
- 米国のようなベンチャーは日本では難しい。大企業によるコーポレイトベンチャーキャピタルを推進すべき
- 「第5章：世界のリアル」の続き
- 国の科学技術予算総額は、中国：28兆円に対し、日本は4.4兆円（そのうち民間資金4.25兆円）
⇒研究開発費の差で勝ち目がない。日本企業同士が争っている場合ではない
- 国の科学技術予算総額は、中国：28兆円に対し、日本は4.4兆円（そのうち民間資金4.25兆円）
- 「第6章：知財をツールとする日本企業の連携戦略」の続き
- 日本企業が他社との連携を考えるときの悩み 連携先との関係において事業アイデアが既存事業の延長上でしか考えられない、など
- 各社の戦略に見る連携のアプローチ
�� 拠点で情報集積タイプ（ホンダ、富士フィルム）
�� 特許情報ベースでの連携タイプ（デンソー、トヨタ）
�� 自社技術を外部で利用させるタイプ（パナソニック、武田薬品）
�� 外部技術を自社で利用するタイプ（コマツ、KDDI） - 特許庁の知財戦略事例集（2019〜2021）の変遷。成功例ではなく失敗例を列挙すべきとアドバイス
（2020年度事例（失敗例）１：他業界の情報不足、2：社内パトロンがいない、3：将来のイメージを持てない） - 「失敗の本質（野中幾次郎著）」的な失敗の分類をすると、相手との事業の棲み分けのイメージがない、既存事業を守りすぎ、本業との棲み分けがあいまいである、などに分類できる。
- ビジネス書には失敗対策のヒントが満載である（ダイナミックケイパビリティ戦略、ブランド優位の戦略等）。
- 「最新科学とスピリチュアル（Kindle Unilimitedで無料）」の紹介（おまけ）
４．我々は、ＪＩＰＡという組織をどう利用すればいいのか？
- ＪＩＰＡは、大正末期の海外からの技術導入における諸課題に対する研究会（重陽会：昭和13年）としてスタート。
ＪＩＰＡは最初から「海外との戦いのため」に作られた組織である。 - JIPAのルーツはグローバル産業競争に勝つための情報（インテリジェンス）組織であったことを思い出し、これから先 どうやったら日本が勝てるのかＪＩＰＡを通じて皆様に考えてもらいたい。
以上
