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会務報告&部会報告
関西金属機械部会（第3回）
| 時 | 2021年2月16日（火）14:30〜16:45 |
|---|---|
| 所 | 日本知的財産協会 関西事務所 |
| 人 | 【会場参加者】 役員：森本(ｸﾎﾞﾀ)、 幹事：和田(神戸製鋼所)、月本(新明和）、 講師：1名、 他2名 合計6名 【Web参加者】 56名 |
議 事
１．開会挨拶
森本役員が開会の挨拶及び注意事項等を説明し、講師を紹介した。２．講演
| 演題 | 事業戦略に資するIPランドスケープ･知財戦略 |
|---|---|
| 講師 | 株式会社シクロ・ハイジア 代表取締役 小林 誠 氏 |
(1)講師経歴
国際特許事務所、大手監査法人、外資系大手M&Aアドバイザリー会社を経て現在に至る。特任教授（大阪大学オープンイノベーション機構） 客員教授（大阪工業大学 知的財産専門職大学院（※2021年度より）） 客員教授（KIT虎ノ門大学院イノベーションマネジメント研究科など。東京工業大学知的財産マネジメント「ライフサイエンス分野における知財戦略」など多数のご講演実績の他、著書は「勝ち残るためのM&A戦略 技術過信が製造業の危機を呼ぶ！」、「知財戦略のススメ コモディティ化する時代に競争優位を築く(共著)」､「IPランドスケープ経営戦略(共著)」等。
(2)講演の内容
- IPランドスケープ（IPL）とは？
IPLは企業価値を向上させる（ビジネスを成功させる）ことを目的とし、経営の意思決定ができるレベルで共有・討議する必要があり、事業戦略に具体的な知財戦略を組み込むものと説明頂いた。特に、ビジネス・マーケット情報を考慮した仮説構築が必要で、パテントマップはその仮説の検証に用いる点や、「あるべき将来像」からバックキャストして各種戦略の検討が重要となる点を説明頂いた。 - 事業戦略に資するIPL･知財戦略
目的･対象･範囲の違いから区分される経営戦略との対応関係を意識して、知財戦略を検討する必要性を説明頂いた。
特に戦略の上流工程から知財情報を活用することで適切な戦略を構築できることについて、NTT幹部コメントの紹介などとともに説明頂いた。
また、従来の独占ありきの考え方中心ではなく、他社連携の視点で「情報戦略」として考える重要性についても説明頂いた。 - IPLの活用と事例紹介
新規事業関連とアライアンス関連のうち、本講義では新規事業関連を中心に説明頂いた。
新規事業関連として、関連技術の特徴･用途を俯瞰的に分析する技術領域俯瞰分析と、異分野での応用･用途展開を分析する被引用分析を具体的に説明頂いた。
技術領域俯瞰分析は他社の注力領域を踏まえ、法改正や規制緩和で産業構造の変化を予測し、課題となるコスト等の解決が有用な事業戦略となり得るかを検討することについて、具体的事例を用いて説明頂いた。
被引用分析は客観的判断事実から技術的関連性の内容を把握し、2世代ほど遡って保有技術の新たな適用分野の協議に役立てることについて、具体的事例を用いて説明頂いた。 - IPLの実践に向けた取り組みの紹介
中期計画にIPLを明記する旭化成を例に具体的内容について説明頂いた。
同社では、IPLは、事業の優位化･新事業創出･事業判断の３つを目的としており、経営層･事業部と知財部の密な連携を実践していることを説明頂いた。特に、IP解析を実施するだけではなく、事業部とその解析内容に関する繰り返しの協議の重要性（いきなりの事業部に対して結果報告しても事業部は理解できない）を説明頂いた。
３．部会報告
関西金属機械部会について森本役員が、これまでの活動を説明した。４．その他
-
次期業種担当役員･幹事就任予定者の挨拶
次年度の関西金属機械部会の役員となる予定の株式会社栗本鐵工所の花田考士様と、幹事となる予定の3名の方から次年度に向けた挨拶を頂戴した。 - 名刺交換会
ｺﾛﾅ禍を考慮して懇親会は開催せず、替わりに、名刺交換の時間を設け、参加者の交流を促した。
関西二業種合同部会
| 時 | 2020年12月01日（火）14:30〜16:45 |
|---|---|
| 所 | 日本知的財産協会 関西事務所 会場参集型またはWeb参加型 |
| 人 | 【会場参加者】 役員：森本(ｸﾎﾞﾀ)､坂口(ｱｲｺﾑ) 幹事：浅津(NISSHA)､高田(ﾀｲｶﾞｰ魔法瓶)､南(ﾊﾟﾅｿﾆｯｸ)､中尾(DMG MORI)､月本(新明和）、 和田(神戸製鋼所) 講師：1名、他9名 合計18名 【Web参加者】 84名 |
議 事
１．開会挨拶
森本役員が開会の挨拶及び注意事項等を説明し、講師を紹介した。２．講演
| 演題 | 『企業活動におけるIoT/AIｱｲﾃﾞｨｱに対する実務上の注意点とAI学習用ﾃﾞｰﾀの保護』 |
|---|---|
| 講師 | 河野特許事務所 所長弁理士 河野 英仁 氏 |
講演概要
（１）講師経歴立命館大学情報ｼｽﾃﾑ学博士前期課程修了､米国ﾌﾗﾝｸﾘﾝﾋﾟｱｰｽﾛｰｾﾝﾀｰ知的財産権法修士修了､中国清華大学法学院知的財産夏季ｾﾐﾅｰ修了､MIT(ﾏｻﾁｭｰｾｯﾂ工科大学)ｺﾝﾋﾟｭｰﾀ科学･AI研究所AIｺｰｽ修了。 AI,IoT,FinTech,ﾋﾞｼﾞﾈｽﾓﾃﾞﾙ特許の他、米国･中国特許の権利化･侵害訴訟を専門とされ､著書は「世界のｿﾌﾄｳｴｱ特許(共著)」、「中国特許法と実務」､「FinTech特許入門」､「AI/IoT特許入門2.0」等。
（２）講演の内容
AI技術の基礎知識
発明としての提案の多い、ﾃﾞｨｰﾌﾟﾗｰﾆﾝｸﾞ､畳み込みﾆｭｰﾗﾙﾈｯﾄﾜｰｸ､ﾘｶﾚﾝﾄﾆｭｰﾗﾙﾈｯﾄﾜｰｸ､GAN(Generative Adversarial Network)､U-Net､深層強化学習というAI技術に係る基礎知識につき説明頂いた。特許事例を通じて学ぶAI特許発掘のｺﾂ
��Googleのﾄﾞﾛｯﾌﾟｱｳﾄ技術に関する特許(US9,406,017)､��INSIDESALES.COMのAIを用いたｺｰﾙｾﾝﾀｰに関する特許(US9,460,401)､��iROBOTのAI掃除ﾛﾎﾞｯﾄに関する特許(US9,836,653)､��ｵﾘﾝﾊﾟｽの画像認識に関する特許(JP6,656,357)､��DeepMindの機械学習に関する特許(WO2020-058,176)､��Hoverの3次元ﾋﾞﾙﾃﾞｨﾝｸﾞｱﾅﾗｲｻﾞｰに関する特許(US10,681,264)､��Mindstrongの認知機能推定AIに関する特許(US9,693,724)、の7つの事例につき、発明の概要、留意すべき点等を説明頂くことで、AI特許の発掘の勘所を説明頂いた。また、AI発明については、概ね3ﾀｲﾌﾟ(AIｱﾙｺﾞﾘｽﾞﾑ発明､AI利用発明､AI出力発明)にｶﾃｺﾞﾗｲｽﾞされるとの事で、各々の発明での特徴や請求項の作成の勘所を説明頂いた。
競合他社に効くAI･IoT特許請求項の書き方
AI特許につき、押さえておくべき請求項の形態として､�ヽ惱�ﾓﾃﾞﾙ生成方法(生成段階)､��学習ﾓﾃﾞﾙを用いた推測ﾌﾟﾛｸﾞﾗﾑ､�３惱�ﾓﾃﾞﾙ､ﾆｭｰﾗﾙﾈｯﾄﾜｰｸｼｽﾃﾑ､分類器､��AI要素特許､�イ修梁�ｶﾃｺﾞﾘｰ(装置､方法､ｼｽﾃﾑ)が有ること及びその具体例を説明頂いた。その上で、侵害発見の容易性や各国法令、AIに係る契約等といった視点から、AIﾓﾃﾞﾙの生成方法(生産方法)クレームが効果的である等、請求項作成におけるｺﾂを説明頂いた。
ﾃﾞｰﾀとAIの特許法以外の保護形態
AI技術に係るｱｲﾃﾞｨｱにあって､特許権では保護できない形態(ﾃﾞｰﾀ､学習用ﾃﾞｰﾀｾｯﾄ､学習済みﾓﾃﾞﾙにおける関数自体等)が有ることを説明頂く一方、このような特許権で保護されない形態のｱｲﾃﾞｨｱにあっても、一部は不正競争防止法や著作権法等で保護され得ることを説明頂いた。また、昨今のAI技術に対応すべく、学習用ﾃﾞｰﾀに関して特許法の法改正(直接侵害、間接侵害に係る条項の法改正)が検討されていることについて説明頂いた。 3．部会報告 関西電気機器部会については坂口役員が、関西金属機械部会については森本役員が、これまでの活動と今後の予定をそれぞれ説明した。
３．部会報告
関西電気機器部会については坂口役員が、関西金属機械部会については森本役員が、これまでの活動と今後の予定をそれぞれ説明した。４．その他
部会終了後に、下記の取り組みを実施した。次期業種担当役員予定者の挨拶
次年度の関西電気機器部会の役員となる予定の株式会社GSﾕｱｻの宇野元博様、及び関西金属機械部会の役員となる予定の株式会社栗本鐵工所の花田考士様から次年度に向けた挨拶を頂戴した。名刺交換会
ｺﾛﾅ禍を考慮して懇親会は開催せず、替わりに、名刺交換の時間を設け、参加者の交流を促した。以上
関西金属機械部会（第1回）
| 時 | 9月11日（金）13:30〜16:45 |
|---|---|
| 所 | 見学／部会：ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター（以下、TIC）／TIC内会議室 |
| 人 | 森本業種担当役員、中尾、月本、和田の各幹事を含む15社、22名 （講演会の講師等、見学先関係者除く） |
議 事
１．開会挨拶
森本業種担当役員が、開会の挨拶をし、本日のスケジュール等について説明した。２．部会報告
森本業種担当役員より、部会の運営方針と活動計画について報告が行われた。今年度の運営方針は「有用な情報提供と、COVID-19感染対策を確実に実施して企業間交流を行うことで、会員の知財総合力向上を図る」を基本方針とし、具体的には、(１)「グローバル戦略を策定・推進するために必要な知財情報の提供」、(２)「第四次産業革命など知財環境の変化に対応するための情報の提供・活動事例の紹介」、（３）「COVID-19感染対策を実施したうえでの、業界・世代・性別を超えた人的交流」を進めることとした。また、活動計画として、今回の部会および今後の第２回目、第３回目の部会の日程と場所、演題／講師の予定（一部未定箇所あり）について、報告が行われた。３．ダイキン工業 テクノロジー・イノベーションセンター見学
- まずTIC内会議室で、TICの概要につき、ダイキン工業の大塚啓司様よりご説明頂いた。TICは、「協創」というダイキン工業の目指すべき姿を実現すべく、2015年に設立され、実験棟（2万ｍ２）とオフィス棟（2.8万ｍ２）とを併せ持つ6階建ての広大な施設である。今回、オフィス棟の1階（啓発館）、3階（知の森）、4／5階（ワイガヤステージ）、6階（フューチャーラボ）を中心に見学した。
- 1階の啓発館は、ダイキン工業の創業者山田氏の紹介、創業から現在に至るまでの歴史の紹介や、過去から現在に至るまでの一部製品の展示、そして、未来に向かって進もうとするダイキン工業の姿勢を知ることのできる施設であった。
- 3階の知の森は、TICにいる人々（社外からの訪問者も含む）が自由に議論を行えるスペースと、ダイキン工業製品を紹介するスペースとを併せもつフロアであり、社内外の多くの人々が自由闊達に議論をしている姿が見受けられた。
- 4／5階のワイガヤステージは、「ワイワイガヤガヤ」と人々が議論できる場所ということを意味するステージで、4階と5階との間に位置する。オフィス内のすべての執務スペースから議論の様子が見えるように工夫された場所であった。
- 6階のフューチャーラボは、社内のスタッフが議論を行える壁の無い広大なフロアで、ドリンクカウンターや、その場でアイディアを具現化できる3Dプリンター等が配置されており、ダイキン工業のスタッフが議論をしている姿が見受けられた。
４．講演
| 演題 | ダイキン工業の知財強化の取組み 〜グローバル戦略／オープンクローズ戦略など〜 |
|---|---|
| 講師 | ダイキン工業株式会社 法務･コンプライアンス･知財センター 知的財産グループ長 部長 松本 宗久氏（JIPA常務理事） |
■ダイキン工業の戦略経営計画FUSION20における知財の取り組み
- ダイキン工業では、特許強化の主体は技術者と考えている。そして、開発責任者が「“特許責任者としてリーダシップ”をとり、開発者は、“特許活動は開発行為そのもの”という認識で、 “特許に基づいた新商品戦略”を実行する。知財部門は、「技術陣と一体になって、特許技術を駆使した“有効特許”の取得、グローバル特許分析等で、“能動的に”サポートする」というスタンスを取っている。
- 「有効特許」としては、�ー�社商品等の重要分野で他社抑止力・自社競争力に多大に寄与する“差別化有効特許”、��他社が回避し難い“必然有効特許”、��上記有効特許の周辺／回避技術で、参入障壁になり得る“周辺有効特許”とカテゴライズされている。
- 特許の「質」に着目したこのような有効特許を念頭におきつつ、他社より先行を狙うテーマや他社に先行されているテーマなど、各開発成果がどのようなテーマに該当するかを意識し、知財戦略を立案して、「出せる特許」「取れる特許」よりも、「取りたい特許」「取るべき特許」を見出して、権利化するようにしている。
- 有効特許の創造を加速させるべく、発明者にインセンティブを付与する仕組みとして、出願報償の制度とは別に、「有効特許早期報奨」の制度を設けている。この制度では、直近１年間にした全出願を評価して、有効特許を選出し、その有効特許を創出した発明者に対して、報奨金が贈られる。なお、この他にも、複数の報奨制度を設けたり、経営層の出席の下で有効特許表彰式を開催したりと、多面的にインセンティブを与えている。
- また、独自のユニークな制度として、「パテントオプション権」を設けている。この権利は、早期報奨を受けた発明者に対して、翌1年に限り、出願報償金を5倍にすることで開発インセンティブの加速を狙うものである。
■オープン／クローズ戦略の実践
＜地球環境対策に向けたダイキン工業・格力電器の戦略的競業＞- ダイキン工業は、節電能力が高いことで地球環境負荷を低減できる、インバータ搭載の高品質エアコンで世界シェア20％を保有していた。一方、中国の格力電器は、ノンインバータの低価格エアコンで世界シェア30％を保有していた。そして、両社は、「地球環境問題に貢献する事が空調機メーカの責務」との共通認識を持っていた。
- このような環境の中、2000年代後半、中国でのインバータ機の普及率は7％に過ぎなかった。そこで、ダイキン工業としては、この7％を拡大させることは、地球環境負荷に貢献できるとともに、ビジネス的にも有用に働くものと判断し、格力電器に対してインバータ技術を提供し、協業を図った。
- 具体的な協業としては、�…祺然覆離ぅ鵐弌璽織┘▲灰鵑魍蔑賄鉄錣飽兮�生産（OEM生産）、��圧縮機の共同生産、�６盞燭龍ζ雲源此↓じ矯猯繊�部品の共同購買、�ド甬擴然並咾離ぅ鵐弌璽織┘▲灰鵑龍ζ嘘�発、を行った。
- ただし、ダイキン工業は、インバータ装置そのものをパッケージで提供し、電流を制御するプログラムをブラックボックス化して、格力電器に、インバータ技術の肝の情報が漏洩しないように対策をしていた。
- 協業の結果、原材料、部品、金型、圧縮機等のコストダウンを図れるとともに、格力電器の得意とするローコスト製造のノウハウを獲得できた。
- そして、なによりも、格力電器の販売力を活用して、インバータ機の認知度、比率を高めることで、中国市場のインバータ機の普及率を76％（2018年度）にまで向上させ、ダイキン工業の得意領域である高価格帯の性能勝負に市場を誘導できた。
- オゾン層を破壊しない代替フロン（冷媒）が地球温暖化を引き起こすことが1990年代になって問題になっていたところ、次世代冷媒が種々検討されていた。その中の１つであるR32冷媒は、オゾン層を破壊することなく地球温度化係数（GWP）も低い優れた冷媒であったが、微燃性という課題があった。
- 実際のところ、このR32冷媒は、適正な取り扱いの下では燃えない冷媒ではあったが、国際標準化機構（ISO）の規格には「微燃性」という分類がなく、水素やプロパン同様の安全対策をしないと商品化できなかった。そういった事情を加味し、R32冷媒は、単体で利用されず、不燃性のR125冷媒を混ぜることで燃焼性をなくした状態でオゾン層を破壊しない代替冷媒R410Aとして空調機に使用されていた。しかし、R125冷媒は、GWPが高い特性を持っていたため、R410 AもGWPが高いという課題を抱えていた。
- ダイキン工業は、低GWP化と燃焼性とはトレードオフの関係であり、地球温暖化対策のためには、微燃性冷媒を使いこなす必要があると考えた。そこで、微燃性の認知および微燃性冷媒の正しい取り扱いを世間に周知させるべく、ISOにおける新カテゴリーの設立と、適正な取り扱い要求事項の確立とで、微燃性冷媒の安全な普及を目指すこととした。具体的の対応の１つとして、ISO改定委員会での、いわゆるロビー活動を行った。
- しかし、ダイキン工業は、R32冷媒を用いた空調機に関する特許を多数、グローバルに保有していた。そのため、ISOにて新カテゴリーが設立され、R32冷媒が空調機の主要な冷媒として取り扱われるようになった場合、ダイキン工業のみが利する状況が確立されるのではないかと、各方面から指摘され得ることが想像された。
- ダイキン工業としては、そのような指摘を考慮するとともに、R32冷媒を使用した空調機を全世界で普及、拡大させることで、地球環境負荷の低減を持続可能な形で実現させることを考え、当該空調機の製品設計における必要性の比較的高い特許を2011年9月に無償開放することとした。
- 具体的には、93件の特許を、新興国では無償開放し権利不行使とした。また、先進国では、同数の特許の相互権利不行使（金銭支払いは不要）とし、さらに、2015年9月以降は、先進国についても無償開放し権利不行使とした。
- 加えて、2019年7月には、これまでの無償開放の対象でなかった2011年以降に出願した特許約180件（延べ）について、ダイキン工業の事前許可や契約無く、無償で使用可能とする権利不行使の誓約を宣言することで、他社がR32冷媒を速やかに採用しやすい環境を整えた。
- このような知財戦略の結果、ダイキン工業は、ISOの新カテゴリーを無事設立させ、R32冷媒を使用する空調機の売上を拡大することができた。
５．懇親会
コロナ禍の影響により、今回は、懇親会の開催は断念した。そのため、講演会終了後に名刺交換の時間を設け、会員企業相互の交流を促した。以上
