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会務報告&部会報告
関東金属機械部会（第3回）
| 時 | 2021年3月3日（水）14:00〜16:10 |
|---|---|
| 所 | 日本知的財産協会 東京事務所 第2会議室 （Web開催） |
| 人 | 石橋業種担当役員 新井・片岡・吉田各幹事 會田・藤岡各副幹事
聴講者：受付人数 計80社107名【会員76社103名／他部会4社4名】 |
議 事
1. 部会報告
吉田幹事より、Web開催におけるご案内とお願い、及び石橋業種担当役員から、関東金属機械部会会員情報、2020年度年間行動実績、部会出席者推移、2021年度年間行動計画、幹事会についての報告があった。2. 講演
| 演題 | 「中国特許侵害訴訟の実践」 |
|---|---|
| 講師 | バード＆バード法律事務所 パートナー弁護士 道下 理恵子 氏 |
講演概要
１．はじめに
- 中国では2025年までに製造強国への転換を図るべく、技術力の高い製品を作る動きが加速している。
- 中国は訴訟に対して躊躇しない風潮があり、世界一の訴訟大国である。
- 日本企業の経営陣は、裁判で勝訴できないと考えて訴訟を躊躇する傾向にある。しかし、日本企業の訴訟勝率は76％であり低くない。最高裁判所のWebサイトに内容が公開されているので参考にすると良い。
- 訴訟は法律とビジネスの両面から責める必要がある。下請けの中国企業だけを責めても解決は難しい。
２．特許訴訟の手続きと留意点
- 中国には知的財産裁判のみ実施する裁判所が北京、広州、上海の３箇所。知財訴訟経験のある裁判所は20箇所存在する。
- 中国国家知識産権局は、地方裁判所による中国企業に有利な判決問題に対応するため、知的財産に関連する裁判の第２審は最高人民法院に担当させることにした。このため訴訟はし易くなったと考える。
- 訴訟後の特許無効宣告請求による訴訟停止は、ケースバイケースであり、無効審決が6ヶ月と早い場合もある。無効審決は上告可能であるが、判決までに9ヶ月〜24ヶ月を要するので要注意である。
３．調査及び証拠収集
- 権利者による証拠収集
- 訴訟が開始されてから侵害品の全容を掴むのでは遅いため、訴訟前に念入りな調査が必要である。
- 最初は机上による調査が中心になる。被告のWebサイト、ＳＮＳ、証券会社情報等、また現地代理人を使いどこで製造されているのか、資金元、資金の流れなどを調査する。
- 侵害会社への訪問時に入手した名刺に記載されたWebサイトから別の侵害会社を発見することになった事例もあり机上調査は丁寧に行なうと有効である。
- 探偵会社を使用しても良いし、一般購入者名義で購入することでもよいが、侵害品を新たに製作させる行為（トラップオーダー）は証拠として認められない。
- 行政機関を利用した証拠収集（ＲＡＩＤ）
国家知識産権局による行政摘発を利用する方法である。摘発担当者は、特許や製品に詳しいとは限らない ので、証拠収集が不十分になることもある。 - 裁判所による証拠収集
被告側が少しの証拠しか提示しないような場合には、証拠保全命令を裁判所が発行出来るように法律が改定 された。 - 事例紹介
講演資料の5ページの事例2は、行政機関（RAID）と裁判所による証拠収集を利用した事例。
事例3は公証人立会で購入、上海博覧会で製品紹介、写真を撮影で公証した事例。
４．行政摘発のシナリオ紹介
道下弁護士の事務所が制作した行政摘発のシナリオ動画が紹介された。- 国家知識産権局の職員が侵害品の製造メーカに査察に訪れて査察を要求した。製造メーカ側は応対して 侵害品の品番、数量、単価をその場で産権局職員に報告した事例。
- 国家知識産権局の職員が侵害品の製造メーカに査察に訪れて査察を要求した。しかし、製造メーカ側は多忙を理由に査察を拒否した事例。
- 国家知識産権局の職員が侵害品の製造メーカに査察に訪れて査察を要求した。製造メーカは弁護士の立ち合いを要求して査察に対応した事例。
日本企業の担当者の事前ヒアリングでは１）の応対が妥当という意見が多かったが、実際の裁判で査察時に回答した内容がそのまま証拠として採用され、損害賠償金額が決定されてしまった例もあり、 安易な回答は非常にリスクが高い。２）は査察妨害行為となるので不利になる。３）の対応がベストであるが、この場合、別の日程を提示し、調査項目を職員に提示させ、後日査察対応するのが良い。
５．公証
公証のない証拠は証明能力が低いので訴訟は難しい。公証の種類としては以下のものがある。- 公証購入
- Webサイトのウェブページの公証
- 鑑定のため、公証購入して封印した侵害品を一旦開封し、一部取り出し、残りを再度封印する過程を記録する 公証
- 通販サイトから侵害品を注文し、支払いし、配達された侵害品及びその過程を記録する公証
- 原本と副本が一致することを証明する公証
なお、外国（香港、マカオ、台湾を含む）で作成された証拠は、その国・地域で公証を行い、かつ中国大使館又は 領事館で認証を行わなければならないため、注意が必要。
６．侵害の証明
裁判所が指定する司法鑑定で不正行為が発覚した事例があり、≪民事訴訟の証拠に関する若干の規定≫が設けられた。【第28条】 一方の当事者が関連部門に委託して出された鑑定結果に対し、もう一方の当事者が証拠を以て反駁し、改めて鑑定することを申請した場合、人民法院は許可しなければならない。司法鑑定の価格は300〜400万円と高価である。 また、裁判結果次第で担当鑑定者が報復を受けることもある。
また、鑑定用の実験項目に対応が出来ない場合もあり、裁判中の司法鑑定は困難な場合がある。 このため訴訟提起の段階で司法鑑定を取得しておいたほうが良い。
７．損害賠償
中国の裁判では損害賠償金が低すぎるとの指摘があり、2020年に法律が改正され、裁判所が損害金額を認定する 場合には、上限が500万元となった。８．質疑応答
RAIDに関する内容、トラップオーダーに関する内容、現地日本企業の対応等ついて等の質問が参加者から多数の質問があり、それぞれの質問に対し道下弁護士より丁寧なご回答を頂いた。また、駐在員のマニュアルに査察時の応対方法、対応弁護士の確保、トレーニングの実施は早急に実施したほうが良いとの指摘があった。
９．その他
本部会は、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からWeb開催となったため、懇親会の開催は見送られた。部会終了後、希望者には、講演資料及びご講演ビデオへのリンクをご案内した。以上
関東金属機械部会（第2回）
| 時 | 2020年11月27日（金）14:00〜16:30 |
|---|---|
| 所 | 本田技研工業（株）Honda青山ビル ２階会議室 |
| 人 | 石橋業種担当役員 新井・片岡・吉田各幹事 石川・會田・藤岡各副幹事
【参集】 聴講者 26名（関東金属機械部会：22名（20社）、他部会：4名（4社）） *【動画】 120名(82社) |
議 事
1. 部会報告
片岡幹事より、第２回部会開催におけるご案内とお願い、及び、関東金属機械部会会員情報、部会出席者推移、2020年度年間行動計画についての報告、更に講師の先生の略歴の説明があった。2. 講演
| 演題 | 「B2Bにおけるマーケティング・ツールとしての知的財産 〜ブランディングからIPランドスケープまで〜」 |
|---|---|
| 講師 | KIT虎ノ門大学院（金沢工業大学大学院） イノベーションマネジメント 研究科 教授・Ph.D. 杉光 一成 氏 |
講演概要
マーケティングとB2Bマーケティング
- 誤解を生みやすい「マーケティング」という言葉について、定義を２種類紹介
- マーケティングの「究極目的」は「セリングをなくすこと」であり、自然に売れる状態を実現すること
- マーケティングと知財の「不思議な」関係に関し、1960年頃のゼロックスの例をあげ、マーケティングと知財は深い関係があるとし、マーケティングについて「既存市場の維持と拡大及び新市場の創造」と分かりやすく定義
- マーケティング戦略において「差別化」は最も重要なキーワードの一つであり、知的財産の分野においても新たに権利を取得できるのは、既存のものから「差別化」できる場合のみであり、両者には共通点がある（密接に関わっている）
- 知財をマーケティングの有用なツールと捉え、マーケティング論の中で取り扱うべきとのこと
- マーケティングは、ビジネス戦略上、経営理念、ビジョン、全社戦略、経営戦略というピラミッド構造において、その裾野である機能別戦略として位置づけられる
- 戦略決定の全体フローは、現状分析⇒全社戦略⇒事業戦略⇒機能別戦略であり、機能別戦略のなかでマーケティング戦略等を決定する。なお、全社戦略と事業戦略が経営戦略
- 現状分析のステージでは、マクロ環境（自社でコントロール不可のもの）の分析としてPEST分析、ミクロ環境（自社でコントロール可のもの）の分析として３Cs分析、Competitorの分析として５フォース分析、分析結果のまとめとしてSWOT分析を紹介
- 全社戦略の決定として、PPM（プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント）とアンゾフの成長戦略マトリックスを紹介。アンゾフの成長戦略マトリックスにおいて、「多角化」のところは新規事業に該当し、全社戦略となることが多い。
- 事業戦略の決定として、競争優位のタイプで分けるとともに、戦略ターゲットの幅（業界全体ｖｓ.特定分野）で分ける方法の紹介。コスト集中戦略と差別化集中戦略が中心。
- 新規事業の場合には「ビジネスモデル」を決定し、収益構造を考える。誰から、いつ、どうやってお金を得るかを考える。
- マーケティングの全体構造は、（１）マーケティングリサーチ （２）標的市場の選定 （３）マーケティング・ミックス
- B2Bにおけるマーケティング論の全体構造は、基本的にはB2Cと同じだが、B2Bの特徴は以下
（１） 顧客がアマチュアでなく購買のプロ（専門性） （２）情緒的判断でなく合理的判断に基づき購入 （合理性） （３）サプライヤーも顧客も特定かつ少数（特定少数性） （４）取引が長期的（長期性） - B2Bビジネスの環境の変化：
（１） 専門性では現場の裁量が拡大 （２）合理性では情緒的要素はゼロにならない （３）特定少数性ではグローバル競争の激化 （４）長期性では新規事業、新規顧客に当てはまらない - マーケティングリサーチとは、マーケティング活動全般に関する意思決定に役立てるために情報を収集・分析すること
- セグメンテーションは、顧客の価値観が多様化しているため、市場を共通の特徴を備えたグループに「分類」すること
- ターゲティングは、分類したセグメントを「評価」して絞り込むこと
- ポジショニングは、どの競合他社とも被らずに顧客ニーズを満たす場所・方法を見つけること。なるべく「競争しないで勝つ！」が目的。
- ホワイトスペースには競合はいないが、顧客ニーズを満たさない可能性があり注意要
- マーケティング・ミックスとして、�＼宿弊鑪�、��価格（設定）戦略、��チャネル戦略、�ぅ廛蹈癲璽轡腑鸚鑪�の説明
- マーケティングへの知財の貢献について紹介
- これからの企業は、知財を有益かつ強力なマーケティング・ツールとして活用していくべき
B2Bブランド論
- ブランドとは識別機能と品質保証性機能に基づく「顧客吸引力」であるとのこと
- ブランドの「顧客」側のメリットは以下
（１） 情報効率性の向上 （２）リスクの低減 （３）情緒的満足 - コトラー先生の名言紹介
- ブランドの「企業」側のメリットとしては、1回での購入の利益貢献とともに、継続購入での利益貢献のアップがある
- B2B企業特有のブランドのメリットとしては、B2B企業特有の問題点を解消できることにある
- ブランド・エクイティ論では、ブランド＝資産（価値がある）であり、ブランドは経営資源として管理対象とすべきである
- B2B企業では企業ブランド戦略が重要になる
- 当初の20年は特許権で参入障壁、当初20年以降はブランドで参入障壁（知財ミックス）
- B2BといえどもB2Cに近いグローバル競争の厳しい環境になりつつある。ブランド化で差別化が大切。
- 技術力が売りの会社だからこそ、その点をブランド・アイデンティティにしてブランドを構築できる可能性がある
- SDGｓに取り組むのはブランドにとって必須の時代である
- IPランドスケープのポイントは以下
自社の強みを活かす（積極型）、目的＝経営戦略立案、知財情報×経営情報、・・・ - IPランドスケープの最新の定義：
「事業戦略又は全社戦略の立案に際し、�〇�業・経営情報に知財情報を組み込んだ分析を実施し、�△修諒�析を事業責任者・経営者と共有すること」 - 従来の知財戦略は事業を守ることが主軸であったが、IPランドスケープは事業の成長に寄与することが目的
- IPランドスケープは現状分析から機能別戦略の幅広い場面で使え、環境分析や技術者のヘッドハンティング等々の具体的な場面で使える
- IPランドスケープに関するポイントについて、10選説明
- コーポレートガバナンス的にIPランドスケープがエビデンスとして残せる点は経営（事業）責任者にとっての大きなメリット
3. 質疑応答
B2BのブランドやIPランドスケープ等について、参加者から多数の質問があり、それぞれの質問に対し、杉光様より丁寧なご回答を頂いた。その他
今回は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、懇親会の開催は見送られた。新型コロナウイルス対策を実施し、トラブル等もなく会員企業の皆様に参加頂くことができた。以上
関東金属機械部会（第1回）
| 時 | 2020年9月24日（木）14:00〜16:00 |
|---|---|
| 所 | 日本知的財産協会 東京事務所 第2会議室 （Web開催） |
| 人 | 石橋業種担当役員 新井・片岡・吉田各幹事 石川・會田・藤岡各副幹事
聴講者 101名（78社） |
議 事
1. 部会報告
新井幹事より、初めてのWeb開催におけるご案内とお願い、及び石橋業種担当役員から、関東金属機械部会会員情報、2019年度年間行動実績、部会出席者推移、部会アンケート集計結果、2020年度年間行動計画、幹事会についての報告があった。2. 講演
| 演題 | 「知的財産マネジメントを成功に導く組織」 |
|---|---|
| 講師 | オクターヴBC株式会社 代表取締役・弁理士 吉川 万美 氏 |
講演概要
Ⅰ．三位一体活動における問題の所在- 2002年の知財創造立国宣言以降、事業戦略、研究開発戦略及び知的財産戦略を三位一体として構築することが推奨されてきた。
- 三位一体活動は、現在よく言われる様々な戦略(オープンクローズ戦略など)の基礎となるため重要であり、知財部門は、事業活動の視点を持つことで「どのようなモノを創造するか」につなげていく立場にある。
- 現時点において、三位一体活動がうまく機能していないと言われる一方で、知的財産戦略事例集の変遷をたどると、2020年6月に発行された『経営戦略を成功に導く知財戦略 〜実践事例集〜』からは、各社とも自社に合う知財戦略を選択/運用していることが窺え、年月を経て三位一体活動が形になってきたとも捉えられる。
- 知財創造サイクルを回すことは一朝一夕に実現できるものではないため、うまくいかないからとあきらめるのではなく、経営者の考えや取り扱う製品によってどのような戦略をとるべきか、自社の視点に沿った方法を考え抜くことが必要である。
Ⅱ．三位一体活動に向けた体制
- 知財部門としては、研究開発部門や事業部門に対し知的財産の視点から有益な情報や意見を的確に伝え、十分な検討を行うための仕組みを整備することが必要であり、時間がかかるが、あきらめずに取り組む意識が重要である。
Ⅲ．情報共有の重要性
- 知財部門は、専門化するほど他部門から孤立し、部門間での知識の共有が図られない傾向にある。
- 情報共有が図られる場合の「ポジティブ要因」に対し、共有が図られない場合の「ネガティブ要因」があり、これらがコンフリクトすることで情報共有への取り組みをあきらめてしまうことが、三位一体活動が進まない原因となっている。
- ポジティブ要因の事例としては、情報共有せざるを得ない環境や、知財委員会のような情報共有を図る場があること、また人材ローテーションや他部門との調整役の存在、情報共有によるインセンティブが得られる仕組みがある場合などが挙げられる。
- 知財委員会や発明発掘会などは、情報共有を図る場として有効であるが、公式にこれら委員会等を設立するハードルが高ければWeb会議の開催やメールによる情報共有から始めても良い。公式会議の場では本音や意見が出にくい場合もあるが、非公式会議や雑談の中で予め聞いておいた悩みを公式会議で議論することが、公式会議参加へのモチベーションとなる等、公式、非公式会議の並行開催による情報共有の相乗効果が期待できる。
- コンフリクトする部分(C:Cost)を差し引いた情報共有による利益(P:Profit) が、障壁となる部分(B:Barrier) よりも大きい場合に知識の移転が実現する。Bを小さくするには、組織的な変革も重要な要素であるが、良好な人間関係を構築し、積極的にコミュニケーションをとる(雑談力を高める)ことも個人でできる対策の一つである。
- 「審査請求の要否」など知財部門にとって違和感のない質問でも発明部門にとっては判断に困ることが多いため、知財部門の質問力の向上も重要である。PPM分析を知財戦略に応用し、製品ライフサイクルの傾向から経営者にも理解できる共通言語に知財用語を変換することで、質問の丸投げではなく、アドバイス型の質問に変えることができる。
Ⅳ．知的財産における三位一体活動の例
- 開発単位で開催する発明発掘会では、予め作成したヒアリングシートを用いることで、技術の流れや事業への影響、競合把握等、もれなく効率的にヒアリングすることができる。
- 製品群単位で開催する知的財産検討会では、製品ライフサイクルがどのような経緯を辿るか自社の製品に照らし合わせながら、審査請求時期や権利維持年金の要否など事業部門や研究部門の判断を促すことにより、経営層への報告を有効に行うことができる。
- 委員会を立ち上げ組織的に展開することが難しければ、個人レベルから協力関係を築き、小さな成功を積み重ね、徐々に組織的な文化にしていくことも三位一体活動を進める手段の一つ。草の根活動が重要である。
3. 質疑応答
三位一体活動の促進に繋げるための具体的な活動に関して、＜知財委員会の開催間隔と所要時間の目安は? 資料は誰が準備するのか?＞＜情報共有のインセンティブを感じてもらうにはどうしたらよいか?＞等、参加者から多数の質問があり、それぞれの質問に対し吉川様より丁寧なご回答を頂いた。その他
今回は新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からWeb開催となったため、懇親会の開催は見送られた。初めてのWeb開催であったが、概ね接続トラブル等もなく多くの会員企業の皆様に参加頂くことができた。以上
