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会務報告&部会報告
関東化学第二・商社部会（第5回）
| 時 | 2020年2月14日 (金) 14:20 〜 16:40 |
|---|---|
| 所 | ワイム貸会議室日本橋本町 Room A |
| 人 | 大上業種担当役員、福安、前川、上地各正幹事 若林、山口、諏訪、川口各副幹事 協 力 ＪＩＰＡ 赤井、博多 参加者 会員企業 66社 89名、関東電気機器部会 1名、講師所属事務所 3名 （賛助会員の参加なし） |
Ⅰ．議 事
会務報告の後、講演会を開催した。Ⅱ．講演会
| 演題 | 『事例から学ぶ特許分析の急所 〜戦略的にデータを分析するための検索技術〜』 |
|---|---|
| 講師 | 特許業務法人オンダ国際特許事務所 知財戦略支援部長 弁理士 畔上 英樹 氏 |
講演概要
１．特許分析で検証すべき事項
ライバルが多い分野の場合、市場規模、技術的に戦えるか、協力者の有無を検証すべきである。ライバルがいない分野の場合、攻めどころなのか、市場に魅力がないか、ニーズの掘り起こしができるか、プロモーション力があるかを検証すべきである。
また、技術分野の将来性の検証は、市場動向・国策などの情報で補完する。
これらの検証に求められる要件は、「目的の明確化」「情報の正確性」である。
２．第一部 事例検証編
■事例１：企業の比較分析（母集団の設定について考えるケース）ゲームに関する特許について任天堂とソニーとの比較分析を行った。
- 分析例１：特許分類（ビデオゲーム関連）で母集団設定した場合、ノイズが少なく、単一観点で分析できる。
- 分析例２：「全文＝ゲーム＋エンターテイメント＋アミューズメント」で母集団設定した場合、ノイズを含む可能性はあるが多観点での分析が可能。特許分類を用いて技術分野を細分化すると、任天堂とソニーは分野により優劣があることが確認できる。
2019年にヤマシンフィルタ社がアクシー社を子会社化したことを踏まえて分析を行った。
FI・Fターム分析により、ヤマシンフィルタ社は液体のろ過技術を多く持つ一方、アクシー社はガスろ過技術を 多く持つことが分かった。この分析結果とヤマシンフィルタ社の有価証券報告書の内容を踏まえると、同社は 「総合フィルターメーカへの飛躍」という目標達成のためアクシー社を子会社化したことが伺える。
また、ヤマシンフィルタ社は、合成高分子系ナノファイバーの量産化技術の確立に成功した旨を報告している ところ、同技術の特許権はエフピーエス社が保有していること、エフピーエス社のホームページの内容がヤマシンフィルタ社の有価証券報告書に類似していることから、ヤマシンフィルタ社とエフピーエス社の協力関係が伺える。
更に、ヤマシンフィルタ社が出願したフィルタ関連特許の引用解析により、同社が新たに進出する余地があると思われる技術分野を抽出できた。
■事例３：企業の買収事例を分析２（整理標準化データと公報データを考えるケース）
2017年に村田製作所がソニーの電池事業を買収したことを踏まえて分析を行った。
公報データによる分析では、2017年の買収により、村田製作所の有する電池関連の特許件数が急激に増えたよう にも見えるが、整理標準化データを用いて分析すると、村田製作所はソニーの買収以前よりある程度の電池関連特許を有していたことが分かる。これは、公報データ上の権利者はソニーだが、実際には村田製作所に移転した特許が存在するためである。このように、分析の母集合作りには公報データのみならず整理標準化データも活用することが重要である。
更に分析を進めると、両社は要素技術において補填関係にあること、村田製作所は事業買収前からソニーと連携していたものの、村田製作所においてコア技術に関与するキーマンと思われる人物はソニーと連携していなかったことが伺える。
■事例４：有機EL分野の出願人動向（特許分類の選択を考えるケース）
- 分析例１：FIによる分析では、エルジーディスプレイ社は有機EL分野の特許出願数ランキングが４位である。
- 分析例２：しかし、IPCを含めた分析では同ランキングは８位に後退し、IPCのみの分析ではランク外となる。
- 分析例３：CPC=H01L51/50を用いた主要な有機ELメーカーの各国出願件数の分析例。
- 分析例４：IPC=H01L51/50を用いた主要な有機ELメーカーの各国出願件数の分析例。
３．第二部 妄想編
■妄想１：Ｆ社が提供する機能性食品の用途探索Ｆ社自身の特許出願は食品分野が主体であるが、全文中に「Ｆ社」という社名が記載されている特許を検索すると、 Ｆ社の出願には付与されたことがない（食品とつながりのない）テーマコードが付与された公報が抽出できる。 更に、このような公報中の記載位置から、当該公報の出願人から見たＦ社のポジション（競合関係であるか提携先候補であるか）が推測できる。
■妄想２：「液体のり」に隠された意外な罠
ヤマト社製の「液体のり」の成分についてバイオ・医療分野への用途が見出されたとの最近の報道を踏まえ、液体のりの新規用途を探索した。
先ず、Ｎグラム法（文章の先頭から文字列を順に検索し、検索対象語を切り出す方式）によるノイズの問題なども考慮して、「液体のり」で検索するのではなく、液体のりの主成分の名称「ポリビニルアルコール」で 検索すると、約2,500件がヒットした。ヒットした文献につき、公報発行年及び技術分野でグラフ化し、ポリビニルアルコールを最近利用し始めた分野を抽出できた。また、ポリビニルアルコールの使用を近年急増させた三菱ケミカルについてその用途を把握すべく、同社の公報を確認したところ、ポリビニルアルコール系フィルムに関する出願がいくつか存在し、これらは出願後に他社から移転されたものであることが分かった。このことは、同社の事業説明資料の内容と合致している。
■妄想３：セルロースナノファイバーの可能性
- step１：「全文＝セルロースナノファイバー」で検索し、約3,000件がヒットした。
- step２：セルロースナノファイバーが発明の対象になっている母集合につき「用いる」「用途」といった単語をメインキーとし、同単語の前に現れる単語の解析をしたところ、セルロースナノファイバーの用途として自動車部品、再生医療などが抽出された。
- step３：セルロースナノファイバーが発明の対象になっている母集合につき「○○用」といった単語をメインキーとし、同単語の後に現れる単語の解析をしたところ、宇宙産業でのセルロースナノファイバーの用途が抽出された。
- step４：宇宙産業における課題抽出のため、IC=B64G*（宇宙航行；宇宙航行体またはその装備）にて検索したところ約1,400件がヒットし、「軽量化」「強度」「強化」といった課題が抽出された。
- step５：上記課題の解決のために異なる繊維を組合せる発明に関する公報を見出した。
- step６：セルロースナノファイバーと炭素繊維との組合せ技術をＦタームで検索したところ、約300件が ヒットした。これらの中でも、株式会社スギノマシンと学校法人同志社の共同特許出願２件が注目に値する。
先ず、2019年に登録公報が発行された特許について「ある分野」における早期審査の利用実態を調査し、早期審査の利用の多いＡ〜Ｄの４社に注目した。
この４社の特許出願について「特許出願から出願審査請求までの日数」及び「出願審査請求から登録日までの日数」 に着目してグラフ化したところ、各社で審査請求のタイミングが異なることが分かった。
また、Ａ社について、早期審査利用状況が通常とは異なる特許出願群を発見した。これらはＡ社の重要案件だと推測できる。
更に、Ａ社のキーパーソンを把握すべく、早期審査の利用状況に基づき分析したところ、発明者のＫ氏が浮上した。 Ｋ氏は、特許出願件数ではＡ社において上位であるとは言えないものの早期審査の利用数が多いことから、キーパーソンであると推測できる。
Ⅲ．懇親会など
講演会の後、懇親会を開催し、講師の畔上先生にもご参加頂き、会員相互の親睦を深めた。以上
関東化学第二・商社部会（第4回）
| 時 | 2019年11月22日 (金) 14:20 〜 16:40 |
|---|---|
| 所 | 持田製薬(株) 本社２階 ルークホール |
| 人 | 大上業種担当役員、福安、前川、上地各正幹事
若林、山口、諏訪、川口各副幹事 協 力 ＪＩＰＡ 赤井、博多 参加者 会員企業 51社 80名（賛助会員ほか他団体の参加なし） |
Ⅰ．議 事
会務報告の後、講演会を開催した。Ⅱ．講演会
| 演題 | 『経営に資する知財活動の勘所』 |
|---|---|
| 講師 | 株式会社日立製作所 理事 知的財産本部長 戸田 裕二 氏（JIPA理事長） |
講演概要
１．企業経営と知的財産
- 経営戦略
経営戦略の最上階層には経営理念（企業行動指針、理念、価値観など）及び経営ビジョン（トップマネジメントによる未来像）があり、その下の階層に企業戦略があり、 さらにその下に事業ごとの戦略がある。知財戦略は、通常は事業ごとに立案される。 - 競争戦略の考え方
企業が競争の中で他社と比べて高い成果（利益）をあげうる状態を作り出すため「戦って勝つ戦略」だけでなく「戦わないで勝つ戦略」も重要である。
マイケル.E.ポーターの３つの基本戦略として、�．灰好函Ε蝓璽澄璽轡奪彑鑪�、�∈絞眠柔鑪�、��集中戦略が知られている。�△蓮�競合他社よりも高い付加価値を提供する戦略であり、知財の寄与が大きい。 - ケーススタディ� 扮儿�EMI社のCTスキャナー事業）
CTスキャナーを世界で初めて開発し基本特許を取得した英国EMI社が、当初、CTスキャナー事業で多大な売上・利益をあげていたにも関わらず、競合他社に遅れを取り、 事業撤退した事例から、生産、物流、サービス等の「補完的資産」がないと市場で勝者になれないと考察できる。 - 企業財務・会計と知的財産
他社から購入した事業・特許は、BS（賃借対照表）の「無形固定資産」に該当し、特許実施許諾料は、会社により判断が異なるが、PL（損益計算書）の「売上利益」または 「営業外収益」に該当する。また、特許権等の活用により得られた所得に対する法人税軽減措置である「パテントボックス税制」や、親子の外国会社などの間で実施料などの 取引価格が独立会社間取引と異なる場合に課税所得金額を算定する「移転価格税制」が注目される。 - 企業における経営指標
重要な経営指標としては、「売上高営業利益率」「総資産利益率（ROA）」「自己資本利益率（ROE）」「投下資本利益率（ROIC）」などが挙げられる。
２．知的財産活動の勘所
- 産学連携（さくらツール）
さくらツールは、産学連携における知的財産の取扱いに関するモデル契約書の類型を提供している。同ツールは、企業と大学などで契約を円滑に結ぶために活用できる。 - IPランドスケープ
IPランドスケープは、知財情報と市場情報を統合した自社分析、統合分析、市場分析を行うことなどにより、自社の戦略立案を目的とした提言を経営者に行うための手法である。
IPランドスケープは、知財人材スキル標準（version 2.0）に採用されている。 - 標準化戦略に連携した知財マネジメント
自社特許（コア部分）については独占実施する一方で、自社特許を際立たせる試験・測定方法などの標準化を進める戦略が注目されている。
例えば、ヤクルト社が業界団体を通じて乳製品の国際規格の策定を促し、海外における乳酸菌飲料の健康食品としての位置づけ獲得と、認知度向上を実現させた事例が参考になる。 - ダイキン工業の知財戦略
ダイキン工業は、インバータ型エアコン（住宅用）の製造ノウハウを中国珠海格力電器から獲得しつつ、コア技術（業務用）の技術流出を防止している（オープン＆クローズ戦略）。
また、同社は、新興国企業のみならず先進国企業にも微燃性冷媒の基本特許を無償解放することにより、国際的なルール形成に成功した（ルール形成戦略）。
３．知的財産戦略の事例
- ケーススタディ�◆米�立のプラズマ・ディスプレイ事業）
日立製作所（日立）は、1999年に富士通と合弁会社「富士通日立プラズマ・ディスプレイ」（FHP）を設立し、プラズマ・ディスプレイパネル（PDP）事業に参入したが、 韓国企業の参入に見舞われ苦戦した。また、2000年代後半には、液晶ディスプレイの世界シェアが上昇する一方で、PDPの世界シェア下落及び低価格化の影響から、最終的には事業撤退することとなった。
この事例から、事業への参入・撤退の判断には、製品のライフサイクル（導入期→成長期→成熟期→衰退期）の見極めが重要であると考察できる。 - 日亜化学工業の知的財産戦略
日亜化学工業は、知財に対する考え方を「知的財産関連情報」としてネットで公開している他、製品のライフサイクルに応じた特許ライセンスを行っている。 - 富士フイルムの知財戦略
富士フイルムは、デジタル化による本業消失の危機の中、写真関連事業を縮小し、６つの成長事業の選定および経営資源の集中投資を行った。成長事業の選定では、 既存事業で培った技術（シーズ）を棚卸し、その技術を活かせる領域をマトリクスで探した。
また、同社は、「事業の多角化推進」「オープン・クローズ戦略推進」などが評価され、平成27年度知財功労賞「経済産業大臣表彰」を受賞した。
４．日立の知的財産戦略
- 高度経済成長期の知財活動
日立は、Ｗ社のITC事件（1979年）において米国ITC（International Trade Commission）の提訴に有効な対応ができなかった教訓から「量から質への転換」「国際競争力の増強」を図った。
また、同時期から戦略発明制度を創設し、金・銀・銅の三段階のランクにより発明者の表彰を行っている。 - 米国特許訴訟からの学び
日立は、米国におけるＴ社特許訴訟（1986年）において「訴訟に耐える知財力の重要性」と「訴訟を梃子にしたライセンス料獲得」を学んだ後、Ｍ社特許訴訟（1989年） においてＭ社の４件の特許に対し１件の特許で逆提訴し、和解判決（相打ち判決）に持ち込んだ。 - 知財戦略の再構築
日立は、2013年度以降、競争戦略に基づく「プロダクト事業」に加え、協創戦略に基づく「デジタルソリューション事業」を拡大していることから、知財部門の組織再編を行い、 現在では、知財部門全体でプロダクト事業とデジタルソリューション事業の両方に関与している。 - 社会課題解決（SDGs）に向けた知財活動
日立は、知財を触媒に、アカデミア、国際標準化機関、国連機関などの外部機関と新たなコミュニティを形成し、社会イノベーション実現に活用していく。
５．第四次産業革命、Society5.0時代の知財活動
- 国際規格ISO56005（知財マネジメント）
ISO56005（知財マネジメント）は、ISOがイノベーション・マネジメントシステムの専門委員会で立上げたTC279の一部である。2020年7月に発行予定。
その内容は、イノベーション・マネジメントにおける知財の役割（IPランドスケープなど）、知財管理の構造などである。 - デジタル・トランスフォーメーション／ディスラプションへの対応
あらゆる業界を引きずり込むデジタル・ボルテックス（渦巻）に対し、既存企業が採るべき戦略としては、ニッチな既存市場に逃げ込む「撤退戦略」、 バリューベイカンシー（空隙）を長期間押さえる「拠点戦略」などがある。 - 「経営における知財戦略事例集」（特許庁）からの学び
「経営における知財戦略事例集」は、２つの視点として「新事業創造に資する知財戦略」と「経営戦略の構築・実行の高度化に資する知財戦略」を 紹介している他、化学・素材・製薬などの各社の知財戦略を紹介している。
６．まとめ
- 分かりやすい結果を出し経営幹部の信頼をかちとるべきである。
- 知財業務をアップデートし、新たな価値創出部門に変わることが重要である。
- ピンチはチャンスである。時代の変化の中で新たな知財活動にチャレンジしよう。
Ⅲ．懇親会など
講演会の後、懇親会を開催し、講師の戸田様にもご参加頂き、会員相互の親睦を深めた。以上
関東化学第二・商社部会（第3回）
| 時 | 2019年10月11日 (金) 13:30 〜 16:40 |
|---|---|
| 所 | テーブルマーク(株) 魚沼水の郷工場 |
| 人 | 大上業種担当役員、福安、前川、上地各正幹事 若林、山口、諏訪、川口各副幹事 協 力 ＪＩＰＡ 博多 参加者 会員企業 22社 29名、講師所属事務所 1名（賛助会員の参加なし） |
Ⅰ．議 事
テーブルマーク株式会社にご協力いただき、工場見学、講演会を開催した。Ⅱ．工場見学
魚沼水の郷工場の概要を安永工場長にご説明頂いた。その後、製造ラインの見学コースにご案内頂いた。また、冷凍稲庭風うどんの試食をご提供頂いた。Ⅲ．講演会
| 演題 | 『訴訟における裁判所と当事者の認識 −青色発光ダイオード事件を中心として−』 |
|---|---|
| 講師 | 不二法律特許事務所 弁護士・弁理士 吉澤 敬夫 氏 |
講演概要
１．原審（東京地裁平成13年（ワ）第17772号）について
１）原審の争点�ー膂姪�請求（発明が承継されていない場合）
- 特許第2628404号（以下、404特許）に係る特許権につき指定持分の移転登録手続請求
- 不当利得返還請求（１億円及び遅延損害金）
- 上記特許権につき指定持分の移転登録手続請求
- 発明の対価の一部の請求（１億円及び遅延損害金）
- 発明の対価の請求（20億円及び遅延損害金）
職務発明該当性について、原告（中村修二氏）は、職務外の発明であること、譲渡証書が無効であること等から発明が被告に承継されていないと主張した。被告（日亜化学）は、 譲渡の認識はあり、原告は嘘を言っていると主張した（その後、中間判決で職務発明は肯定された）。
相当の対価算定について、原告は「特許の独占の利益」「特許の貢献度」「発明者の貢献度」を踏まえ、493億9千万円を主張した。被告は「特許の結晶が他社品と同じであること」 「現行方法は発明を実施していない」こと等から相当の対価はゼロであると主張した。
３）原判決（要約）
�� 404特許は高輝度LEDの実用化に必要な基本特許である。
�� 現行方法は404特許の技術的範囲に属する。
�� 独占の利益は、「特許製品の売上」「他社の推定売上割合」「実施料率」「発明者の貢献度」に基づき、
604億3006万円である。
２．控訴審について
１）控訴審の主な主張�� 404特許は青色LEDの基本特許ではない。
�� 現行方法は、本件特許を使用していない。
�� 相当対価の算定は誤り。
２）404特許の価値
404特許の価値について、控訴人は以下の主張を行った。
�� 404特許の出願以前より、赤崎・天野教授によるバッファ層技術、p型化技術等のブレークスルー技術がある中で、
404特許発明は、GaNという材料の製造方法の発明にすぎない。
�� 404特許の出願時には、既に同等のGaNを得る代替技術があり、当該特許には独占力がない。
�� 404特許の出願後、ダブルヘテロ構造、単一量子井戸構造、多重量子井戸構造等の発明があって青色LEDの
実用化に結びついたのであり、本件特許だけで青色LEDはできない。
３）404特許と被告現行方法
404特許は「制御ガスを実質的に垂直な方向に供給」「反応ガスを基板表面に吹き付ける方向に変更」という特徴があるのに対し、被告現行方法は「制御ガスを45℃の角度で供給」
「反応ガスを基板表面に平行に維持」するものであり、文言解釈上、被告現行方法は技術的範囲に含まれないことが明らかである。
原判決では文言とかけ離れた異例の解釈により被告現行方法は技術的範囲に属するとされたが、この解釈によれば公知技術と404特許発明の区別ができない。
以上のことから、控訴人は以下の主張を行った。
�� 被告現行方法は404特許の技術的範囲に属しない。
�� 技術的範囲に属しない方法で生産した売上を対価の計算の基礎にはできない。
�� 404特許の他にもGaNを得る代替技術がある。
�� 404特許は市場を独占していない。
�� 被告現行方法は自由技術である。
４）相当対価の算定
控訴人は、相当対価の算定について、以下の主張を行った。
�� 被告企業の研究環境は当時世界第一級のものであり、その貢献度は著しく高い。
�� 会社の高収入の原因は白色LEDにあり、その付加価値分を対価の算定根拠にするのは誤り。
�� ランプタイプLEDや大型LEDディスプレイ等の応用製品による付加価値分を算定根拠にするのも誤り。
�� 将来の売り上げを右肩上がりと算定するのは誤り。
５）控訴審での和解
その後、裁判所より和解勧告があり、その趣旨は、404特許以外の全ての職務発明について全面的な和解をすることが重要で、将来の紛争も含めた解決のためとのことであった。
和解における相当対価は、クロスライセンスの存在を前提として「売上金額」「独占的実施による売上割合」「実施料率」「使用者の貢献度」等に基づき、合計6億0857万円とされた。
和解条項には、控訴人は被控訴人に対し上記の額に遅延損害金を加えた8億4391億円を支払うこと、控訴人及び被控訴人は本件以外の全ての紛争についても本和解により解決したことを 相互に確認すること等が盛り込まれた。
３．総まとめ
当事者が認識する重要な争点と裁判所の認識する重要な争点との間に乖離があることがあるため、裁判所の注目点へ留意すべきである。技術の評価について、当事者の認識と裁判所の認識で異なることがあるため、主張、特に立証において対象となる技術の意味の解説（通訳）が必要である。
４．その他
訴訟資料として制作された映像を視聴し、青色LEDの実用化に至るまでの一連の技術開発の流れにおける404特許発明の位置付けについて理解を深めた。以上
関東化学第二・商社部会（第2回）
| 時 | 2019年7月26日 (金) 14:00 〜 16:50 |
|---|---|
| 所 | 日比谷図書文化館日比谷コンベンションホール |
| 人 | 大上業種担当役員、福安、前川、上地各正幹事 若林、山口、諏訪、川口各副幹事 参加者 会員企業 37社 47名 |
Ⅰ．議 事
会務報告の後、講演会を開催した。Ⅱ．講演会
| 演題 | 『欧州におけるAI関連発明の保護に対する取り組みの最新事情について』 |
|---|---|
| 講師 | ゾンデルホフ ＆ アインゼル法律特許事務所
代表・弁理士 アインゼル・フェリックス＝ラインハルト 氏 |
講演概要
１．AI は救世主か悪魔か
AI は、「気候変動」「交通インフラ」「健康」「教育」等の分野において役立つ可能性がある一方、その危険性についても多くの指摘がある。例えば、「AI による個人の特定やトラッキング」「AI か人間かを識別できない可能性」「基本的人権を侵害する形での人間のスコアリング・システム」等が指摘されている。
日本および米国では、AI について可能性を中心にポジティブに見る傾向があるが、欧州においてはその逆で、危険性を中心にとらえて論じられている。
２．欧州のAI に関連する取り組み
- EU（欧州連合）
EUは、個人の尊厳、自由、民主主義、平等、法の支配等の価値の上に成り立っている（欧州連合条約第２条）。このような価値がAI により脅かされる危険性を重視し、EUは、信頼性のあるAI （Trustworthy AI ）との考えを打出し、AI の負の側面を封じ込めようとしている。
「信頼性のあるAI 」は、�）［瓩僚綣蕁�lawful）、�⇔冤�面の遵守（ethical）、�０堕蠅靴神�能を有すること（robust）から成る。
�，蓮�AI はEU及び各メンバー国の法律を遵守しなければならないというものである。この点について最近の大きな動きとして2018年のEU一般データ保護規則（GDPR）の施行があった。
�↓�については、AI 倫理ガイドラインが作成されるとともに、その要旨に依拠する「信頼性のあるAI 評価リスト」のパイロット・バージョンが作成されている。同リストは、 AI の評価項目として「人間の活動と監視」「堅固性と安全性」「透明性」「多様性・非差別・公平性」等を挙げている。
このように、EUは現在のところ完全にAI の安全面・規制にフォーカスしており、知的財産権によるAIの保護についての議論は始まったばかりであるが、将来的にAI についてのルール策定を世界で 主導したいとのEUの目論見も伺える。 - EPO
2018年施行のEPOの改訂審査ガイドラインでは、AI 及び機械学習は数学的方法であると規定されているところ、EPOは数学的方法の特許性についての「２段階テスト」を使用しており、下記�´△陵弖錣鯔�たせばAI 関連発明でも特許可能である。- �．�レームの主題が全体として技術的特徴を有するか
- �⊃�学的方法そのものが発明の技術的特徴に貢献しているか（進歩性評価に関係する）
上記�，陵弖錣鯔�たすには、当該方法を実施する技術的手段を特定すれば良く、例えば、「AI を心臓監視装置として使用」といった特定が可能である。このことは、技術的用途を特定 しなければ特許性がないということでもあり、広く応用可能な発明の包括的保護は難しく、AI 及び機械学習を特許で保護するインセンティブが生じなくなる危険性を有している。 - ドイツ特許商標庁（DMPA）
DMPAでは、発明の特許性に関し「３段階テスト」を使用しており、AI 関連発明についてもこのテストが適用される。テストの内容は、実質的にはEPOの「２段階テスト」と同様である。
３．WIPO発表のテクノロジー・トレンド2019（AI ）
WIPO発表の「テクノロジー・トレンド2019」によりAI 関連発明について下記報告がなされた。�� AI 技術カテゴリーとしては、機械学習（Machine learning）、ロジックプログラミング（Logic programming）、
ファジーロジック（Fuzzy logic）等があり、機械学習のパテントファミリー数が最多であり、その数は、ここ５年で
急激に伸びている。
�� 応用分野としては、コンピュータービジョン（Computer vision）、音声処理（Speech processing）、自然言語処理
（Natural language processing）が中心である。
�� 企業別の特許出願数は、米国企業が1位（IBM社）、2位（Microsoft社）を占め、上位30社中に東芝、NEC等の
日本企業が13社含まれる。
�� PCT出願のパテントファミリー数は継続して伸びているが、EP出願についての同数は減少に転じており、両者の
乖離が広がっている。
�� 庁別の特許出願数は、1位：米国、2位：中国、3位：日本、4位：WIPO、5位：EPOの順である。
�� 少なくとも１つが特許許可されたパテントファミリー数、及び高被引用率のパテントファミリー数は、いずれも1位：
米国、2位：日本である。第一国が日本出願の特許出願は、約40％が後に他国に出願されている。
�� 第１国出願と後の出願（subsequent filings）の数は、米国、中国及び日本では、第１国出願数が後の出願数を
上回っているが、WIPO及びEPOでは、第１国出願数のほうが少ない。
�� 機械学習分野の特許出願数は、1位：中国、2位：米国、3位：日本の順である。
�� 訴訟提起のあったパテントファミリー数を被告企業別に見ると、1位：Microsoft社、2位：Apple社、3位：Alphabet社
の順である。
�� 特許異議申立のあった特許件数を異議申立人別に見ると、1位：Siemens社、2位：Daimler社等、ドイツ企業が
目立つ。
�� 特許異議申立のあった特許件数を被異議申立人別に見ると、1位：Samsung社、2位：LG Corporation社等、韓国
企業が目立つ。
４．ドイツ特許庁発表のAI 関連発明に関するデータ
ドイツにおけるAI 関連特許出願を第１国出願の出願人国別に見ると、1位：米国、2位：ドイツ、3位：日本の順である。また、自動車産業に関連する技術分野の出願が多いことが分かる。５．知的財産権制度の今後の課題
AI の出現により、知的財産法は以下のような多くの問題を露呈している。
�� AI 利用による発明の発明者をAI の開発者とするかユーザーとするか議論の余地がある。
�� 進歩性のレベルが上がり、一部のAI を駆使する大企業が特許を独占する危険性がある。
�� AI 関連発明においては、コンピューター・プログラムによって実施される方法の特許要件に関わる特徴部分の
すべてを定義することが重要である。
�� AI の導入で技術的進歩が加速し、技術の陳腐化も早くなるため、出願公開時期が出願日から18カ月では遅すぎる
のではないか。また、実用新案制度による保護の方が適当ではないか。
�� 侵害訴訟の場面で特許権者はソフトウエアコードのアクセスを持たないため侵害の立証が困難である。査証制度
の採用や立証責任の転換が考えられる。
６．その他
出願人・権利者に有利なドイツ特許制度の特徴について紹介された。Ⅲ．懇親会など
講演会の後、懇親会を開催し、講師のアインゼル先生にもご参加頂き、会員相互の親睦を深めた。以上
関東化学第二・商社部会（第1回）
| 時 | 2019年5月10日 (金) 14:00 〜 16:50 |
|---|---|
| 所 | 日比谷図書文化館日比谷コンベンションホール |
| 人 | 幹 事 大上業種担当役員、福安、前川、上地各正幹事 若林、山口、諏訪、川口各副幹事 参加者 会員企業 54社 71名、講師所属企業 3名 |
Ⅰ．議 事
会務報告の後、講演会を開催した。Ⅱ．講演会
| 演題 | 『いま知っておくべきオンライン上の企業ブランド侵害事例 〜ブランド保護戦略の実務とそのポイント〜』 |
|---|---|
| 講師 | クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社 MarkMonitor シニアリージョナルアカウントマネージャー 鈴木 壮 氏 |
講演概要
１．会社紹介
クラリベイト・アナリティクスは、ThomsonReutersからIP＆Science部門が2015年に独立して設立された。同社の事業の１つが「MarkMonitor」として オンラインブランド保護及びドメイン名管理事業をグローバルに展開している。２．アンケート調査について
MarkMonitorが実施した市場アンケート調査の結果から、オンライン上で模倣品を購入した消費者のブランドに対するネガティブなリアクションがネットを介して 拡大していくことや、企業でのオンライン上のブランド保護の重要性が高まっている現状等が明らかになった。３．オンライン時代の侵害事例と対策
- 侵害チャネル
侵害チャネルとしては、マーケットプレイス（Amazon、Alibaba等）、ウェブサイト、ソーシャルメディアがある。
主要なマーケットプレイスとしては、Alibaba Group（売上規模61兆円）、Amazon（同16兆2,500億円）、ebay（同9兆2,056億円）等がある。 - マーケットプレイスでの侵害
主なマーケットプレイスでの侵害類型としては、�．屮薀鵐匹良埓技藩僉淵蹈瓦良埓技藩僉法↓�著作権侵害（オフィシャルサイトの画像侵害）、��製品の出所混同、�ぬ亙鑄覆�ある。
MarkMonitorは、マーケットプレイスでの侵害規模の把握のため、全世界の300を超えるマーケットプレイスでの出品数とそこでの侵害レベルを試算した。
マーケットプレイスでの侵害セラー（出品者）の上位３割が侵害全体の７割を占める傾向があることが判明している。 - ウェブサイト／ドメイン侵害
ウェブサイト／ドメイン侵害としては、ドメインにブランド名を不正に用いることや、サイトコンテンツのヘッダーにロゴを不正に使うことによる正規代理店のなりすましサイトや オンラインショップでの製品販売、メンテナンスサービス等がある。
MarkMonitorは、ウェブサイト／ドメインの侵害規模を把握するため、自社ブランドを侵害しているウェブサイトやドメインを世界全域で調査し、侵害サイトの地域性・トレンド・ 侵害度合いを分析し、対策が必要な侵害サイトの優先順位付けを行う。
なお、ドメインの権利者情報は「WHOIS情報」から求められるが、GDPR（EU一般データ保護規則）の影響でWHOIS情報の取得が困難になり、侵害サイトの特定に手間と時間がかかるようになってきている。 - マーケットプレイスでの侵害の削除
権利者がマーケットプレイスの知財侵害対応窓口に削除申請すると、対応窓口は、規程に違反ありと判断した場合、セラー（出品者）に侵害箇所の修正を依頼し、修正がなければ出品を削除する。
規程の内容は、マーケットプレイスにより異なり、ebayの規程は比較的権利者に有利なものとなっている。 - ウェブサイト／ドメインの侵害の削除
権利者がドメイン権利者、インターネットサービスプロバイダー（ISP）、ドメイン管理会社（Registrar）に警告状を送付することにより行われる。
削除されない場合、アクセス数やコンテンツの悪質性等から緊急性を判断した上で、さらなる対応（譲渡交渉、紛争申し立て等）を判断する。 - テクノロジーを駆使した効果的な対策
MarkMonitorは、「データ収集」「侵害分類分け」「削除申請」「実績レポート生成」までの各プロセスにおいて、顧客の実際の購買行動にフォーカスした、下記の効果的な対策を行う。- �� ユーザーの目に実際に触れる出品順にデータを収集する。
- �� セラーの評価、所在地や出品先情報等を収集し、効果的な絞り込みを行う。
- �� ブランド名でソートすることで、ブランド混同の疑義出品の一括絞込みを行う。
- �� 同じイメージを使っている出品をまとめて確認することで、画像で判断できる模倣品、著作権侵害、ロゴ侵害等を一括で確認できる。
- �� マシーンラーニングにより出品の侵害レベルを自動的に数値化し、侵害レベルごとに色分けする。
- �� 対策の「見える化」が実現された実績レポートを作成し、社内における模倣品対策への評価につなげる。
- 対策フェーズに分けたレポートとケーススタディ
MarkMonitorは、フェーズ１〜３の順で、フェーズに合わせた対策を行う。
フェーズ１は、対策の効果が出やすい時期である。出品数や新規セラー数等の指標に基づく「量的対応」を行う。
フェーズ２は、一定の結果が得られた状況で対策に時間のかかるターゲットを特定し、時間をかけて対策を実施していく「組織的対応」を行う。
フェーズ３は、侵害対象が低減された状況をメンテナンスするとともに最も悪質なターゲットに訴訟等を検討する「戦略的対応」を行う。 - 経済的損失の見える化
MarkMonitorは、所定の計算式に基づき「対策しなかった場合の経済的損失額」や「対策をした場合に正規品販売に繋がる推定金額」を算出することで、経済的損失や対策の効果を「見える化」している。
４．その他
食品、化粧品、製薬等、業界別でのオンライン上の侵害事例について紹介された。また、6月14日に同社が開催するオンラインブランド保護に関するセミナーMarkMonitor Summit 2019東京
（https://info.markmonitor.com/2019summit_tokyo）に関しても紹介。
Ⅲ．懇親会など
講演会の後、懇親会を開催し、講師の鈴木先生その他クラリベイト・アナリティクス・ジャパン株式会社の３名にもご参加頂き、会員相互の親睦を深めた。以上
