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会務報告&部会報告
関西化学部会（第4回）
| 時 | 2019年2月8日（金）13:00〜18:50 |
|---|---|
| 所 | 本田技研工業（株） 鈴鹿製作所 |
| 人 | 皆川業種担当役員、早瀬、本田、中馬各幹事 25社 29名 |
議 事
1. 会務報告
皆川業種担当役員が、本年度関西化学部会の構成や活動実績について、報告を行った。2. 鈴鹿製作所の概要
本田技研工業株式会社の時本浩様（四輪事業知的財産部製造知財課）より、鈴鹿製作所の概要についてご説明いただいた。鈴鹿製作所は1960年4月に設立され、当初は二輪車「スーパーカブ」の製造を担っていたが、現在では主に四輪車のＮシリーズやＦＩＴを生産している。２ラインによる一日あたりの 生産台数は約2050台に達し、そのうち約98％は国内向けであり、約２％は海外向け製品である。2018年12月末時点で、約6400名の方々が業務に従事されている。
また、同社は28か国78拠点で完成車を生産しており、全拠点での年間生産台数約555万台のうち約53万台を鈴鹿製作所が占めている。
3. 講演
| 演題 | Ｈｏｎｄａの知財活動 |
|---|---|
| 講師 | 本田技研工業株式会社 知的財産・標準化統括部 部長 遠藤 嘉浩 氏 （JIPA常務理事） |
講演概要
（１）Ｈｏｎｄａの事業領域
四輪事業、二輪事業、農機具等のパワー・プロダクツ事業の３つが事業の柱となっている。今後は、ホンダジェット等の航空機や、ＡＳＩＭＯやＵＮＩ−ＣＵＢ等のロボット、歩行アシスト機といった 新規事業分野への挑戦も進めていく。四輪事業・二輪事業ともに世界６地域で展開しており、四輪事業における年間生産台数は約530万台、年間売上高は約12兆円である。売上高に占める地域別のシェアは、北米が約58％とトップであり、 次いでアジアが約18%、日本が約14％となっている。
一方、二輪事業における年間生産台数は約2000万台、年間売上高は約２兆円であり、売上高の約61％をアジアが占めている。一般的には、国民の所得向上に伴い、所有される車両が二輪から四輪へと 移行する傾向があるが、アジア地域では依然として二輪車が多く用いられている。今後は、アフリカ地域で二輪車の市場が伸びていくのではないかと考えている。
（２）知財部門の概要
二輪・パワープロダクツ事業知的財産部、四輪事業知的財産部、コーポレート知的財産部、技術ライセンス部、標準化推進部の５つの部門で構成される知的財産・標準化統括部が2017年4月に発足した。日本国内では240〜250名の人員を有しており、中でも四輪事業知的財産部は約100名と最多である。国外では、北米・欧州・アジア・中国・南米に拠点があり、これらの拠点の人員も含めると国内外で約300名が 知財業務にあたっている。
二輪や四輪をはじめとする４つの事業本部が、それぞれ世界６地域でグローバルに事業活動を行っているため、知的財産・標準化統括部においても地域・事業ごとに知財戦略を推進できるような 体制を構築している。例えば、二輪・パワープロダクツ事業知的財産部では、各地域の同事業に関する特許・意匠の権利化や管理、不正商品対応等を行っている。一方、四輪事業知的財産部では、 各地域の同事業に関する特許・意匠の権利化や管理のほか、パテントトロールへの訴訟対応等も担っている。
（３）Ｈｏｎｄａ知財部門の特徴
一般的な権利化やライセンス業務だけでなく、グローバルに知財組織が連携し、比較的広範囲にわたる知財業務を推進している。例えば、各国における不正商品への対応経験が豊富である。 また、海外企業に対する生産ライセンスの付与に関する業務経験も多岐にわたり、これに伴う各国での税務的な課題への対応についても経験の蓄積がある。加えて、自動運転では必須となる通信技術や標準化の重要性を考慮し、標準化業務を知財業務として位置付けており、自動車業界においても避けて通れなくなった標準化戦略を推進する 体制を整えるため、「知的財産」と「標準化」を一体化した「知的財産・標準化統括部」の発足に至っている。
（４）知財権の保有状況
2016年度末における日本での特許保有件数は約20500件であり、北米（約11200件）・欧州（約7500件）・中国（約3700件）・アジア（約3600件）と比べて突出しており、日本の市場規模を 考慮すると多すぎると考えている。この点については、現在マーケットサイズに合わせポートフォリオの見直しを行っているところであり、今後はインド等にシフトしていく可能性がある。（５）新規アイデアの創出・権利化
従来は、開発目標を達成する過程で見出された発明を出願、権利化していた。しかし、近年の自動車業界における通信技術の重要性の高まりや、ＩＴ系企業による活発な特許出願の状況を踏まえ、従来とは異なる視点から新たなアイデアを創出するために社内で 「コトづくり「創出会」」を立ち上げた。
「創出会」では、約10年後の価値観やライフスタイルの変化を予測・共有し、将来どのようなニーズが存在するかについて意見を出し合い、新たなアイデアを生み出そうとするものである。 エンジニアのみならず、事業企画部門の担当者等も部門の垣根を超えて参加している。
（６）出口戦略
研究・開発段階で数多くの発明が生み出されるが、事業化に至る過程の中で自社では利用しなくなる発明も存在する。そうした研究開発成果の死蔵を防ぐために、ライセンスアウト先を 積極的に探索する活動も行っている。ライセンスアウト先が見つかればロイヤリティにつながるうえ、自身の成果が世に貢献しているという発明者のモチベーションを維持することにもなる。 ライセンスアウトに際しては、「競合しないところへはオープンにする」との基本方針のもと、候補技術、相手、マーケットなどの選定を行っている。4．工場見学
鈴鹿製作所内の完成車工場およびエンジン工場を見学し、工場のご担当者様から製造工程に関してご説明いただいた。5．懇親会
講演会・工場見学の終了後には、会員間の意見交換、及び親睦を目的とした懇親会を開催した。以上
関西化学部会（第3回）
| 時 | 2018年11月30日(金) 13:00 〜 16:30 |
|---|---|
| 所 | アサヒビール吹田工場 |
| 人 | 皆川業種担当役員、早瀬、本田、中馬各幹事 34社 40名 |
議 事
1. 会務報告
皆川業種担当役員が、本年度関西化学部会の構成・年間活動方針・活動計画について、報告を行った。2. 講演
| 演題 | アサヒグループの歴史と知財管理 |
|---|---|
| 講師 | アサヒグループホールディングス株式会社 研究開発部門 知財戦略室 室長 酒井 範夫 氏 |
講演概要
（１）アサヒグループの紹介
1889（明治22）年に日本人による初めてのビール会社として、前進の大阪麦酒会社が設立され、1900（明治33）年には日本初のびん入り生ビールである 「アサヒ生ビール」が発売された。1906（明治39）年には、大阪麦酒（株）・日本麦酒（株）・札幌麦酒（株）の合同で、大日本麦酒（株）が設立され、1949（昭和24）年に朝日麦酒（株） と日本麦酒（株）に分割された。また、1958（昭和33）年には、日本初の缶入りビールとして「アサヒビール」が発売された。
今年で大阪麦酒設立から129年、朝日麦酒設立から69年を迎えた。
現在は、酒類事業をアサヒビールが、飲料事業をアサヒ飲料が、食品事業をアサヒグループ食品がそれぞれ担当している。
2017年に東欧の飲料メーカーがアサヒグループの一員となったことにより、2017年のグループ全体の売上収益の約３割は国際事業で占められている。
（２）研究開発体制
アサヒグループホールディングス（以下、「グループ本社」）と各事業会社のそれぞれに研究開発部門がある。研究開発拠点として、茨城県守谷市と神奈川県相模原市の２カ所に研究開発センターを有している。
酒類・飲料・食品等様々な事業領域の研究を行っているが、事業領域の垣根を越えて、研究成果を複合的に分析・活用できる体制が構築されている。
（３）知財組織の変遷
グループ本社と各事業会社のそれぞれに、知財担当者が配置されている。知財担当者の人数は、2005年にはグループ全体で6名だったが、事業の拡大に伴い、 現在では約30名となった。３〜５年毎に人材のローテーションを実施しており、グループ本社と各事業会社との間で特許担当者のローテーションを行っている。また、知財担当部門と 他部門との間でもローテーションを実施している。
海外の知財担当部門の取扱いが今後の課題であると考えている。現在は、現地のリーガルメンバーが特許業務の窓口を担当している。
（４）知財教育
全研究者を対象とした知財研修を実施している。研究者の受講履歴は管理されており、研究者が自身のステージに応じて適切な研修を受講できるよう、 知財部門が年間計画を立案し、研修を行っている。知財担当者が講師を務めており、研修内容は難易度等に応じて７つのコースに分けられている。
こうした研修が、先行技術調査等の責任の所在を明確にすることにも役立っている。
（５）発明奨励制度
グループ内の報奨金管理を一元化するために、国内グループ会社の職務発明規定を統一した。また、新たにグループ入りした会社の制度も順次統一している。これにより研究者の不満解消・異動時の制度説明や実績評価調査の簡略化、といった効果が生まれている。
（６）共通インフラの整備
知財管理システムと特許検索システムをグループ本社から各事業会社に提供しており、各事業体が自由に使える体制を構築している。知財管理システムとして 「ＴＯＰＡＭ ＮＶ」を、特許検索システムとして「ＮＲＩサイバーパテントデスク２」を利用している。「ＴＯＰＡＭ ＮＶ」を用いて、グループ内で出願案件等の情報を一元管理しているが、各事業会社で個別に管理したい項目があれば、それに対応することも可能である。 また、日本出願の経過情報とＴＯＰＡＭのデータとを照合させることでデータの正確性を高めている。
「ＮＲＩサイバーパテントデスク２」によるＳＤＩ検索では、検索結果の通知先を研究開発部門の部長またはプロジェクトリーダーに設定し、そこでノイズを除去した後、
テーマ担当者に配信している。ノイズが減ることで、各担当者がＳＤＩ結果のチェックに高い意識を維持し、取り組むことができている。また、検索対象は毎年見直
しており、その都度、知財担当者と研究開発部門とが協力して検索式を検討している。ノウハウ管理に関して、公証役場での確定日付の取得等の手続は煩雑であり、どのような情報が将来必要となるかを予測することは困難であったため、安価で 簡便に研究開発の履歴を残す手段が必要であった。2011年にＮＲＩタイムスタンプを導入したことで、インターネット環境とＮＲＩ−２のＩＤさえあれば、 時間や場所の制約を受けずに、誰もが簡単に研究開発の履歴を残せるようになった。但し、重要と思われる案件については、紙媒体による認証手続きを併用している。
（７）吹田工場の紹介
大阪麦酒会社が創立された翌年の1891（明治24）年に、吹田村醸造所として竣工された。敷地面積は161,000�屬如�甲子園球場４個分に相当する。生産量は大びん換算で１日最大340万本であり、2017年は年間８憶本（4000万函）であった。また、一日あたりの出荷量は、大型トラック約500台分に相当する。
2018年1月4日現在、600名以上の従業員（アサヒビール・グループ会社・協力会社）が業務に従事している。
３．工場見学
吹田工場内の製造設備を見学し、工場のご担当者様から製造工程に関してご説明いただいた。４．懇親会
講演会・工場見学の終了後には、会員間の意見交換、及び親睦を目的とした懇親会を開催した。以上
2018年度 関西三業種合同部会
| 時 | 2018年10月26日（金）〜27日（土） |
|---|---|
| 所 | 【講演会】ＡＮＡクラウンプラザホテル宇部 東の間 【見学会】宇部興産株式会社 【懇親会】ＡＮＡクラウンプラザホテル宇部 西の間 |
| 人 | 【関西化学部会】 ・業種担当役員：皆川（東レ） ・幹事：早瀬（石原産業）、本田（シキボウ）、中馬（千寿製薬） 【関西金属機械部会】 ・業種担当役員：村上（山陽特殊製鋼） ・幹事：馬場（川崎重工業）、上松（東洋アルミニウム）、近藤（豊田自動織機） 【関西電気機器部会】 ・業種担当役員：松本（ダイキン） ・幹事：柴原（タツタ電線、）坂口（アイコム）、長尾（ローム） 講師２名、ＪＩＰＡ４名、他８０名 合計８６名 |
議 事
１．見学
宇部興産株式会社にて、２台のバスに分乗し、宇部地区工場群、興産大橋・ダブルストレーラーを見学した。 ダブルストレーラーは、40トンの積載が可能な荷台が、２つ連結されたトレーラーであり、日本最長の私道である宇部興産専用道路でクリンカー等を輸送するために用いられている。
また、総合案内施設「UBE-i-Plaza」にて、宇部地区工場群の全体像に関する解説を受けた。
２．関西部会
２−１．開会の挨拶
関西三業種合同部会の皆川役員から開会の挨拶が行われた。２−２．会務報告
関西事務所の志村所長より、配付資料に沿って会務報告が行われた。新たに正会員として２件の入会が承認され、賛助会員として東京大学が加入した旨の報告があった。
また、今月の関東部会で取り上げられた「特許ライティングマニュアル」（改訂版）が紹介された。当該資料は、Japioのホームページから無料でダウンロード可能であり、
文章表現に関して留意すべき７つのカテゴリと、細分化された27のルールで構成されている。
２−３．JIPA委員会等の活動紹介
宇部興産株式会社知的財産部の島野様（人材育成委員会委員、中国四国九州協議会幹事）より、配付資料「JIAP委員会等活動紹介」に基づいて以下の紹介が行われた。
人材育成委員会では、様々な研修を開催している。昨年度、参加者数の多かった研修は、知財の管理事務や、営業担当者・技術マネージャ向けの知財知識をテーマとするものであり、 知財部員のみならずそれ以外の方々の関心の高さもうかがわれた。
中国四国九州協議会は、中国・四国・九州地区における会員の知財活動の活性化を目的として企画を展開している。同協議会への入会条件は、JIPAの会員であることと、 中国・四国・九州のいずれかに知的財産を創出する事業所があることである。現在のべ52団体が入会しており、入会条件を満たす関西地方の企業からの入会を受け付けている。
３．講演１ （1日目）
| 演題 | 「宇部興産の知的財産活動について」 |
|---|---|
| 講師 | 宇部興産株式会社 知的財産部 部長 宮田 博之 氏 |
３−１．素材メーカー（化学）を取り巻く環境
石油化学や産業ガス等の基礎化学品分野で欧米企業に対して高い競争力を維持することが困難な中、機能性プラスティックやファインケミカルといった 機能性化学品分野の強化が重要性を増している。特に、ユーザーニーズを把握したうえでの戦略的な知的財産活動が求められている。３−２．宇部興産グループの概略
1897（明治30）年に創業した沖の山炭鉱と、その後に設立された宇部新川鉄工所・宇部セメント製造株式会社・宇部窒素工業株式会社とが合併され、 1942（昭和17）年に宇部興産株式会社が設立された。2018年3月末現在において、資本金は584億円であり、従業員数は連結で10799人である。
2017年度の連結売上高は6955億円であり、主な事業分野は、化学・医薬・建設資材・機械・エネルギー・環境分野である。その中でも、化学分野が売上シェアの約44％を占めている。
３−３．宇部興産グループの事業と知的財産活動
事業に活用できる特許を重視しており、事業ごとの特性を考慮し、保有特許の見直しを適宜行っている。その結果、2014年には350件を超えていた 新規国内登録件数が、2014年から2017年の間で新規国内登録件数が30％程度減少した。新規登録特許数の減少は、事業の縮小によるものではなく、適正化の結果である。出願の内容やタイミングの決定に際しては、常に事業の出口を意識し、知的財産部門と、事業部門・研究開発部門とで密にコミュニケーションを取り、判断している。
３−４．宇部興産グループの新規事業創出活動
今後志向する４つの事業ドメインとして、環境・エネルギー、モビリティ、建築・インフラ、ヘルスケアがある。新規事業創出に向けて、それぞれの分野で膨大な知財情報に基づき、自社の客観的なポジションや保有特許の評価を行い、関係部門へ結果を提供している。
３−５．宇部興産グループの海外対応と知的財産教育
タイ拠点においては、JETROバンコクと協力してタイ知財局への技術説明会を開催することもある。社内の知財教育は、新入社員・中堅社員・テーマ責任者の各レベルに応じて、自社の具体的な事例を題材とした教育を行っている。知財部員が講師を担当することで、 より質問しやすい雰囲気作りをしている。
各グループ会社の状況に応じた知財教育を行っているが、ＩＰマナー教育に関しては各社で共通した内容としている。
４．懇親会
講演１の後、ホテル内の別会場にて懇親会を開催した。多くの参加者にご来場頂き、闊達な意見交換、会員相互の親睦を深めることができた。５．講演２ （2日目）
関西三業種合同部会の松本役員による開会の挨拶の後、以下の講演が行われた。| 演題 | 「ASEANの知財概況」 |
|---|---|
| 講師 | 特許庁 総務部 国際協力課地域協力第一班長 袴田 知弘 氏 |
５−１.ASEAN概況
シンガポールでは比較的先進的な知的財産法が整備されているが、ミャンマーにはまだ知的財産法自体が存在しないなど、各国で抱えている課題は異なっている。フィリピン・マレーシア・シンガポール等の英語を使用できる国では、米国からの出願件数が最多である。他方、タイ・インドネシア・ベトナムでは、日本からの出願件数が最も多い。
５−２.対ASEAN知財政策の考え方
各国での異なる課題に対応するため、ASEANとの多国間協力と、二国間協力の双方が用いられている。多国間協力としては、ASEAN全体で取り組んでいる課題について、日ASEAN知的財産アクションプランを策定し、審査基準の策定等の支援をしている。一方、二国間協力では、 審査官の派遣や、ミャンマーでの知財庁設立支援など、各国の実情に応じた支援を行っている。
５−３.多国間関係
首脳レベルから事務レベルに至るまで、様々な階層を通じて各国への働きかけを行っている。首脳レベルの働かきかけの結果、2017年11月の日ASEAN首脳会議では、 議長声明に知的財産に関する文言が盛り込まれた。多国間関係の施策のひとつとして、日本国特許庁がASEAN各国から審査基準の策定や改訂に関与する人材を招聘し、研修を行っている。また、国際条約への加盟の支援や、 模倣品対策として取り締まり機関に対する研修等も実施している。
５−４.二国間関係
様々な機会を利用して各国のトップレベル同士での会談を実施している。二国間関係の施策としては、ASEAN6の全ての国（シンガポール・フィリピン・インドネシア・タイ・マレーシア・ベトナム）との間で特許審査ハイウェイを実施中であることや、 公報データの交換について合意に至っていること等が挙げられる。
加えて、カンボジア・ラオスとはCPG（特許の付与円滑化に関する協力）、ブルネイとはPPH+が既に開始されており、これにより特許審査体制やリソースが不十分な国においても、 日本の審査結果を活用して迅速な権利設定が可能となっている。
５−５.産業界への期待
どの国のどの法律の何条を改正して欲しいといった、知財分野におけるASEAN向けの要望を政府に共有して欲しい。また、ASEAN知財庁が参加する知財イベントでの登壇等、 ASEANに対する働きかけへの参画をお願いしたいと考えている。産業界が日本政府に対して働きかける際のタイミングとしては、間もなく制度改正が行われる時期・ハイレベル会合の準備時期・官民対話の時期等が効果的だと思われる。
６．閉会の挨拶
関西三業種合同部会の松本役員より閉会の挨拶が行われた。以上
関西化学部会（第1回）
| 時 | 2018年6月20日（水）１４：３０−１７：００ |
|---|---|
| 所 | 日本知的財産協会 関西事務所 |
| 人 | 皆川業種担当役員、早瀬、本田、中馬各幹事
54社 63名 |
議 事
1. 会務報告
本年度関西化学部会の構成、年間活動方針および活動計画について、報告を行った。2. 講演
| 演題 | 中国化学分野の特許侵害訴訟や無効審判における最新動向及び留意事項 |
|---|---|
| 講師 | KING&WOOD MALLESONS パートナー弁護士・弁理士 秦 玉公 氏 |
講演概要
（１）近年の化学分野における訴訟状況
訴訟件数は上昇傾向にある。その理由としては、出願件数自体の増加、中産階級の拡大に伴う市場競争の激化、裁判所が認定する損害賠償額の増加等の理由があると考えられる。また、 日本の化学系メーカーが原告となって侵害訴訟を提起する事例も、ここ２〜３年で増加してきている。無効審判事件における無効率は、特許権は40％程度、実用新案権は50％程度である。
（２）証拠の調査収集及び公証付き購入
訴訟を有利に進めるためには、証拠として侵害被疑物品の公証付き購入を行うことが望ましい。侵害被疑物品以外に収集すべき証拠としては、侵害行為をしている企業・当該企業の担当者・ 取引のフロー等に関するものが挙げられる。一方で、証拠の収集には適法性が求められるため、慎重に行う必要がある。そのため、証拠の収集に精通した現地代理人の協力が不可欠である。
なお、中国でもフォーラムショッピングが行われており、自身に有利な裁判地を選択できるような証拠を収集することが望ましい。
（３）製法特許の立証責任の分配
製法特許の立証責任が転換され、被疑侵害者が特許製法と異なる製法によって得られたことを立証しなければならなくなる場合は、以下の事項を特許権者が立証することによって発生する。
対象の特許製法によって新規製品が製造される場合、特許権者は、当該製法で得られる製品が新規製品であることや、侵害被疑物品が製法特許によって得られる物と同様の物であることを立証する必要がある。一方、対象の特許製法によって得られる物が新規製品でない場合、特許権者は、被疑侵害者が特許製法に接したことがあること又はリバースエンジニアリングによれば特許方法を使用した可能性が 高いことを立証し、全力を尽くして立証活動をした後、証拠保全を申請する必要がある。
この点に関し、以下の裁判例が挙げられる。
�．▲奪轡絅薀鵐� vs 魏星光（2013年,最高人民法院）
�⇒�成林 vs シンセン光明創博生物製品有限公司（2011年,湖北高級人民法院）
��BASF vs 南通施壮化学工業（2008年, 最高人民法院）
�じ天�濃絵事件（2017年, 北京高級人民法院）
��潍坊恒联浆纸有限責任公司 vs 宜宾長毅浆粕有限责任公司（2013年,
最高人民法院）
（４）司法鑑定
権利範囲の属否に関して実験データを取得する場合は、国家で認定された中国内の機関でデータを取得することが望ましい。それ以外の機関で取得された実験データは、参酌されない可能性が高まる。（５）無効審判における実験データの補足提出
審査指南の改正に伴い、実験データの補足提出が認められることもある。そのため、補足提出に挑戦する価値はあると考える。 この点に関し、以下の審決例が挙げられる。- 特許再審委員会34432号無効審決(特許権者：ノバルティスアーゲー)
当該事件では、特許権者はデータを補足提出したものの、進歩性が否定された。 - (2017）京行終1806号（特許権者：ギリアード サイエンシーズ,インコーポレイテッド）
当該事件では、第二審裁判所が補足提出された実験データを受け入れ、第一審判決と無効審決を取り消した。
（６）改正後の審査指南における化学特許のクレーム補正に関する規定
審査指南の改訂により「請求項の更なる限定」をする補正が認められるようになった。この点に関し、以下の審決例が挙げられる。
�� 35395号無効審決
当該事件では「請求項の更なる限定」に該当せず、補正要件を満たさないと判断された。
��34960号無効審決
当該事件では補正後の請求項に係る発明が、進歩性ありと判断された。
3．懇親会
講演会の終了後には、会員間の意見交換、及び親睦を目的とした懇親会を開催した。
