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会務報告&部会報告
関東化学第二・商社部会（第5回）
| 時 | 2019年2月15日 (金) 14:20 〜 16:40 |
|---|---|
| 所 | 日比谷図書文化館日比谷コンベンションホール |
| 人 | 大林業種担当役員、西村、河野、谷森各正幹事
大上、前川、福安、上地各副幹事 協 力 ＪＩＰＡ 赤井、博多 参加者 会員企業 65社 84名（賛助会員ほか他団体の参加なし） |
Ⅰ．議 事
会務報告の後、講演会を開催した。Ⅱ．講演会
| 演題 | 『海外特許調査−AIを巡る潮流と 調査実務のトピックス』 |
|---|---|
| 講師 | スマートワークス株式会社 代表取締役／知的財産アナリスト 酒井 美里 氏 氏 |
講演概要
- 情報担当者は海外の潮流に目を向けよう
- １）CPCの普及
韓国では、CPCの付与が急速に進んでおり、2015年1月以降の新規出願にはCPCとIPCを一緒に付与している。一方、日本では、FIの解説書にCPCについての解説が記載されていること、 およびCPCに言及している項目数が増加していることからすると、FIとCPCが整合を取りつつはあるものの、まだまだ対応が遅れている（ガラパゴス化）。 - ２）「特許情報」をリードするのは誰？
世界的に普及が進んでいるCPCは、欧州米国共通分類であるが、現在の様々な状況を考慮すると、EPOとWIPOが特許情報をリードしているといえる。 グローバルで特許調査を行う場合、EPOやWIPOを始めとした海外発の情報が今まで以上に無視できなくなっている。 - ３）情報の「量と速さ」
従来、国際会議やカンファレンス等からの情報が日本語翻訳情報になるまでに情報量は減り、伝達速度も数週間から数か月を要していたが、近年は、 海外庁のWebセミナー（Webinar）やTwitter等の新たな情報収集手段が加わり、瞬時にある程度の情報量を得られる環境が整ってきた。USPTO、EPOおよびWIPOは、 カンファレンス配信またはWebinar開催をTwitterで告知している。 - ４）技術トレンドと調査
��WIPO「テクノロジートレンド」調査報告書（初版）
ライフサイエンス分野（診断分野）におけるAI応用では、機械学習または画像処理技術が多く出願され
ていることが示されている。
�◆屐�○」 × 「情報通信技術（IOT）」の分類新設
2018年よりIOTと化学、医療を組み合わせたIPC分類が新設されている。 - ５）特許調査とAIツールの利用
海外では、「AIツールを利用した特許調査で不利益が生じた場合」の責任分担について、議論が始まっている（参考：2018年9月開催CEPIUG 10thカンファレンス）。
- １）CPCの普及
- 調査実務のトピックス
- １）収録国の確認
マイナー国は、データベースによっては収録されていないこともあるため、収録状況を確認すると共に、収録期間や収録件数を確認することが重要である。 - ２）Espacenetのリニューアル
2019年春にリニューアル予定であり、現在、ベータ版が利用可能である。andやor検索を意識させるデザインとなっている。 - ３）発明者／出願人の居住国で検索（Espacenet）
EspacenetのAdvanced searchにおいて、「発明者または出願人」の欄に角括弧で囲んだ国コード（例：[DE]）を入力することで、その国に居住する出願人（国籍を有する発明者） を検索することが可能。ただし、ベータ版で同様の検索が可能かどうか確認できていない。 - ４）化合物の外国語表記調べ（WIPO PATENTSCOPE）
WIPO PATENTSCOPEにユーザー登録、ログイン後、Chemical compounds searchを実施（名称および化学構造式のどちらでも可）。検索結果をDescription表示したときに、 該当する箇所まで自動でスクロールし、さらに名称がハイライト表示される（英語、中国、韓国語およびロシア語に対応）。なお、本検索は英語画面でのみ利用可能。 - ５）中国特許の経過情報調査（包袋）
2018年末からグローバルドシエシステムにおける中国包袋のアクセスが停止もしく不安定な状態が続いている。しかしながら、中国特許庁のCPQUERYを利用することで中国包袋の 入手は可能である。なお、本データベースは、認証が厳しく、仕様も度々変更されることに注意が必要である - ６）インド特許の調査
インド特許の収録状況をEspacenetおよびWIPO PATENTSCOPEで比較すると、Espacenetで約8万件、要約のみの収録ではあるがWIPOで約48万件となり、WIPOの方により多くの情報が 収録されている。また、インドの出願統計（EPO）と比較すると、WIPOの収録件数は悪くない数字と考えられる。
インド特許庁のデータベースは、急速に整備されており、インド特許の経過情報や包袋は本データベースで確認することが可能である。
- １）収録国の確認
- その他
海外特許庁（EPO,USPTO,WIPO）のオンラインセミナーについて紹介された。
Ⅲ．懇親会など
講演会の後、懇親会を開催し、講師の酒井先生にもご参加頂き、会員相互の親睦を深めた。以上
関東化学第二・商社部会（第4回）
| 時 | 2018年11月22日 (木) 14:30 〜 16:50 |
|---|---|
| 所 | 持田製薬(株) 本社２階 ルークホール |
| 人 | 大林業種担当役員、西村、河野、谷森各正幹事
大上、前川、福安、上地各副幹事 協 力 ＪＩＰＡ 赤井、博多 参加者 会員企業 68社 113名（賛助会員ほか他団体の参加なし） |
Ⅰ．議 事
会務報告の後、講演会を開催した。Ⅱ．講演会
| 演題 | 『知財・特許部員のための知財契約書作成・チェックの要点』 |
|---|---|
| 講師 | 小林・弓削田法律事務所 所長 弁護士・弁理士 小林 幸夫 氏 |
講演概要
はじめに、契約書チェックに関する以下６つの問題を解説していただいた。
問題１．不明確な記載
問題２．著作権
問題３．重要条項
問題４．確定日付
問題５．特許無効の取り扱い
問題６．共同出願契約書
第１ 概要
知財担当者としては、ビジネス判断（ビジネスジャッジ）と法的判断（リーガルジャッジ）の峻別を明確にすることを心がける。ただし、どちらの判断 についてもその後のフォローが重要である。また、知的財産部門として、契約書の作成やチェックはそれほど多くなく、どこまでチェックして良いか、営業部・事業部に対してどんな助言をする べきか分からないこともある。特に、営業部・事業部門担当者からの「ちょっと○○してほしい」は怖いことが多く、知財担当としては、この 「ちょっと」の内容を確認するべきである。
第２ 契約書チェックのポイント
契約書の書式は各種書籍やH.P.を参考にある程度書けるし、細かい言い回しの違いにより大きな差異・法的効果が違ってくることはあまりない。 むしろ、そもそも締結するべきかどうか、締結するとして決定的に不足している条項などに問題が隠されている。三現主義とは、経営用語のひとつで、机上でのみ考えるのではなく、現場・現物・現実という「３つの現」を重視して考えることである。これは、 契約書の締結・チェックをする際に当てはまることであり、契約の対象物および権利内容を把握すること（現物主義）、現場の立場に立って契約の 履行確保を考えること（現場主義）、および現実に考えられない事態ばかりを想定していないか考えること（現実主義）に置き換えることができる。 知的財産は他の契約書のチェックと異なり無体物であることから特に心がけることが必要である。
第３ 契約書作成、チェックの意味は、どんな危険（リスク）があるか。
「当事者の意思の合致」をどう表現するかを考え、リスクを予見し、それを評価・査定の上、管理・回避する必要がある。担当部門へリスクを説明し、 ビジネス判断と法的判断の峻別をつけることがここでも需要となる。文言のチェックについては、精神的条項をなくした上で、主語と述語を付けて文章を短くする。
紛争をどこまで予想しておくのかも重要なことであり、状況に応じた類比判断が必要な商標や分割出願の有無、特許権侵害における均等侵害および 間接侵害など様々なケースを想定し、決してワンパターンで考えないよう心がける。
特許権侵害警告・通知書が誰の名義で発信されたかで切迫性のレベルをはかることも可能である。
第４ 依頼から仕上げ、そしてフォローアップまでの流れ
依頼から仕上げの各段階において、ミーティングや面談が重要であり、「１に面談、２に電話、しょうがないので３メール」を心がけておく。 仕方なくメールで伝える時には３割増しの感情を言語化することがポイントである。また、メールで議論することは避けるべきである。伝え方は非常に重要であることから言語を駆使して伝えようとするが（言語的領域）、実際には全体の多くとも５％しか伝わらず、残りは 非言語的領域として埋没している（氷山の海中部分；ジェラルト・ザルトマンの95体５の法則）。裁判では、この非言語的領域を明らかに することで判断が下される。なお、これらに関しては先生より多数の書籍をご紹介いただいた。
担当者として、契約書作成依頼からフォローアップのどこまで関わるのかを明らかにしておく。弁護士、弁理士へ依頼するのであれば、費用も考慮する必要がある。
第５ 契約書チェック、作成の表現や工夫、テクニック
ワード履歴および吹き出しを活用する一方で、手書きの修正は時間もかからず依頼者側の印象もよい。また、３社契約の場合は権利義務が 不明確にならないよう図解することを勧める。第６ 登録手続きの重要性
権利関係は迅速に調査すること、および手続きが遅れたことで他社に権利移転されるリスクが高まるため移転登録などの手続きは迅速に行うことが重要である。 実際に、登録手続きが遅れたために弁理士が自腹で追加の対価を支払った事例あり。第７ 知財契約書に関する判例の紹介
平成19年（ワ）第17344号（石風呂事件）および平成27年（ネ）第10069号について説明していただいた。最後に、知財担当者の日々の業務に有用な10個の知財関係データベースをご紹介いただいた。
Ⅲ．懇親会など
講演会の後、懇親会を開催し、講師の小林先生にもご参加頂き、会員相互の親睦を深めた。以上
関東化学第二・商社部会（第3回）
| 時 | 2018年10月12日(金) 14：10-16：30 |
|---|---|
| 所 | サントリービール(株) 九州熊本工場 |
| 人 | 大林業種担当役員、西村、河野、谷森各正幹事
大上、前川、福安、上地各副幹事 協 力 ＪＩＰＡ 博多 参加者 会員企業 20社 26名（賛助会員ほか他団体の参加なし） |
Ⅰ．議 事
会務報告の後、講演会を開催した。Ⅱ．講演会
| 演題 | 『サントリーの知的財産活動』 |
|---|---|
| 講師 | サントリーホールディングス株式会社 ＭＯＮＯＺＵＫＵＲＩ本部 知的財産部長 竹本 一志 氏 |
講演内容
まず、サントリーグループの事業とその変遷についてご説明をいただいた。1899年に大阪で創業し、西洋のものを取り入れ、新しい事業を起こすことで これまで事業を拡大していること、「やってみなはれ」「利益三分主義」が、サントリーの創業精神となっているということであった。事業としては、主に食品関連事業、 酒類関連事業、外食・スポーツ・花・サービス関連事業に渡り事業展開を行っており、その事業は国内にとどまらず、欧米・アジア・オセアニアを中心として海外にも 積極的に事業拡大を図っているということであった。その後、技術とブランドを活かした知財戦略として、イノベーションを起こす商品の開発、成功確率の低い業界にあって長期に渡る商品育成に貢献できる知財、 自社独自の技術とブランドの活用によって、競争力を高めていくことが重要であるが、特に、知財保護にあたっては意匠を融合させた知財戦略を重視していることを ご説明いただいた。意匠は製品外観を保護するものであるが、意匠の性質を「技術意匠」「ブランド意匠」の両面から捉え、権利化を図りながら他社との差別化を行い、 事業へ最大限の活用を図ってきたことを、具体的な商品事例(ペットボトルの形状、角ハイボールの模様)をもとにご説明いただいた。
さらに、ブランド戦略として、使用する対象、使用方法を統一・管理しブランド価値を高めること、グローバルで勝ち抜くには、色、音等の言語を超えたブランド メッセージが必要になってくること、プロダクトブランドは商品のコンセプトを消費者に伝える大切なメッセージであると同時に、コーポレートブランドの価値育成にも 影響を及ぼす、ということであった。そして、サントリーのコーポレートブランドについて、サントリーのオリジンは「水」であり、商品、企業活動、宣伝など、事業の あらゆる側面で「水と生きる」というコーポレートメッセージを訴求するブランド戦略があるということをお話しいただいた。
質疑
竹本様の上記ご講演に関して、活発な質疑応答がなされた。Ⅲ．工場見学
サントリービール株式会社 九州熊本工場の工場見学会を開催頂いた。以上
関東化学第二・商社部会（第2回）
| 時 | 2018年7月27日 (金) 13:10 〜 17:20 |
|---|---|
| 所 | キリンビール(株) 横浜工場 総合棟会議室 |
| 人 | 高橋業種担当役員、西村、河野、大林、谷森各正幹事 大上、大塚、福安、上地各副幹事 協 力 ＪＩＰＡ 博多 参加者 会員企業 51社 92名（賛助会員ほか他団体の参加なし） |
Ⅰ．議 事
会務報告の後、講演会を開催した。Ⅱ．講演会
| 演題 | 『マーケティングツールとしての知的財産〜IPランドスケープから技術のブランド化まで〜』 |
|---|---|
| 講師 | KIT虎ノ門大学院（金沢工業大学大学院） イノベーションマネジメント研究科 教授、Ph.D. 杉光 一成 氏 |
講演内容
第１ マーケティングと知財
マーケティングの第一人者であるフィリップ コトラー氏の著書において、「インブランディング（≒技術のブランド化）のための条件」として知財（特に、特許権）の記述がみられるが、それ以外知財についてはほとんど触れられていない。一般にマーケティング論において知財の話はブランド論の中の商標権の部分に集中しており、特許、意匠、著作権を含む知財に ついてはほとんど出てこない。マーケティングの究極目的は、「セリング（売り込み）をなくすこと（P･ドラッガー）」であり、自然に売れる状態を実現することである。この目的を知財で達成したのが、ゼロックス社が開発した世界初の普通紙コピー機であり、約600件の特許の壁が存在することで、使用するためには顧客からゼロックス社の本社を訪れなければならず、自然に売れる状態を作り出していた。特許権でマーケ ティングの理想を実現した例であり、マーケティングと特許権が深い関係にあることを示した例と考えることもできる。
マーケティングという言葉の使い方はヒトによって様々であり、営業、販売、市場調査またはプロモーション等、様々な意味で用いられる。他方、学問的には日本マーケティング協会やコトラー氏がマーケティングを定義しているが、いずれも理解が難しい。このようにマーケティングの意味・定義は、様々な見解あるいは表現があるものの、market（市場）という語源を最大限に活かした場合、「既存市場の維持と拡大及び新市場の創造」と定義することができ、これがマーケティングの目的でもある。なお、市場とは顧客の集合であり、市場を顧客に置き換えて理解しても意味は通じる。また、本定義は、経営戦略の父と呼ばれているアンゾフの「成長戦略マトリックス」を使用すると理解しやすい。
マーケティング戦略において「差別化」は、最も重要なキーワードの一つである。一方、知財の分野でも新たに権利取得できるのは、既存のものから「差別化」できる場合のみであり、その意味でも両者には共通点がある。
マーケティングと知財は、その目的の多くが重なっており、目的が重なっていることを前提に検討することが必要である。
第２ マーケティング論（IPランドスケープを中心に）
マーケティング論の全体構造は、以下のとおり。「R-STP-MM」という場合もある。
（１）環境・市場調査(Research)
マーケティング活動全般に関する意思決定に役立てるために情報を収集・分析することであり、大前提として現在及び将来の「事業」の環境分析を行うことである。 最近では、特許データを使ったマーケティングリサーチといえる「IPランドスケープ」が注目を集めている。
IPランドスケープという用語は、知財人材スキル標準ver2.0において日本で初めて使用された。
IPランドスケープは、特許マップのようなモノではなく、業務そのものをいう。その目的は、経営戦略・事業戦略のためであり、経営陣や事業責任者向けであり、内容は、知財情報
（≒特許情報）のみならず、マーケット情報、その他のビジネス情報を含むものである。また、IPランドスケープでは、新規用途開発提案、アライアンス先・潜在顧客候補提案および
M&A・投資対象候補提案などが可能となる。例えば、新規用途開発では、特許の引用データに基づく分析である「サイテーション法」と「市場」が有望かどうかのマーケット情報を
統合して検討・提案を行う（例：ナブテスコ社のIPランドスケープ）。
IPランドスケープの確立した定義はまだないが、現時点での最大公約数としては既に日本の一部の先進企業も行ってきている以下の業務を一言で表現したものである。
「経営戦略・事業戦略を積極的に成功させるために客観的・定量的な知財情報にマーケット情報等を統合して分析した事業環境及び将来の見通しあるいは戦略オプションを経営陣・事業責任者に対して提示する業務」
（２）標的市場の選定（STP）
�．札哀瓮鵐董璽轡腑�(Segmentation)
市場を地理的変数などをもとに共通の特徴を備えたグループに「分類」すること。
�▲拭璽殴謄�ング(Targeting)
分類したセグメントを「評価」して絞り込むこと。
��ポジショニング(Positioning)
標的市場における競合他社との「差別化」ポイントを選び出すこと。ただし、顧客にとって魅力のある差別化で
あること。
（３）マーケティング・ミックス（MM)（「4P」として有名）
�＼宿弊鑪�（Product）（e.g. ブランド戦略等）
価格競争を避けるために製品の差別化が重要であるが、多くのマーケターは製品企画の時点での差別化に
主眼を置いている。その点、知財戦略は中長期的な視点を持って差別化を図ることに意味がある。
��価格（設定）戦略(Price)
通常、価格戦略は競合の存在があるからこその戦略であり、知財で競合を排除した場合、知財により価格が
決まると言える。
�Ｎ�通戦略(Place)
�ぅ廛蹈癲璽轡腑鸚鑪�(Promotion)
知財におけるプロモーション戦略として、主に「コンプライアンス」としての知財が関係する。ただし、製品に「特許
出願中」や「特許〇〇号」と掲載することもプロモーション戦略の一部であり、実際にどの程度の「知覚品質」が
向上するのか検証を進めている。
（４）まとめ
マーケティングの目的である「既存市場の維持と拡大及び新市場の創造」を図るため，知的財産を最強の「マーケティングのツール」と明確に位置づけ、今まで以上に活用すべきである。
第３ ブランド
ブランドが有する識別機能や品質保証機能に基づく「顧客吸引力」が会社にとっての資産価値（ブランド価値）となる。ブランドの価値は、1回での購入の利益貢献度だけでなく、継続購入での利益貢献度にある。消費者にとってブランドとは、意思決定の簡素化（識別機能）やリスクの軽減（品質保証機能）につながるものであり、それにより情緒的満足感（顧客吸引力）を得ることができるものである。つまり、ブランドとは個々の属性や便益について時間をかけて判断することなく、「効果的かつ効率的な意思決定」（＝情報効率性）に寄与できるものといえる。
B2B企業にとっては、情報効率性やリスク削減といった点でブランドがあると有利となる。ただし、技術ブランド（インブランド）は、特許で保護される技術と商標で保護されるブランドの狭間に位置し、特許部門と商標部門の連携が重要となる（技術ブランドの一例としてゴアテックス社を紹介）。
逆インブランディングは、ブランド化された製品を技術ブランド（＝インブランド）として用いることで完成品を差別化することである。
インブランディングに適した条件としては、�ゞス腑汽廛薀ぅ筺爾�少ないこと、��部品、部材の最終製品に占める重要度が高いことが挙げられる。
インブランディングのメリットとしては、技術そのものを可視化でき、需要圧力（最終消費者のインブランド認識による需要の高まり）を確立し、交換（代替品にかられてしまう） 可能性からの保護を行うことなどが挙げられる。一方、リスクとしては法人顧客からの強い抵抗などが挙げられる。
技術ブランド（インブランド）の価値としては、技術の価値自体を延命化する効果もある。
質疑
杉光先生の上記ご講演に関して、活発な質疑応答がなされた。Ⅲ．懇親会など
講演会の後、懇親会を開催し、講師の杉光先生にもご参加頂き、会員相互の親睦を深めた。以上
関東化学第二・商社部会（第1回）
| 時 | 2018年5月11日 (金) 14:20 〜 16:40 |
|---|---|
| 所 | 北とぴあ 14階スカイホール |
| 人 | 幹 事 高橋業種担当役員、西村、河野、大林、谷森各正幹事、 大上、大塚、福安、上地各副幹事 参加者 会員企業 56社 83名 |
Ⅰ．議 事
会務報告の後、講演会を開催した。Ⅱ．講演会
| 演題 | 『紛争事例から考える訴訟にしないための実務上の留意点』 |
|---|---|
| 講師 | 阿部・井窪・片山法律事務所 パートナー 弁護士 服部 誠 氏 |
講演内容
第１ 特許侵害訴訟の概要
特許侵害訴訟の手続きは、期日における裁判所の訴訟指揮に基づき進められる。証拠の収集は原則として各当事者が独自に行う必要があり、文書提出命令や証拠保全が認められることは決して多くはない。地裁での特許訴訟の平均審理期間は裁判官の心証形成まで約1年〜1年半程度であることが多く、知財高裁では少し短くなる。判決内容は和解も含めると45％程度が原告の勝ち筋であり、一概に 日本がアンチパテントとはいえない。
第２ 訴訟にしないための特許権者の留意点
- 特許権者としての好ましくない訴訟突入パターン
交渉時に相手方とのボタンの掛け違いが起こるパターン（腹を割って話し合っても訴訟になるケースもあり）、侵害訴訟の中で予期していない公知文献による無効の抗弁を主張されるパターン および被疑侵害者から逆に特許侵害で提訴される（カウンター訴訟）のパターン等がある。 - 提訴前の準備、警告書・通知書および交渉時の留意点
提訴前の留意事項としては、証拠の収集、被疑侵害品の内容の特定、侵害態様など事実関係の調査をはじめ、直接・間接侵害の成否、無効理由等の抗弁事由の有無の検討 （訂正の可能性やその内容も検討）および自社製品が相手方特許を侵害していないかの確認等が挙げられる。なお、予期せぬ無効の抗弁もあり、裁判になったらどうなるかの 見極めには限界があることも理解しておく必要がある。
警告書・通知書の留意点としては、差止か実施料かといった目的をどこにおくか、侵害の確実性などを踏まえて、請求する内容やトーンなどを決定する。また、長い目で見たときには、 どのようなときも礼儀正しく接せることも重要。特に、警告書の送付先の選択を誤ると不競法2条1項15号違反（虚偽の事実の告知）として損害賠償等を負う可能性が生じる。
交渉時の留意点としては、相手方の出方に応じて柔軟に対策・対応を考えること（早期の面談が必要な場合もあり）、根拠をもって主張することなどが挙げられる。なお、 議事録などの交渉の経過を裁判で使用することがありうる場合には、交渉相手との秘密保持契約の締結には注意を要する。 - 判例紹介
以下に示す判例が紹介された。
- �� 東京地裁平成27年（ワ）第36981号（警告の相手方の間違え）
- �� 東京地裁平成26年（ワ）第20319号（販売の事実の立証不十分）
- �� 大阪地裁平成27年（ワ）第12965号（被疑侵害者のカタログに依拠した侵害立証）
- �� 大阪地裁平成25年（ワ）第3742号（不適切な試験による侵害立証� �
- �� 東京地裁平成29年（ワ）第393号（不適切な試験による侵害立証�◆�
- 提訴するかどうか判断する際の留意点
勝訴の可能性についてより正しく客観的な判断を行う。特に、当業者（研究者）の技術常識が裁判官には理解できないことが多く、客観的な資料に基づき証明することが重要である。 訴訟にはリスクがつきものであることを理解しておく。
第３ 訴訟にしないための被疑侵害者の留意点
- 被疑侵害者としての好ましくない訴訟突入パターン
警告書を無視しているうちに提訴されてしまうパターン（ただし、提訴されないパターンもあり）、反論材料を出し惜しみしているうちに提訴されてしまうパターンおよび 訂正の再抗弁により侵害認定となるパターン等が挙げられる。 - 初動時、警告書・通知書への対応時の留意点
初動時の留意点としては、複数の者に通知書を発信していると考えられる場合に、目立たないようにすることや先頭を走らないこと、1回目の回答書については内容を十分に 検討しているうちに考え方が変わってくることもあることから時間稼ぎのための返事をすることもありうること、最初から詳細な回答はしないこと（無効資料は適当な局面まで 小出しにするなど）および他の特許出願が本丸の場合もあることから分割出願や均等侵害なども考慮すること等が挙げられる。なお、相手先が外国企業の場合には、このような対応が適さない場合もある。
警告書・通知書への対応時の留意点としては、内容の精査や侵害論、無効論の検討などと共に、契約上第三者に責任を問えないかの確認等が挙げられる。 - 判例紹介
以下に示す判例が紹介された。
- �� 大阪地裁平成26年（ワ）第1140号（証拠保全後に訴訟提起を受けた事案）
第４ 訴訟にしないための特許保証の留意点
- 特許保全に関して好ましくない訴訟突入パターン
被保証者の場合、契約条項を無視して独自に解決しようとするパターン、契約条項を過信するパターンおよび最終的に補償を保証者に求めるパターン等が挙げられる。 一方、保証者の場合、危機意識が希薄なままいい加減な対応をして被保証者が提訴されてしまうパターンや十分な情報を提供しないまま被保証者に適当な条件で特許権者と 和解させてしまうパターン等が挙げられる。 - 判例紹介
知財高裁平成27年（ネ）第10069号（特許保証条項に基づく賠償請求を肯定した事案）
特許保証条項の内容は抽象的であったために、権利行使を受けた場合の被保証者および保証者の対応が問題となった事案である。 - 被保証者・保証者間で無益な訴訟とならないための留意点
警告を受ける前であれば、実際に紛争が生じたときのことを想定した上で契約条項を作成する。また、具体的な行為義務や補償範囲を規定しておくことが望ましい。
警告後は、被保証者・保証者間でこまめに連絡を取って意思疎通を図るとともに、交渉担当者は粘り強く、当方の主張に合理性があることを伝えることが重要である。
第５ 訴訟にしないための共同研究／共同開発の留意点
- 共同開発者／共同研究者間での好ましくない訴訟／紛争突入パターン
成果の帰属（発明者性）や義務違反の有無について認識に差があるものの解消する努力をしないパターンが多い。 - 判例紹介
以下に示す判例が紹介された。
- �� 知財高判H26.5.29「光触媒体の製造法事件」（共同出願）
- �� 知財高判H27.3.25「人口骨事件」（共同発明者性）
- 共同開発者／共同研究者間で無益な訴訟とならないための留意点
契約に違反しないことはもちろん、契約書の規定は明確に規定すること、および重要な技術ほど争いになったときのために発明者性や発明の単独帰属を立証しうる 開発経緯などの資料を用意し保管しておく。
質疑
服部先生の上記ご講演に関して、活発な質疑応答がなされた。Ⅲ．懇親会など
講演会の後、懇親会を開催し、講師の服部先生にもご参加頂き、会員相互の親睦を深めた。以上
