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会務報告&部会報告
関東化学第一部会（第5回 講演部会）
| 時 | ２０１９年２月１５日（金）１３：３０〜１７：００ |
|---|---|
| 所 | 全国家電会館 |
| 人 | 西岡業種担当役員、（正幹事）星野、北村、渡辺、宮本（副幹事）川邊、椚瀬、野澤、松本
５２社、７３名 |
議 事
１．講演
| 演題 | 「デジタル革命時代の知的財産」 |
|---|---|
| 講師 | デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社 シニアヴァイスプレジデント 小林 誠 氏 |
講演概要
１．“ポスト・デジタル革命”時代の知財マネジメント
ポスト・デジタル時代とは、IoTの発展を受け、デジタル革命が自動車・家電・住宅・医療機器・農業・機械・建機等のメカニカルな分野に波及し、IoT・AIをはじめとする次世代型ニューテクノロジーが企業成長・競争力の強化の鍵となる時代である。ポスト・デジタル時代では、ハードウェア技術を、如何に次世代型ニュー テクノロジーと組み合わせられるかが事業成否の鍵であり、日本企業がこれまで培った得意領域が活かせることからチャンスといえる。“ポスト・デジタル革命”時代における知財マネジメントでは、「外（顧客、外部研究者）」と「中（自社）」を知でつなげるオープンイノベーションの視点が重要であり、“攻め”のイノベーション施策と“守り”のビジネス保護施策をセットで考えることが必要である。“攻め”のイノベーション施策とは、他者に先駆け、新技術の権利化を行う ともに、オープン戦略を活用した知財収益化を図るものである。“守り”のビジネス保護施策とは、知財を活用した自社R&D成果の保護及び海外展開時の技術・ブランド保護である。 さらに、これら“攻め”と“守り”の知財マネジメントを推進・定着させるためには「統括機能」「分析機能」「管理・運用機能」の３つの機能を具備することが求められる。 統括機能は、知財部門と他事業部門との連携し全社的な知財戦略を浸透させるものである。分析機能とは、知財情報や事業環境等を分析し、その結果を社内へフィードバックを 行うものである。管理・運用機能は知財の出願・権利維持・管理等の知財部門としての基本機能である。
２．特許情報活用による新規事業開発、新規用途開発事例について
計測・制御機器メーカーを例に、当該メーカーと類似する技術特性を持つ他社特許を含む特許情報の母集団を用いたテキストクラスタリングにより、他社技術との組み合わせ から新たな用途探索を行い、保冷輸送の鮮度管理・配送シェアリングサービスの立案に至った事例が紹介された。また、半導体メーカーを例に、特許出願の引用・被引用による技術的関係性から半導体特許を起点に、スマートテキスタイル（センシング、情報生成等機能を有する次世代繊維）やインプラント関連医療器具への応答・用途が見いだされた事例が紹介された。新規事業を推進するには、意思決定機能・知財マネジメント機能・事業化機能・技術開発機能・PJマネジメント機能の５つの機能を具備する必要があり、プロジェクトを成功させる為には意思決定を行う事業オーナーの下、各種機能に適材人材を備え、チーム一丸となってプロジェクトを進めることが重要である。
３．事業戦略におけるオープン&クローズ
Googleを例に、将来の事業環境を見据え、知財を活用してビジネス・エコシステムを構築することで、事業リスク回避と競合優位性を確保していることが紹介された。具体的には、分割・継続出願やR&D人材調達による自前出願数アップ、Motorola買収による特許権獲得、Samsung、LG等とのクロスライセンス等々に基づく特許ポートフォリオの拡充、そしてオープンアライアンス団体・特許防衛団体への参加等により、技術のオープン化を図り他社知財を無力化する動きについて説明された。事業戦略上オープン・クローズは、知財実務のオープン・クローズ(権利化・公知化/秘匿化・ノウハウ化)と異なる。具体的には「オープン」は、事業活動において市場規模拡大を目的とした協調領域であって知識・知恵の集約であり、「クローズ」は市場シェア向上を目的とした競争領域であって価値の源泉である。
４．M&Aによる新規ビジネスモデルの構築
農薬を主要ビジネスとするバイエルが遺伝子組み換え種子を主要ビジネスとするモンサントを買収し、農業事業者に対し最適な農作物収穫実現に向けアドバイスや、収穫に対する 保険等のサービス事業へ展開した事例が紹介された。また、東レとNTTとで共同開発した新素材を用いた医療機器認可や、帝人と関西大学とで共同開発した着用するだけで精緻な動きのデータ取得が可能なウェラブルデバイスについても紹介された。５．知財マネジメントを通じたオープンイノベーションの推進
オープンイノベーションに必要な知財マネジメントは、従来型の自社技術保護を目的とした活動ではなく、知財活用を重要視した活動へと変わってきている。参考例として、CORNINGが挙げられ、知財がビジネスにおける勝ち筋構築に重要であるとの共通認識のもと、オープン・クローズを意識して知財部と事業／R&Dが連携し、自発的に知財活動が 推進される仕組みが紹介された。２．グループディスカッション
内閣府の知的財産戦略本部で提唱されている「経営デザインシート」を用いて、自社の「これまで」を理解し、環境変化を見据えた長期ビジョンに基づく「これから」を構想する ことを目的として、約４０分間のグループディスカッションを実施した。グループディスカッションは、１グループ３〜５名とし、特に役割設定はせず、自由な発言・意見交換する形で行った。自社の価値を考える機会が少ない思われる知財担当者には刺激を受けるテーマとなり活発な議論が行われた。３．懇親会
講師の小林先生にご出席いただき、参加者５０名で意見交換を行うとともに、親睦を深めた。以上
関東化学第一部会（第4回 宿泊部会）
| 時 | ２０１８年１１月９日（金）〜１０日（土） |
|---|---|
| 所 | シスメックス株式会社テクノパーク、布引ハーブ園、布引水源地 |
| 人 | 西岡業種担当役員
（正幹事）星野、北村、渡辺、宮本 （副幹事）川邊、椚瀬、野澤、松本
３２社、４５名 |
議 事
１．見学
１日目１３時より、シスメックス株式会社テクノパークの見学を行った。見学は３班に分かれて、セントラルオフィスでの会社紹介、ビデオ上映、血液検査装置の実機見学、Ｒ＆Ｄタワーでのオープンラボ、知財表彰・発明表彰の展示、 更に屋外エリアにある数々の施設やオブジェを見学した。建物や屋外エリア全体としてオープンなコミュニケーションが可能なスペースが設けられ、また リラックスして思考ができるよう様々な工夫がなされていた。
２．講演
| 演題 | シスメックスの知的財産活動 |
|---|---|
| 講師 | シスメックス株式会社 知的財産本部長 井上 二三夫 氏 |
講演概要
１５時よりシスメックス株式会社知的財産本部本部長 井上様よりご講演を頂いた。（１）シスメックス概要
シスメックスの事業領域は検体検査で、機器、試薬およびサービス・サポートを提供しており、�〃豈娚惴〆此↓�血液凝固検査、�Ｇ�沈査検査の３分野では、 グローバルシェアＮＯ．１を獲得している。２００７年に、Mission、Value、Mindから構成されるグループ企業理念Sysmex Wayを制定した。
昨年、世界のイノベーティブな会社１００社（２７位：日本企業９社中２位）に選ばれたことに代表されるように、特徴のある会社を目指していると説明があった。
（２）知財活動について
シスメックスの知財活動は、Sysmex Wayを実践するための活動であり、ヘルスケアの進化をデザインするMission実現のために、競争環境の中で事業に沿った 知財活動を実践している、との説明を頂いた。知財活動の基本理念は、研究開発と事業展開の自由度を確保して経営に資することであり、知財部門は単に権利を取得するということではなく、経営に資する知財活動を 支援することが知財部門の役割である。従って、知財部門は事業計画の意思決定の場面では明確な意思表示とコミットメントが求められている。研究開発の各ステージで はパテントレビューを行っており、将来のビジネスを見据えた上で「すべての知財マターを明らかにし、勝てるシナリオを作り、対応策をつくって次のフェーズに進む」 との説明を頂いた。
知財部門の組織としては、�―亟蝓↓�管理、��渉外、�ぅ螢┘哨鵑�ら構成されている。出願件数・登録・登録率など知財活動のKPIは売上・利益・ＲＯＥ・株価などの 企業活動と関連付けて知財活動を評価しているとの説明を頂いた。
全ての特許出願について、事業に資する価値があるか本部長が確認している。 また、商標は世界１９３ヵ国に出願し、模倣品に対する権利行使を徹底的に実施し、 健康被害防止に努めている。国内外の審査官、法律事務所などと深く交流し、これを継続して行うことによりプロフェッショナルな人材を育成している。
発明奨励制度については、３５条に基づく消極的な報奨制度でなく、従業員へのモチベーションのための報奨制度として、名誉と金銭の２つの観点から設計している。 テクノパーク見学において知財表彰・発明表彰の展示物を説明頂いた。
宿泊・懇親（参加者３０名）
１日目は有馬温泉“有馬御苑”に宿泊し親睦を深めた。なお、シスメックスの井上様、辻本様にも参加頂いた。懇親会では、参加者全員による名刺交換会を行った。
２日目には、知財ブレーンストーミングを行った。終了後に、希望者選択で�”朧�水源地見学、��布引ハーブ園観光、�２鮖兇吠未譴胴堝阿靴拭�
４．ブレーンストーミング（参加者２８名）
２日目１０時より布引ハーブ園森のホールにて知財ブレーンストーミングを行った。全体を４班に分け下記テーマに従ってＫＪ法によりカードを使用し 最終的に模造紙に仕上げ、発表を行った。
テーマＡ：事業に資するための知財部の役割とは
テーマＢ：知財実務の効率的な運用をするために、我々はどう行動すべきか
５．布引水源地（参加者１５名）
２日目１４時半より希望者により、重要文化財群の布引水源地（分水堰堤、五本松堰堤など）の見学を行った。見学には神戸市水道局の職員３名に同行頂き、解説を頂いた。
以上
関東化学第一部会（第3回 講演部会）
| 時 | ２０１８年１０月１２日（金）１３：３０〜１７：００ |
|---|---|
| 所 | 全国家電会館 |
| 人 | 西岡業種担当役員、（正幹事）星野、北村、渡辺、宮本（副幹事）川邊、椚瀬、野澤、松本
８２社、１２２名 |
議 事
１．講演
| 演題 | IPランドスケープ 知財情報に基づく特許マーケティングの理論概要と実践事例 |
|---|---|
| 講師 | 三井物産戦略研究所 技術・イノベーション情報部 室長 弁理士 シニア知的財産アナリスト（AIPE認定） 山内 明 氏 |
講演概要
１．IPランドスケープの定義
広義では経営課題を共有した三位一体(事業、研究開発、知財)による取り組みを知財経営ととらえたもので、狭義では戦略提言に資する高度な情報収集／分析 としてとらえることが可能である。例えばM&A候補を選定する場合、知財担当が情報収集／分析すると、しばしば特許に始まり、特許に終わりがちであるが、IPランドスケープの手法を用いることで、 特許情報に基づきロングリストを作成し、インターネット等の非特許情報を活用することで深堀した分析が可能となり、有望な候補を選定することができる。
知財担当は、経営層を納得させる分析結果を報告することが重要である。それには、結論をまず述べ、自社が目指す事業分野、技術分野において先行しているベンチ マークとなる企業候補を選定し、当該ベンチマーク企業とは異なる自社の強みを示すともに、他の事業部門などの協力を推進する（巻き込む）よう知財部門がリーダー シップを取ることが大事である。
２．知財情報戦略とは
知財戦略とは知財情報検索／分析からなる知財情報解析を最大限活用したうえで、知財経営に資する戦略策定や戦略提言を図ることである。視点としては� 肇屐璽瓮薀麒�析” を活用した特許情報／非特許情報の両視点、�⊆蕕蝓森兇瓩領昌訶澄↓�時系列／非時系列の両視点、�ぅ泪�ロ／ミクロの両視点の４つのポイント、スキームとして�ゲ樟癲� 検証の積上、�Ε櫂献轡腑麈聴�、�Д戰鵐船沺璽�対比、�┥�来予測の４つのポイントがある。講師は知財情報の調査にリストされた特許で引用された特許（サイテーション）を探してくる“親子検索”と名付けた方法を提案されている。また、提言についても 最初からゴールが見えることは少ないのでポジションを把握し、マクロの目でまず俯瞰し、ミクロの目でも見ることで、仮説・検証積み重ねて確証を高める。そうした 検討を経て相手(経営層)を動かす提案を策定することができる。
情報としては企業のIRからライセンス情報、事業リスク情報などの特許では見えてこない情報も有用である。そうではあるが非特許情報調査に先立って、特許情報から 適切なキーワードを予想して行うことになる。
３．課題解決アプローチとマーケティング
分析は経営課題を起点することが考えられるがIPランドスケープの手法は特に自社の強みを評価している有望な新規事業や新製品につながるテーマを選定するような 課題に向いている。講演では講師が行った実践事例として、有望市場／用途探索、サイテーション情報の積極活用術、ニーズドリブンバリューチェーンを説明された。
４．まとめ
こうした分析は限られた時間であっても知財戦略の結論を出し、経営層に提言し、さらに説得できるものでなければならない。例えばリスク評価であれば攻め／ 守りをきちんと説明できることが重要である。分析自体は地道なものであり、訓練をしなければ一定レベルのものはできない。経営層にいきなり提言する前に部門長、 もしくは同僚相手に作成するという訓練も有用である。２．グループディスカッション
�〕�望用途探索 A（開発元の特許情報を分析し、ベンチマークを特定した上で開発元の優位点を見出し、有望用途を提言） �⇒�望用途探索 B（Aに加え、特許上のサイテーション情報を積極活用し、より効率的に有望用途を探索可能とする） ��ニーズドリブン検討、 �ね�望買収先探索のテーマで、５０分間のグループディスカションを行った。グループディスカッションは、 １グループ４名とし特に役割は設定せず行った。今回はIPランドスケープ自体初めて知る受講者が多かったものの活発な議論が行われた。３．懇親会
講師の山内先生にご出席頂き、参加者４４名で意見交換を行うとともに、親睦を深めた。以上
関東化学第一部会（第2回 バス部会）
| 時 | 2018年7月6日（金） ９：００〜１９：２０ |
|---|---|
| 所 | 筑波ハム、産業技術総合研究所 |
| 人 | 西岡業種担当役員 正幹事：星野、北村、渡辺、宮本 副幹事：川邊、椚瀬、野澤、松本 27社、31名 |
議 事
１．講演
| 演題 | 技術を社会へ 〜産業技術総合研究所におけるイノベーションの推進と知的財産〜 |
|---|---|
| 講師 | 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 イノベーション推進本部 知的財産・標準化推進部長 永石 哲也 氏 |
講演概要
�〇唆筏蚕兪躪膰Φ羹蠅粒詰�
産業技術総合研究所（以下、「産総研」）は1882年に設立された農商務省地質調査所を起源とする公的研究機関であり、2001年に通商産業省工業技術院傘下の15研究所と計量教習所が統合再編され、 独立行政法人となり、2015年から国立研究開発法人として、活動している。また、2016年には、特定国立研究開発法人に指定された。産総研における研究内容は、エネルギー・環境領域、生命工学領域、情報・人間工学領域、材料・化学領域、エレクトロニクス・製造領域、計量標準総合センター及び地質調査総合センターに 大別されている。
また、地域イノベーションに貢献するために全国に地域拠点を配置し、地元の産業構造や技術ニーズ・シーズにマッチした研究開発をオール産総研のネットワークを活用して実施している。
�▲ぅ離戞璽轡腑鷽篆覆亮茲蠢箸�
一般的に、発見／発明から商品化／産業化までの間には、目的基礎研究、応用研究、研究成果からなるいわゆる「死の谷」が存在するが、産総研は自らの技術力と開発力を持って 「連携人材」「連携制度」「仕掛け」を推進することにより、発見／発明から商品化／産業化までの「橋渡し」を行うことを使命としている。そのため、技術コンサルティング、人材育成、受託研究、共同研究、設備・装置、施設提供、研究試料提供、技術情報開示、ライセンス供与、事業化支援、ベンチャー創業等の 連携メニューを提供している。
また、理事長自らトップセールスを展開し、組織間の企業連携を推進している。近年増加している企業連携として技術コンサルティングがあり、平成29年度には、409件の技術コンサルティングを行った。
技術コンサルティングの事例としては、先端技術動向調査、技術の目利き、コンセプト共創型等が挙げられるが、従来の技術ニーズ・技術シーズマッチングなどの技術コンサルティングから 企業担当者とのブレインストーミングを繰り返しながら事業コンセプトやR＆D戦略を共創し、企業の将来を見据えた企業の中長期的な技術課題について、包括的にソリューションを検討する 共創コンサルティングにシフトしているものもあり、それを活用した企業連携も始まっている。
例えば、カゴメ株式会社と食品・農業のオープンイノベーションに向けた包括的共同研究を2017年10月より開始し、「おいしさ研究」、「AI異物検出」、「新包装容器開発」、「気象データ 解析による収量予測システム」等、幅広い研究領域を巻き込んだ研究開発を実施するとともに、産総研内に新たな研究スペースを設置し、企業からの研究者を受入れている。
企業のコア技術のポテンシャルを高める技術ニーズと産総研の計量やAI等の技術シーズとが見事にコラボレートしたことが共創コンサルティング成功の要因となったと考えられるとのことであった。
また、パートナー企業のニーズに、より特化した研究開発を実施するため、新たな研究組織として、パートナー企業名を冠した「連携研究室」又は「連携研究ラボ」（通称”冠ラボ“） （例えば、NEC−産総研 人工知能連携研究室等） を設置したり、経済産業省の進める「オープンイノベーションアリーナ構想」の一環として、大学等の構内に設置する産総研の連携研究拠点 「オープンイノベーションラボラトリ」（通称”OIL（オーアイエル）“ ）（例えば、産総研・名大 窒化物半導体先進デバイスオープンイノベーションラボラトリ等）の整備にも取り組んだり しており、「橋渡し」推進の一助としている。
加えて、試作品・製品の開発、ビジネスモデルの構築等の「ベンチャー創出支援」、知的財産の譲渡・独占実施・一時金免除、施設・装置の利用料最大75％減額、専門家への無料相談、その他の 支援等の「ベンチャー事業支援」、事業提携の機会提供、事業支援の情報提供等の「AISTスタートアップスクラブ」等により、幅広い領域にまたがる産総研のベンチャー開発事業にも注力している。
�Ｃ療�財産の保護・利活用の取組み
産総研は、各領域に応じた知的財産戦略の策定のため、研究開発から事業化まで、様々な知財専門人材が連携して研究成果の戦略的な活用の支援を推進している。例えば、研究開発段階においては、パテントオフィサーや知財担当連携主幹、知的財産権化段階においてはパテントリエゾン（所内弁理士）、チーフパテントオフィサー、パテントオフィサー、 事業化・技術移転段階においては、技術移転マネージャー、スタートアップ・アドバイザーを関与させることにより、知財マネジメントの強化を図っている。
更に、産総研における知的財産と標準化の戦略として、現状に即した新しい内容のポリシーが必要であり、標準化も含めて知財アセットを構築していくことからも、知的財産ポリシー（H23.3） と工業標準化ポリシー（H15.11）を統合して、「知的財産を活用した企業、大学等との連携推進及びオープンイノベーションハブ機能の実現」、「技術を社会に普及させていく橋渡し手段 としての標準化の推進」、「知的財産活動と標準化活動の一体的推進」を骨子とする知的財産・標準化ポリシーを策定した(H28.10)。
産総研における知的財産マネジメント方針としては、「知的財産アセットを構築し、研究成果の幅広い普及を目指す」ことを目標として掲げている。
「知的財産アセット」とは、産総研におけるパテントポートフォリオの考え方の一つのである。
産総研においては、「研究成果のパッケージ＝知的財産アセット+技術パフォーマンス」としてとらえている。
ここで、知的財産アセット＝特許、データ、ノウハウ、ソフト、標準、連携・権利であり、技術パフォーマンス＝技術効能である。
産総研は、知的財産権を、幅広い活用を推進する知財としての「共通基盤領域」と企業活動の支援を目的とする「競争領域」に大別している。
「共通基盤領域」については、産総研の独自研究により基本技術に関する知的財産を確保し構築して、また、企業との多様な連携により骨太化し、幅広く活用している。
一方、「競争領域」については、特定企業の競争領域に関する知的財産の独占実施など、当該企業の意向を踏まえ企業活動を重視した知財の活用している。
以上を総括すると、産総研の共同研究における知財の考え方として、産総研は、研究成果の普及をミッションとする公的研究機関であり、企業との共同研究であっても、その成果は広く社会に 還元すべきであると考えているため、汎用的・基盤的に使用できる基本的な技術（共通基盤領域）については、第三者ライセンスによって社会に普及する道を確保することとしている。
一方で、共同研究先企業の事業に特化した他社と差別化を図れる技術（競争領域）については、積極的に独占を認めることで社会への普及を図ることとしている。
また、研究の芽の段階（萌芽期）で見いだされた新発見・新原理を発掘し磨き上げ、知的財産アセットを構築した上で企業連携を推進し、萌芽技術を社会へ還元する萌芽技術知的財産アセット 構築支援にも取り組んでいる。
�ど現爐砲�ける企業連携の取組み
研究開発活動において得られた成果は、知財にするのか、標準化するのか、または両方するのかといった選択肢があり、標準化はこれからの時代において重要な概念である。計量標準と標準化は相互に密接に関係するものであるが、産総研は計量標準に強みを持つ。
計量標準を適性に供給するためには国際的な取り決め（標準化）が必要であり、試験方法、計測方法の標準化には計量標準の研究開発、整備が大前提となるが、産総研は、国際標準化活動、 国際標準化提案やJIS提案をはじめとし、企業が取り組みにくい部分の標準化にも対応している。
また、産総研の特許が明示的に書き込まれている規格である「産総研特許埋め込み型」、産総研の特許は書き込まれていないが、その利用拡大につながる規格である「産総研特許非埋め込み型」、 産総研の特許利用の拡大ではなく、市場の拡大に貢献する規格である「市場拡大貢献型」、安全のための規制、環境保全等に貢献する規格である「規制・環境保全貢献型」等の様々な規格を創出している。
そして、技術相談、技術コンサルティング、共同研究、委員等の委嘱・標準化委託事業への参加等の標準化の連携メニューを提供することにより、連携を図り、標準化を支援している。
２．施設見学
講演に先立ち、以下の施設見学を実施した。�｜淒肇魯�
筑波ハムは、もともとは養豚業を生業としていた会社を起源とする。「人の手による製造」を基本としており、新しい機械の導入はほとんどなく、オートメーション化等は図られていない。年季の入った道具を使用し、昔ながらの製法にこだわる。
乳製品は、通常2〜3種の乳酸菌を使用して製造することが一般的であるが、筑波ハムでは5〜6種の乳酸菌を使用することにより独自のおいしさを生み出している。
乳製品に係る原料の牛乳や乳酸菌は地元企業や地元の研究機関から入手しているものであり、売店では地元農家の野菜が販売されていたりと地域に密着した会社であることが伺われた。
工場では、精肉をカットする様子や、乳製品を瓶詰する様子等を案内の方の説明を受けながら、見学した。
�∋唆筏蚕兪躪膰Φ羹蝓．汽ぅ┘鵐好好�エア
産総研におけるエネルギー・環境領域、生命工学領域、情報・人間工学領域、材料・化学領域、エレクトロニクス・製造領域及び計量標準総合センターに関する展示が行われていた。本施設では、案内の方の説明を受けながら、多分野にわたる様々な展示を見学した。
ロボットやiPS細胞で作られた腎臓の断片等の最先端の技術に関する展示のみならず、メートル原器、キログラム原器やアンモニアの製造用触媒等の歴史を感じることのできる展示もあり、 大変興味深かった。
��産業技術総合研究所 地質標本館
産総研における地質調査総合センターに関する展示が行われていた。本施設では、案内の方の説明を受けながら、鉱物や化石、地質等に関する展示を見学した。
普段なかなか見ることのできない鉱物、化石の標本、火山帯と海溝の展示見学やプレートと地震との関係の説明等、貴重な体験ができた。
３．懇親会
オークラフロンティアホテルのカメリアにて、講師の永石様を含め、バス部会の参加者と歓談・名刺交換を行い、懇親を深めた。以上
関東化学第一部会（第1回 講演部会）
| 時 | ２０１８年６月１日（金） １３：３０〜１７：００ |
|---|---|
| 所 | 全国家電会館 |
| 人 | 西岡業種担当役員、 （正幹事）星野、北村、松田、宮本、渡辺、（副幹事）川邊、椚瀬、野澤、松本 正会員 ６９社、９５名 |
議 事
１．講演
| 演題 | 「米国訴訟に巻き込まれたら？巻き込まれた際のリスクの低減のためにいまできること」 |
|---|---|
| 講師 | DSA Legal Solutions 代表カルフォルニア州弁護士 大平 恵美 氏 |
講演概要
１．米国の法制度（基礎知識）、米国訴訟の手続き、訴訟費用
米国には、連邦(Federal）と州(State)があり、憲法に抵触しなければ連邦法が州法より優先されるが各々の訴訟においてどちらの法律が適用されるかを認識する必要がある。特許・著作権は連邦法、 商標は州法でも登録制度がある。米国の法制度はコモンローであり、判例が法律となる。言い換えると判例によって、法律が修正される。
また民事訴訟では衡平の観点から、持っているものは全て開示し、平等の武器を両当事者が持つべきと考えられている。
訴訟には高い費用がつきものであるがAIPLA 2017Economic Surveyより、ケースに区分けして概略をご紹介いただいた。
２．特許権侵害訴訟に巻き込まれたら？
特許権侵害に係る警告状を受け取った場合はもちろん、特許権に基づくライセンス契約の申し入れがある時点から訴訟に巻き込まれる可能性を認識すべきである。なお、訴状がいきなり送達され、 訴訟に巻き込まれることもある。警告状を受け取った時にしなければいけないこと
- 特許権の有効性や実施の有無等に関する調査
- 警告をしてきた当事者についての調査
- 訴訟に突入した場合に発生する費用や勝敗の可能性を探り、その結果、和解金額を検討する
弁護士費用は、法律事務所によってかなり差がある。
法律事務所の名前で決めるのでなく、担当する弁護士で決めるべきである。
弁護士費用は、時間給だけでなくトータルコストを考慮する。
警告状を受け取った場合、内容をよく確認し、対応策を練る。警告状を無視すると、故意があったということで
３倍賠償のおそれ（判例）があるため無視してはいけない。
警告状の有効性を、念のため確認する。
日本では警告は内容証明郵便による必要があるが、米国ではメールやＦＡＸでも有効である。
３．米国での訴訟の手続き
提訴 ⇒ 事実審理前手続き ⇒ 事実審 ⇒ 事実審後手続き ⇒ 控訴審と進む。この手続きにおいて注意しなければならない作業として証拠保全義務と証拠手続きがある。Litigation Hold（証拠保全義務）とは事件に関連する書類を削除せず、保全する行為の義務を言う。そして、外部弁護士又は法務部・知財部員等がその旨を通知又はメールで対象者 （関連書類を持つ従業員等）へ送付するのだが、特に知財部員としては、通知を受けた従業員等が通知内容をきちんと理解し、対応することを確認する必要がある。
証拠保全義務の発生タイミングは、訴訟が起こるかもしれないと合理的に考えられるとき。従って企業が自分たちで決めなければならない。さらに 証拠保全義務が発生するか しないかに係らず、何故そう判断したのかについて、覚書を残しておくことも忘れてはならない。
Discovery（証拠開示手続き）とは事実審理前手続きであり、訴訟を進める上で必要な書類の提出を相手側に求める手続きである。ｅ-Discoveryとは証拠開示手続きのうち、 電子的に保存された情報に関して行う証拠開示手続きを意味する。米国でビジネスを行う企業においては平時から情報管理規定を設定し、その運用を適切に行うのが好ましい。
弁護士秘匿特権により相手側へ提出する必要の無いデータもある。
プライバシーに関する情報は、塗りつぶしておいて良い。
なお相手方への情報開示は、記録媒体を渡す方法と、相手方にサーバーのアクセス件を渡す方法がある。
レビューが済んだデータは、デボジション（証言録取）や事実審で使用される。
証拠として相手側へ提出されたデータは、相手方が使用する。必要であれば翻訳する作業もある。
４．巻き込まれないためには？
競合他社の特許について、クリアランス調査により、特許権侵害を避け、特許侵害になりそうな場合は、設計変更する対応をする。部品メーカーの場合、完成品メーカーとの契約の仕方により、直接侵害・間接侵害を避けることができる場合がある。
常に新しい情報を入手する。
２．グループディスカッション
「万が一、米国特許権侵害訴訟に巻き込まれる場合に備えて、何らかの準備をしていますか？」のテーマで、４０分間のグループディスカション（チームディスカッション２０分＋ ３チームの発表、講評２０分）を行った。グループディスカションは、１グループ４名でリーダー、書記、発表者の分担を設定した。幹事の予想以上に活発な意見交換があったので今後も継続していきたい。３．懇親会
講師の大平先生、久慈専務理事にご出席頂き、参加者３４名で意見交換を行うとともに、親睦を深めた。以上
