役員談話室

情報検索委員会活動のグローバル化   〜欧州ユーザ団体との交流〜

 2012年よりJIPAの理事を拝命し、5年目になります。その間、情報検索委員会の皆様とともに、情報検索委員会活動のグローバル化を推進してまいりました。その中で私の感じたことを 少し紹介させていただきます。

 情報検索の分野は、知財活動の中でもさらに専門性が高く、知財活動にとって極めて重要なインテリジェンス活動であるにもかかわらず、大量出願時代には“裏方” のように扱われ、情報検索に携わる方々が表舞台に出ることや海外に出る機会は稀でした。大量出願の時代は終わり、1件1件の知的財産権を尊重し、グローバル出願の重要性も認識 されてきてもなお、その風潮は続いていました。そのこともあってJIPAの活動においても、情報検索委員会が単独で国外に出ることもありませんでした。

そんな中、特許調査の生命線ともいえる特許分類に関して世界的に大きな動きがあり、
5極での調和(CHC)の方向から、EPOとUSPTOが連携して提唱するCPCが世界の デファクトスタンダードになりそうな状況になりました。情報検索委員会の皆様から、“日本のユーザの意見をEPO/USPTOに伝えるのだ!”と機運が高まり、2012年10月、田辺委員長、伊藤委員長代理、宮内委員とともに、ドイツ・ハンブルグでのEPO Patent Information Conferenceに参加しました。

 情報検索委員会として初めての単独渡航ということもあり、準備の段階からいろんな課題はありましたが、次々と解決し、無事その日を迎えることができました。初日は緊張の連続でしたが無事に会合を終え、夜の船上パーティーに参加しました。どの様な雰囲気なのかもわからず、ちょっと場違いなビジネススタイルで参加してしまいましたが、JIPAの存在感をアピールすべく、積極的に会話に参加し、すぐに参加者と打ち解け、特に、欧州の情報ユーザ団体であるPatent Documentation Group(PDG)の主要メンバー(Agfa/BASF/Siemens)との人的なつながりができ、その後のJIPAとEPO/PDGとの交流の礎を築くことができました。

 2013年は下川委員長補佐、米須委員、萩原委員とともにイタリア・ボローニャで開催のEPO Patent Information Conference、2014年は高山委員長代理、 米須委員とともにオーストリア・ウィーンで開催のEast meets West(EPO主催)、2015年には高山委員長、中川小委員長とロンドンで開催のEast meets West参加してまいりました。 会を重ねるにつれてJIPA情報検索委員会とEPO, PDGとの関係性は強化され、人と人との信頼感もより親密になり、JIPAから提言や情報を待ち望まれるまでになりました。また、 情報検索委員会の活動にグローバルな視点の発想が増え、自らの研究成果をグローバルに発信しようというプロフェショナリズムを強く感じてくるようになりました。

 今年の4月には、高山委員長、甲斐委員とともにオランダ・ハーグでのPDG会合に参加しています。今回の訪問は、ブリュッセルでのテロ直後ということもあり、 参加には紆余曲折がありましたが、「世界から期待され、世界をリードするJIPA」というスローガンの下、メンバーの強い意志で会合に参加し、JIPAの意見発信をしてまいりました。 JIPAからのプレゼン テーションの冒頭において、ブリュッセルでのテロに対するお見舞いを申し上げましたが、その数時間後に熊本地震が発生したとのニュースが流れ、 欧州の方々からたくさんのお見舞いの言葉をいただきました。テロや自然災害など、予想もつかないことが起こる時代に、そしてそれらに屈することなく、今なすべきことをしっかり考え、世界の人が手を携え、行動することの大切さを改めて感じた旅でした。

最後に、JIPA活動を通じて、ひとりでも多くの方が異文化に触れ、グローバルな感性を身に付け、そして、グローバルに活躍していただくことを期待しております。

井上 二三夫(2016年度 副理事長)

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